3-7

後半開始

選手交代

弥生(CTB 1)→佐藤(CTB 2)

鈴木(WTB 1)→ホール(WTB 2)



 後半になり、一年生二人が二年生と交代した。

 最初は、前半と変わりないように見えた。あまり、上手く攻められているようには見えない。しかし、ふと気が付いた。うちのペナルティが少ない。

 弥生や鈴木が反則しまくっていたわけではない。けれどもメンバーが変わって、流れがスムーズになっている。それは守備においてもだ。犬伏さんやテイラーさんのコントロールが変わったのかもしれない。

 どちらにも点数が入らない、じりじりした展開が続く。

 だが、相手の運動量が落ちているのが分かった。あちらはメンバー交代をしていないこともあるが、密集に集まってくるスピードが落ちている。

 それはわずかな差だ。こちらも疲れている選手が多い。ただ、沐阳の動きはずっと変わっていなかった。よく守り、よく絡む。ああ、ここなのか。

 笛が鳴る。ノットリリースザボール。ラグビーでは、倒された選手はボールを手離さなければならない。しかし、味方に上手く渡せないときは、どうしてもボールを抱え込んでしまう。しつこいタックルが呼び起こす反則である。中学生の時は、僕が何回もとられたペナルティだ。

 そして、相手チームが初めて驚く瞬間がやってきた。犬伏さんは、ペナルティゴールを狙ったのである。距離もあるし、角度もよくない。しかし、先輩にとっては難しい位置ではないのだ。

 きれいにボールは飛んでいき、ポールの間をくぐる。キック成功だ。これで5点差、1トライで追いつける。



途中経過

総合先端未来創世17-22高奥



「高校ではラグビーはしないかなあ」

 中学校の卒業間際、犬伏さんはそう言っていた。

「もったいないですよ。強いチームに入ったら、絶対活躍できますよ!」

 僕は先輩のプレーを見るのが好きだったので、いつになく強い口調でそう言ってしまった。犬伏さんが困惑しているのが分かった。

「チームプレイ学んでないからなあ」

「あのキックを生かさないのはもったいないです」

「じゃあ、サッカーやるかな。そもそも高校にラグビー部あるとも限らないよ」

 確かに、野球やサッカーと比べて、ラグビー部のある高校は少ない。競技を続けたければ、部活の有無を確認しておく必要があるだろう。ただ、本人にやる気がないなら仕方がない。

「俺は高校でやりますよ。ラグビー部のないところには進みません」

「はは、確かに岸谷君には向いているかもね」

 ああ、犬伏さんは発見されないままに終わるんだな、と思っていた。だから、隣県で活躍し始めたのを知ったとき、異様に興奮して、疑って、そして結果を期待するようになった。

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