3-3

対高奥学園高校戦

総合先端未来創世高校オーダー


監督 龍田みのり

此村(PR 2)

銀原(HO 2)

江里口(PR 2)

今岡(LO 2)

李(LO 1)

掛原(FL 2)

西木(FL 3)

善導(NO8 1)

テイラー(SH 3)

犬伏(SO 3)

金田(WTB 3)

弥生(CTB 1)

安生(CTB 2)

鈴木(WTB 1)

中谷(FB 2)



「弥生出てるじゃん!」

 思わず叫んでしまった。いやオーダーは事前に知っていたのだけれど。

 部員の多くは、弥生が経験者であることを知らない。でも、龍田監督は知っているのだ。いや、気づいた。

 弥生の練習風景を見て、「あれは素人じゃないな」とつぶやいたのが一昨日。僕にはよくわからなかったけれど、見る人が見ればわかるのだろうか。

「鈴木すげえ」

「鈴木いいなあ」

 ベンチにいる一年生から声が上がっている。鈴木はラグビー未経験で、他のスポーツで活躍したこともない。これは大抜擢と言えるのだ。

 ただ、センターだから、というのもある。初心者はバックスから始めることが多い。あと、センターは少し層が薄い気がする。絶対的なレギュラーは金田さんだけで、誰にでもチャンスがあるポジションだ。

「ユニフォームかっけー」

 目を輝かせて相手チームを凝視しているのは、美弾である。女子ラグビー選手と付き合うのが夢らしく、龍田監督を見る目つきも少しいやらしい気がする。ただ、オリンピックで見て感動したのがきっかけということで、よこしまな気持ちばかりでもないようだ。

「確かにうちは企業宣伝しているみたいだ」

 僕は前々から思っていたことを言った。

「スポンサー付きってこと? それはそれでかっけー」

「そうかなあ?」

 デザイン自体は、名前が東嶺とうれい高校だった時代から代わっていない。そのため、「総合先端未来創世」の文字がせまいところにぎっちり詰まっているのだ。それを好意的に評するのはまだ聞いたことがない。

 そもそも高奥の方がかっこいい人も多い気がする。部員数は46人、マネージャーは3人で、コーチもいる。羨ましい点はいくつもある。

「だいたい俺は今回ユニフォーム貰ってないから。岸谷はいいよなあ」

「美弾もセンター志願すれば貰えたかもよ」

「いや、俺はハーフだね。かっこいいもん。モテるもん」

「そうかなあ」

 スクラムハーフの控えには2年生の里さんがおり、美弾の出番はなかなか訪れないだろう。ただ、モテたいという動機はなかなか侮れない、のかもしれない。冷水さんが入ってから、以前よりやる気が出てきたっぽい奴が何人もいる。

 当然だが、みんなの視線はフィールドに向いている。モテるには試合に出なくてはならないのは確実だ。

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