第18話
扉を潜ると、そこは石造の巨大なドーム型の広間だった。
そんな広間を照らすかのようにぐるりと篝火が配置されている。
そして、この部屋の主はまるでずっと前から私を待っていたかのような表情で部屋の中央に佇んでいた。
それは見たものの心を挫きかねない強大な
「こいつが、事実上最強のボスか」
そう、目の前にいる魔物こそが現状この世界で最も強いボスなのだ。
今まで誰もこの魔物を倒せなかったし、ましてやこの部屋に辿り着くことさえ出来なかった。
私が知る限り冒険者の中で最も強いあのねむれむですら、このボスと戦って敗走したのだ。
『
現在人類が観測したことのある魔物の全ての情報が載っている”魔物図鑑“にはゴブリンロードに関してその様に記載されている。
その魔物の情報は、文字通り皆無であるとそれが物語っている通り、ゴブリンロードの強さは全くの未知数である。
ていうか、こう言う時ってなんて言えば良いんだろうか。
目の前には最強の敵。
そして、こちらはチャレンジャー。
「ってなるとこんにちは、は違うよね。じゃあ、殺しますよ?」
:草
:挨拶を考えてるの草
:殺しますよwwww
:出会った瞬間、殺害宣言w
:物騒だなあ、そうに決まっている
「まあ、そんな事はさておき、始めようか」
巨槌を構え、手をクイクイと引く。
私の意図を理解したのかゴブリンロードは、どこかからか私と同じ巨槌を構えた。
「へえ、チャレンジャーの土俵に合わせてやるってか?」
その言葉に対して、ゴブリンロードは動かない。
「チャレンジャーを正面から打ちや破ろうって?舐めるなよ?」
そして、身体強化7層を同時発動した。
燃えたぎるような力と、万能感が全身に満ちる。
また、感覚だけに留まらず空間が保有できる魔力の限界量を超えて、魔力は青く発光した。
「グガッ」
それを見て、ゴブリンロードは同じように身体強化を発動した。
「──マジかよ」
なんとゴブリンロードも同じく7層同時付与したのだ。
こちらは私とは違い、赤い魔力が溢れている。
個人が持つ魔力の特性による違いだろうか?
まあ、そんな事はどうでもいい。
同じコンディションだ、ここから先はどちらの技量の方が上かという勝負になる。
「シッ!」
ならば先手有利。
地面を蹴ってゴブリンロードの懐に潜り込む。
油断も遊びも、一切を捨て去った振り上げ。
それに対して奴も巨槌を振り下ろした。
互いにとんでもない衝撃派を放ちながら繰り出される一撃が衝突し、轟音がダンジョンに響いた。
両者の巨槌は弾かれた。
「まだまだ!」
弾かれた巨槌を放し、脚を突き出して下段攻撃。
ダンジョンすら破壊した一撃だったが、奴の脚にぶつかった瞬間ピタリと静止した。
予想外の硬さに顔を顰める。
そして、ゴブリンロードが巨槌を横薙ぎに振り抜いた。
「不味いッ!」
なんとかバックステップで回避。
服が少し掠ったが、その部分が丸ごと消し飛んだことからその威力が察せられる。
だが、それだけでは奴の攻撃は終わらなかった。
本命は振り抜かれた巨槌の後に来る足蹴り。
バックステップによりまだ空中に居る私ではどう足掻いても避けようがない一撃だ。
やばい、死ぬ──
「グハッ!」
全身の骨が粉砕する音がし、次にゴブリンロードの莫大な魔力が全身を駆け巡る。
自分の体が地面をバウンドする感触が遅れてやってきた。
「ゴハッ!おえッ!」
口から血が溢れる。
本日2回目の吐血だ。
だが、ドラゴンの物とは違い、入念に魔力も含ませて攻撃してきたお陰で内臓までボロボロだ。
「ガッ、ゴホッ!」
あ、ヤバい。
これは死ぬやつだ。
自己治癒も同時発動してるってのに一向に回復する気配がない。
たぶん、さっきの蹴りに含まれた魔力のせいで回復が阻害されてるな。
仕方がないんで回復ポーションを飲むしかないだろう。
「2瓶目!」
回復ポーションを飲み、肉体の破損を回復。
先ほどの攻撃を喰らって分かったことがあるが、ゴブリンロードの攻撃は私よりも強い。
まあ、分かっていたことだ。
小柄で筋肉量の少ない私が、なんとか魔物と張り合うために身につけた身体強化だが、それはあくまでも基礎能力を高めるという物でしかない。
だから、魔物であるが故に屈強な肉体を持つゴブリンロードに同じ身体強化で勝てる訳がないのだ。
まともに戦って勝てる相手ではないのだ、ゴブリンロードは。
だが、まともにやったら勝てない、という話であって、決して勝てないと言うわけではない。
「ははは!ムカつくなあ、ご丁寧に回復阻害までしやがって!丁寧にぶっ殺してやるよ!!!」
さて、本気を出そうか。
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