新口高校
4-1
「弥生君すごかったよね」
「そうだろうそうだろう」
最近、弥生が僕の席の方に来ることが多い。僕と話したいというより、冷水さんに褒められたいのだろう。練習試合では大活躍したわけではないが、そつなくこなしていた感はある。
悔しい。
褒められたくてやっているわけではないけれど、褒められたくないわけではない。
多分監督は今見極めている時期で、これからだんだんとレギュラーが固まっていく。そして弥生は、レギュラー候補に入っていると思う。
僕は……どうだろう。同じプロップのポジションには、三人の先輩がいる。レギュラーの二人がずっと出続けるということはないだろうけれど、このままでは僕の出番は一番少なくなりそうだ。
沐阳や善導は、レギュラーでほぼ間違いないだろう。最初から格が違うことはわかっている。
それでも、羨ましい。
もし僕の住んでいた地区にラグビースクールがあったならば。もしうちの中学校に優秀な指導者がいたら。
スタート地点が違うことを、恨んでしまう。
来週、ゴールデンウィークが始まる。そして、
県予選で対戦する可能性があることも含めて、とても大事な練習試合となる。
「次の試合も出れそう?」
「いやあ、どうだろう」
「岸谷君も、レギュラー候補なんだよね」
「えっ」
突然僕の話になったので、素っ頓狂な声を出して止まった。
「そりゃそうだ、あの犬伏さんの後輩だぜ!」
「そっか、そうだよね」
弥生と冷水さんの間では、僕はどういうポジションになっているのだろうか。正直なところ、最近は経験者であることを隠したくなっている。経験者の中では、一番下手だと思う。
やっぱり僕は今、レギュラー候補ではないと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます