新口高校

4-1

「弥生君すごかったよね」

「そうだろうそうだろう」

 最近、弥生が僕の席の方に来ることが多い。僕と話したいというより、冷水さんに褒められたいのだろう。練習試合では大活躍したわけではないが、そつなくこなしていた感はある。

 悔しい。

 褒められたくてやっているわけではないけれど、褒められたくないわけではない。

 多分監督は今見極めている時期で、これからだんだんとレギュラーが固まっていく。そして弥生は、レギュラー候補に入っていると思う。

 僕は……どうだろう。同じプロップのポジションには、三人の先輩がいる。レギュラーの二人がずっと出続けるということはないだろうけれど、このままでは僕の出番は一番少なくなりそうだ。

 沐阳や善導は、レギュラーでほぼ間違いないだろう。最初から格が違うことはわかっている。

 それでも、羨ましい。

 もし僕の住んでいた地区にラグビースクールがあったならば。もしうちの中学校に優秀な指導者がいたら。

 スタート地点が違うことを、恨んでしまう。

 来週、ゴールデンウィークが始まる。そして、新口にのくち高校との練習試合が組まれている。最近強くなってきているということは知っていたが、因縁の相手でもあるらしい。同じスクール出身の選手が多く、江里口さんの兄も所属している。そして去年うちは、トーナメントで負かされた。宮理、梅坂学院、うち、そして新口で現在は4強時代なのではないかと言われている。

 県予選で対戦する可能性があることも含めて、とても大事な練習試合となる。

「次の試合も出れそう?」

「いやあ、どうだろう」

「岸谷君も、レギュラー候補なんだよね」

「えっ」

 突然僕の話になったので、素っ頓狂な声を出して止まった。

「そりゃそうだ、あの犬伏さんの後輩だぜ!」

「そっか、そうだよね」

 弥生と冷水さんの間では、僕はどういうポジションになっているのだろうか。正直なところ、最近は経験者であることを隠したくなっている。経験者の中では、一番下手だと思う。

 やっぱり僕は今、レギュラー候補ではないと思う。

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