4-3

「ホームアドバンテージ万歳!」

 今岡さんが本当に万歳をしている。

「遠征しなくていいと考えると遅刻しないのか……」

 犬伏さんが呆れた顔で見つめている。

 今岡さんはチーム随一の遅刻常習犯である。昨年はサボることも多かったそうだ。

「噂によると家族が旅行に行っていないらしい」

 二年生の園川さんが耳打ちしてきた。

「え、だったら余計遅刻しそうですけど」

「幼馴染の道田マネの家で朝食もお世話になったっぽい」

「それってもう家族じゃないですか」

「な」

 最近そういう話をよくしたからか、恋愛のあれこれが気になる。相変わらず弥生と冷水さんが仲良さそうに話しているのも目につく。

「あ、江里口兄だ」

 西木部長が声をあげた。新口高校が到着したのである。先頭のひときわ大きな選手は、江里口さんのお兄さんらしい。朝は一緒の家にいたわけである。

「兄弟とか関係なくぶっつぶしますっ」

 江里口さんは元気がいい。何もかもが前向きである。

 そして監督は、その江里口さんと僕をプロップの先発に指名したのである。


練習試合

対新口高校戦オーダー

監督 龍田みのり

岸谷(PR 1)

銀原(HO 2)

江里口(PR 2)

今岡(LO 2)

杉畑(LO 3)

掛原(FL 2)

西木(FL 3)

相模(NO8 2)

テイラー(SH 3)

犬伏(SO 3)

金田(WTB 3)

佐藤(CTB 2)

安生(CTB 2)

鈴木(WTB 2)

中谷(FB 2)



 驚いた。沐阳も善導も弥生もおらず、1年生で僕だけが先発だった。どういう意図なのかはわからない。ただ、これはチャンスだ。ここで活躍すれば、今後の試合にも出してもらえるだろう。

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