4-6

 得点が入ると試合が動き始めるということは多い。お互いに天を奪い合い、前半は20-24で終了した。

「やっぱ手ごわいなー」

 西木さんの声は明るい。これぐらいの劣勢は想定内だったということだろうか。

「新口、かなり力付けてきたね」

 答える犬伏さんにも、焦った様子はない。

 練習試合だから、なのだろうか。負けてもいいということだろうか。僕は、負けたくない。チームとしてもだし、自分が出た試合で負けると、責任を感じてしまう。


後半開始

選手交代

銀原(HO 2)→蛍川(HO 1)


 そして、監督が告げた交代は意外なものだった。自分が交代させられるんじゃないかという思いもあったし、善導や沐阳を入れてくるんじゃないかとも考えた。だが、代わっって入ったのは1年生の蛍川だったのである。

「い、いやあ。出ると思わなかったよ」

 蛍川も、一応経験者ではあるらしい。昨年夏にできた「時計クラブ」というチームに参加していたものの、人数不足などで1試合しかしていないという。うちには、蛍川と対戦経験のある部員はいない。

「落ち着いていけばオッケー」

「あ、ああ」

 蛍川は体は大きいが、いつも縮こまっている。自身がない様子で、声も小さい。ただ、練習の時に力は強いことがわかっている。時計クラブは潰れたわけではなく、ずっと練習はしていたそうだ。

 蛍川はフッカー、最前列の真ん中である。スクラムでも中心となり、ラインアウトではボールを投げ入れる役目だ。器用さも求められるし、大変なポジションである。

 性格は向いていないのではないか。

「大丈夫か?」

「も、もちろん。楽しみだった……よ!」

 急に蛍川の顔がきりっとした。背筋も伸びた。

「お、おう。行くぞ」

 僕も少し、背筋を意識した。



 すごい、というほどではなかったものの、蛍川はそつなくプレーをこなしていた。とはいえ、後半になっても試合に落ち着きが戻らない。両チームが得点を重ねていく。

 34-37。逆転できそうでできないのがもどかしい。

 あと、後半になって犬伏さんがトライにこだわっている。ペナルティゴールを狙わないのだ。とにかく前を、トライを目指している。



選手交代

杉畑(LO 3)→李(LO 1)



 そして、交代で沐阳が入ってきた。新口の選手たちがしばらく、こちらに走ってくる彼の様子を凝視しているのが分かった。

 

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