第24話 記者会見
「ふぐっ……! くっ……! 紫苑が……っ! うぅ……! 泣いてもいいんだぞリムルッ! うぅぅ……! おのれファルムス許すまじ!」
会議室には新庄の嗚咽と怒りの声が響いていた。
常世田は、ここまで新庄がアニメに没頭するとは思わず、まさか朝までぶっ通しで視聴することになるとは夢にも思わなかった。
転〇ラを見たことのある者たちは、それでもこのアニメ最大の山場に魅入られ、初めて見る者たち、特に新庄はまるで自分がその世界に入り込んだように、物語に没入した。
(こりゃファルムス潰してリムルが覚醒するところまでは見ないと止まらないだろうな)
「うっ、ぐずっ」
常世田は隣で涙を流し鼻をすする服部を二度見した。
「え、服部さんは見たことあるんじゃないの?」
「馬鹿野郎! 何回見たってこのシーンは泣けるだろうがっ!」
――物語は、主人公が覚醒し、仲間を救い出すところまで進み、朝食の時間となったところで視聴会はお開きとなった。
「常世田」
「はい?」
「次のアニメも用意しておけ」
常世田は、すっかり新庄がファンタジーアニメファンになってしまい「アハハ……」と失笑しながら、次は「G〇TE 自衛隊 彼〇地にて、〇く戦えり」を見せて、自衛隊はファンタジーには負けないという英気を養ってもらおうと考えた。
***
――東京。某有名ホテル。
宴会場には、数々の報道陣が集まり、自衛隊率いるダンジョン攻略組および契約者の入場を待ち構えていた。
テレビに『契約者』が映るのは初めてであり、カメラマンは、実在する神の登場シーンを1秒たりとも逃さないよう力んでいる。
「来るぞ!」
誰かが叫ぶと、一斉にカメラのフラッシュライトが出入り口を狙って明滅した。
そこからは、加瀬1等陸佐を先頭に、新庄や常世田たちがゾロゾロと入場してくる。
特に常世田とシヴァは体格が大きいことや、その服装、シヴァに至っては上半身ハダカなのもあって、会場はざわついた。
シヴァの肉体美に黄色い声も上がる。カメラマンは、ここぞとシヴァをアップにして、その美しい装飾品や筋肉を映し出した。
「えー、今、自衛隊率いるダンジョン攻略チームが入場しました。それぞれの席に着いて――あ、なんか間違えたみたいですねウフフ。白のスーツの方、常世田氏ですね。常世田氏が司会席に座ってしまったようですフフ。皆様にこやかな様子で席に着いております」
「今井さーん」
「はい」
「あの小さい女の子映して下さい。なんですかあの子」
「あ、はい。おそらくミシャグジ様ですね。事前の情報では5才ぐらいの女の子が、服部氏の契約者として参加しているとのことです」
カメラマンは服部とミーシャを画面に収めた。テレビには、プリンが配膳され、満面の笑みで喜ぶミーシャの姿が映し出された。
ちなみに王様も新庄の隣で
――某巨大掲示板
0001
幼女ktkr
0002
>>1
ロリコンはお帰りください
0003
ミシャグジ幼女かよwww
0004
絶対怒らせるな
0005
ケロちゃん更に若返っとるやん
0006
東〇ヲタ歓喜www
テレビ局によっては、王様をクローズアップしており、その風貌と、どうやって動いているのか、未知の生物に驚きの反応を示していた。
「では、これより、陸上自衛隊、陸上総隊直轄、ダンジョン攻略チームの発足について、記者会見を行わせて頂きます。一同起立!」
特に打ち合わせはなかったが、常世田をはじめ、ニコたち神々も起立して、丁寧に礼をした。
加瀬1等陸佐は、各員の氏名、能力をはじめ、先日の初出動の詳細や、ダンジョン内部の様子、門の主についての情報を公開した。
新庄の特殊能力については極秘であり、彼女は非戦闘員として、現場監督の役割に就いているというカバーストーリーが公となった。
また、彼らの本拠地『陽炎』についても極秘とし、作戦エリアに応じて基地を転々としていると発表した。
「須賀千秋さんに質問です。使徒としては紅一点ですが、攻略に当たって怖かったり困ったりしたことはございませんか?」
千秋は隣のシヴァ寄りに置いてあったスタンドマイクに手を伸ばした。
シヴァの身長に合わせてあるため、千秋はマイクをスタンドから外そうと、マイクを挟んでいるクリップを掴んだ。
しかし想像以上にクリップが固く、力任せにマイクを抜き取ると、その勢いでマイクがおでこに激突した。
ゴッ!
「いたっ!」
0198
クッソワロwwwwww
0199
wwwwwwwww
0200
わざとだろ?本気か?
0201
お約束過ぎるだろwww
0202
大草原不可避wwwwww
0203
上級者のボケwww
常世田と服部はここぞとブーーーっと吹き出しながら椅子から転げ落ちた。会場もそれを見て爆笑の声が巻き起こる中、千秋は顔を真っ赤にして質問に答えた。
「あ、あの、皆んな優しくて……チームの皆んなが励ましてくれてですね、怖かったんですけど、何とか乗り越えることができました」
「フフ、フフッ、皆さん仲がいいのですねっ」
その様子は、使徒3人組が温和な雰囲気で活動しているように映り、国民が彼らを心配する声もあったが、お笑い劇場の効果により、お茶の間は大爆笑だった。
その後も幾つかの質問が常世田や服部に投げかけられたが、特にボケるチャンスもなかったので、無難な質疑応答となった。
そして記者たちの目が真剣に光る。
ここからは神々への質疑応答だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます