4-5
「しつけえ守備!」
今岡さんが吐き捨てた。
新口の守備は確かに粘っこい。一人一人に強さがある。ただやはり、組織としては何か物足りない。
いや、違う。こちらの連携がいいのだ。いつも以上に。
今出場しているのは僕以外は先輩で、これまで作り上げてきたチームワークがあるのだろう。
「はは、廉次は見習えっ」
「うるせえ和之介」
江里口さんと今岡さん、いつもの二人が言い合っている。中学生の時からこんな感じだったらしい。二人が本当は仲がいいのかどうかはわからないが、チームの核になっているというのはわかる。特に江里口さんは、前線でどっしりと構えている、門番みたいな人だ。
江里口さんは、なかなか相手を前進させない。ボールを奪うわけではないが、相手にとってはプレッシャーだろう。新口はそれでも、しつこくフォワードでアタックしてきた。バックスに回したり、キックしたりしないのだ。
正直、きつい。
当たる度に体全体にズシンと響いてくる。これが、高校の重さ。上を目指す人たちの強さ。
痛い。
ラグビーは過酷だ。一度頼んだ助っ人は、二度と出てくれないことも多い。「サッカーなら全部反則だ!」と怒られたこともある。
「ハーフ来る!」
隣で銀原さんが叫んだ。球を出すと思った相手のスクラムハーフが、僕を飛び越えるように前に進んできたのだ。そういうプレーは見たことがあるし、テイラーさんが練習しているのを見たこともある。だが、仕掛けられたのは初めてだ。
手を伸ばしたが、届かなかった。抜かれた。
銀原さんが追いついたと思ったが、タックルされながらパスが出される。オフロードパスだ。
相手のバックス陣が、躍動する。どんどんパスをつないで、大外の一人は完全に余った。そのままトライ。
僕が、ミスをした。対応できなかった。
「相手が上手かった。気にするなっ」
江里口さんに肩を叩かれる。
「あいつ、あれ得意だったんだよな」
今岡さんがつぶやいた。僕は、相手のスクラムハーフを見たのは初めてだ。だが、クラブ出身の人たちにとっては顔なじみのようだった。
一瞬、疎外感が胸を巡った。
途中経過
総合先端未来創世0-5新口
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