第17話 それぞれの反応
「へえー、やるじゃん陰見君」
とある執務室の主人は呟いた。
黒髪のその男は細身で弱く見えるが、見るものに不思議な覇気を感じさせる。
彼の名は尾間那月と言った。
「身体強化7層に加えて自己治癒の同時発動、か。限界を超えるって言っても明らかに人間の域を超えているね」
「ええ、5層の時点でも人間には不可能と思えますが、彼女は見たところ7層に加えて自己治癒の同時発動を行なってなお頭痛程度で済んでおります。正直異常と言わざるを得ません」
そんな黒髪の男に答えるはゆったりとした国営ギルドの制服を纏った女だった。
「そうだね。確かに彼女は異常だ。一応最上ランクって建前になってるS級の人間ですらこんな芸当ができるか怪しい。正直、側近に取りたいくらいだよ」
「尾間さまがそんな事をおっしゃるなんて珍しいですね。でも、建前と言う発言は見過ごせません。尾間様は仮にもギルドマスターですのでその様な発言は控えていただきたいです」
その言葉を聞き、尾間那月はニヤリと嗤った。
「いいじゃん。ここには僕と君しかいない訳なんだしさ」
「そう言う問題ではありません。組織のトップに立つものとして意識を持ってもらいたいというだけです」
「組織のトップ、ね。ぶっちゃけこんな肩書きなんて未来への経過にしか過ぎないと思ってるよ。だから、さ?建前とかなんとかぶっちゃけ真実ならいいと思うんだ」
「怒りますよ?」
「・・・・・・ごめんなさい」
しょんぼりとした顔で言った。
「まあ、そんな事はさて置いて」
「さて置きません」
「・・・・・・」
「・・・・・・さて置いて、陰見君の活躍は目覚ましいものがあるね。これは本当にご褒美を用意しなきゃいけなくなるかも」
「ご褒美?」
「うん、彼女がもしもA-1のボスを倒したらご褒美を用意するって約束したんだよね」
「・・・・・・そうなのですか。何を用意するおつもりで?」
「ふふふ、聞いて驚くなよ──」
そして黒髪の女の耳元に近づき教えた。
◇◆◇◆
【
「えー、うん。この新人ヤバいね」
:ヤバい
:ねむれむの8層攻略の記録抜かされそう
:草
:ヤバいという感想しか出ない
「魔法なしのフィジカルだけって、ええ・・・・・・?」
:ねむれむをドン引きさせるこの新人はなんだ?
:9層の門番のドラゴンって、確か相当強いよな
:なんで身体強化だけで戦ってんの?この人
「それはそう。なんでこの人身体強化だけで戦ってるの?なんでも魔法が苦手だからって説明されてるけどさ、それでも、ええ・・・・・・?」
:魔法なし!?
:身体強化だけでここまで戦えてんのヤバ過ぎw
:人外じゃん
「ボクも今までなんだかんだ変態プレイをしてきましたが、この人、ヤバいですね。身体強化の重ねがけ?自己治癒の同時発動?正直それだけでもはあ?って感じですけど、頭痛だけで済んでいるってのがヤバ過ぎますね」
:普通だったら脳みそが弾け飛ぶ
:スパコンもびっくり
「最初はネット民どものテンションに巻き込まれて炎上していて、可哀想なヤツだなー、ってくらいに思ってたけど、この人見れば見るほどヤバい点が出てきますね」
:で、どうなんよ
:ヤバいって言ってもどのくらい?
:ねむれむと比べるとどうなん?
:勝てるん?
「ボクと比べるとどうかって?そりゃあ、ボクの方が強いに決まってます。ベテランにはベテランの誇りがありますとも。でも、まあこの新人とは白黒ハッキリさせなきゃいけないかもですね」
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