3-2

 総合先端未来創世高校は、「なんとか高校」と呼ばれることが多い。一昨年改名したのだが、長すぎるのだ。略称は総合未来とか総先とかあるらしいが、あまり聞いたことがない。世間的には「ダサい名前のあそこ」で通用してしまっている。

 そんなわけで、みんなすっきりした名前の高校には憧れがあるらしい。

「高奥、いいよなあ」

 部室で愚痴っているのは、テイラーさんである。

「やっぱり名前がですか?」

 僕と先輩の二人っきりである。尋ねないといけない雰囲気だった。

「そう。制服もかっこいいけど。校舎もきれい。学費は高い」

「なるほど」

「みんな彼女とかいるんだろうな」

 テイラーさんはモテると聞いたことがあるけれど、彼女はいないようだ。

「そういうの、憧れるんですか」

「そりゃさあ。頑張ってー、とか言ってもらいたいよね」

「それはそうですねえ」

 実のところ女の子とは仲良くならなかったであろう人もたくさんいる。

「冷水さんは言ってくれるかな? だといいな」

「道田さんが言わないみたいじゃないですか」

「言わないね」

「そうなんですか……」

 確かに、言っていた記憶がない。試合中に女性から応援されるというのは、どういう気分だろうか。

 恥ずかしくなってミスをしそうだ。このままでいいかな、とも思った。



「練習、すごいんだね」

 最近、学校に来ると冷水さんの感想を聞くことになる。

「いやまあ、スポーツだからね」

「弥生君がまじめな顔してやってるからびっくりした」

 そうなのだ。中学ですぐに辞めたと言っていたが、今のところ弥生に辞めそうな気配はない。サボり癖があるようにも見えないし、前はたまたまチームと合わなかったのだろうか。

「次の試合は出るのかな」

「いやあ、どうかなあ」

 冷水さんの視線から、それは弥生のことだとわかった。僕だって試合に出るかもしれないのだけれど、まあ、仕方ない。人から注目されないのは慣れている。

 少し寂しい。

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