第14話
「魔力があ、魔力があ!でも大丈夫、ポーションがあればね」
そう言ってヤ○ルトみたいな形状の瓶を開け、青色の液体を喉に流し込む。
ねっとりとした不快感のある液体が喉を伝う感触がして気持ち悪いが、味はそこそこ美味しい。
説明し難い味だが、まあ、スライム(魔物)を食べたらこんな味がするんだろうな、みたいな味だ。
:なんて便利なんでしょう
:この動画はプロモーションを含みます
:なんかのPRしてたりする?w
:これを見て笑ってしまう自分は疲れているのだろうか
「・・・・・・という訳で初めてのポーションでした。正直進んで飲みたいか、って言われたら変な顔してしまう感じの味だった」
:変な顔w
:まずかったんかww
:で、魔力は回復したん?
「はい、魔力はちゃんと回復しましたよ?さっきまでの戦闘が嘘かのように脳みそがスッキリです」
9層に潜ってからかれこれ3時間が経過した。
初めこそ攻撃を喰らってしまったが、今では慣れてきてノーダメで一方的に魔物を狩れるようになった。
まあ、当然っちゃ当然だろうか。
いかに強力な特性を持っていて、強力な力を持っていようとも、知能のない化け物に苦戦する要素はどこにある?
ゲームでもそうだ。
最初こそ魔物の対処に困るものの、一度行動パターンを把握してしまえばLV1でも勝ててしまう。
でも、対処は知っていてそれに伴う技術があろうとも基礎魔力と体力がなければどうにもならない。
だからこそ、人々は才能に依存する魔力をポーションで埋め合わせ、体力を日々の鍛錬でどうにかするのだ。
ちなみに私はそこそこ才能に恵まれたおかげで魔力は人並み以上にあると思う。あと、体力は毎日D-18に潜っておいたおかげでそこそこある。
なんて事を視聴者に説明すると、
:分かりやすい説明ありがとう
:ゲーム感覚なの草
:対処は分かってても上手く動けんのりゃ
:体力も魔力もあって実際に動けるかどうかは別やね
「んんー、まあ、確かに動けない人もいるね。まあ、ぶっちゃけ言うと強い人と弱い人って実は基礎スペックはそんなに変わらないんだよね」
:じゃあなんで変わるん?
:??
:なにが違うの?
「じゃあ、何が違うのか、って言うと多分ですけど恐怖があるかどうかじゃないですかね?」
:なるほど、主は恐怖がないと
:悲報、主が化け物であることが証明される
「失礼な、これでも私は内心ビビり散らしてるとも」
胸に手をあてドヤる。
:なぜドヤっている?
:ビビっていることにドヤるのなんか草
:詐欺とかに遭ってそう
:↑もう遭ってますw
「と、余裕ぶっこいて歩いていますが、このA-1とかいうダンジョン広すぎません?」
:そういえばここA-1だったな
:主が余裕そうで忘れてたな
:ここが日本最難関のダインジョンってマ?
:現在時刻既に深夜0時を回っています
:そろそろ眠くなってきた
「眠くなってきましたか・・・・・・私もちょっと眠く・・・・・・」
なんとなく欠伸をしたその時カチリ、と地面が鳴った。
──ヤバい。
咄嗟にその場から飛び退いた。
ドガアアアアンンッッ!!!
地面が爆ぜた。
「忘れかけた頃に罠かよッ!!!」
今の爆発で右脚が吹き飛んだ。
警戒はしていた。
でも、魔力探知が使えない以上絶対に漏れは出てくる。
しかもこのダンジョン、罠の殺意が異様に高い。
普通のダンジョンの罠は大抵凹凸があったりして、事前に気づくことが出来たりするものなのだが、流石は史上最凶のダンジョンとだけあって全く罠の構造に違和感がない。
魔力探知をして慎重に進んでも多分、うっかり踏み抜いてしまうなんて事があると思う。
まあ、現状魔力探知が使えないんでもっと踏み抜くと思う。
「てか、ヤバいかもこれ」
:ヤバい?
:なにが?
:ん?
:あっ(察し)
「これ来てますね、さっきの罠の音聞いて来てますね、それもヤバいやつが」
:ヤバいヤバい
:逃げて
:不味くない?
:死ぬな
「ほら、姿が見えてきました」
そして、暗がりからそれが現れた。
黒い鱗を纏い、巨大な翼を見せるそれは・・・・・・
「──マジかよこのダンジョン。ドラゴンまでいるのかよ」
やはり、最凶のダンジョンと言われるだけはある。
私が右脚を失ったタイミングで襲いかかってくるとは。
ちゃんといるじゃないか、強い魔物が。
:笑ってる?
:大丈夫か、主
:心配になってきた
:逃げろ!
:流石にヤバい
:笑ってる場合じゃないぞ!
でも、何故だろう。
ピンチの状況だってのに何故か興奮してしまう。
なぜこの心臓は高鳴るのだろうか。
ああ、そうか。
私は今、欲しかったものを手に入れようとしてるからか。
「──私の戦いを見ててください。大丈夫、まだここで終わらせる気なんてさらさらないですから」
ニタリ、と笑い巨槌を構えた。
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