第3話 痴漢

 僕は、ヒーローショーを観た帰り道、いつもはそのまま帰っていたが、今日は、お気に入りの小説の発売日だったので、書店に行った。

 

 お目当ての本と、面白そうな漫画があったので、合計2冊の買い物をした。

 電子書籍の方が紙の本よりも早く買うことができるが、僕は本の匂いや本を一枚、一枚めくる感覚が好きだから、紙の本を買っている。 

 ネットで取り寄せればわざわざ書店に行かなくてもいいのでは・・・という意見もあると思うが、僕は、書店で今まで読んだことがなかった本を自分の目で見て探すという楽しさがあるから本は書店で買う。

 

 書店で買い物をした後、小腹がすいたので、書店に隣接しているコーヒー店でチーズケーキと、コーヒーを買ってイートインスペースで飲食した。

 

 食べ終わった後、もう夕方だった。

 

 僕は、いつもはバスを使っていた。が、スマホで調べたら、電車の方が早く家に帰れたので、駅まで歩いた。

 駅に着いて、スマホで時刻を調べたら、あと5分で電車が来るので立って待っていた。

 

 電車が来た。

 

 今日は日曜日だったので、少し混んでいた。   だが、僕は、明日は平日で早く帰りたかったので、空いているスペースを探し、電車に乗った。

僕は痴漢に間違われたくなかったので、すぐに吊り革を両手で掴んだ。

3駅だから15分ぐらいで目的地はすぐなのだが、混みすぎて、とても時間が長く感じた。

僕の両手は、吊り革を掴んでいたので暇でボ~としていたら1駅すぎた後に事件が起きた。


痴漢だ。僕の隣の同い年ぐらいの痩せた男が前にいた白いワンピースを着た女性の背中に触れていた。

 

 図にしたらこんなだ。

 

   女    前

 僕 痴漢   後


 痴漢男の隣が僕だから僕が、痴漢に間違われる可能性があるのが許せなくて、すぐに吊り革を掴んでいた両手を外し、痴漢現場の証拠を服のポッケから出したスマホで撮影し、それが終わったら、女性の背中に触れていた痴漢男の手を掴み、その手を痴漢男の背中にまわし、


「お前、痴漢なんて最低だぞ!!証拠写真もある。次の駅で降りろ(怒)」

と、痴漢男に言った。


女性には、

「警察の事情聴取もあると思うんで、辛いと思いますが、あなたも次の駅で降りてください。」

と、優しく言った。

女性は静かに頷いた。

 

 僕、痴漢男、被害者の女性は次の駅で降りた。 

 僕は、痴漢男を捕らえたまま、事情を説明して駅員に引き渡した。駅員はすぐに警察を呼んだ。


駅員は、

「警察はすぐに来ると連絡があったので、この駅の駅事務室で待っていただけますか。痴漢男は別の部屋なので」と言った。


 僕と被害者の女性は同じ部屋で無言で待っていた。

 警察はすぐに来た。

 僕、痴漢男、被害者の女性は、別々の部屋で事情聴取があった。

 僕はスマホで撮った痴漢現場の証拠写真を警察に見せて、痴漢が起きた時間帯や状況などを説明した。

 僕が痴漢を捕まえたことを伝えたら、感謝された。あの痴漢は前にも一回痴漢をしていたらしい。 前は、被害者の女性が警察が来た時には、いなくなっていたので、厳重注意だったらしい。


 事情聴取したあと、パトカーに乗って、最寄りの警察署に行った。

 駅事務室で話したことと、同じ説明をした。

 

 事情聴取が終わったのは夜だった。

 

 警察署の外に出たら、被害者の女性がいた。 

 女性はじっと僕の目を見て、

「今日は痴漢から助けてくださりありがとうございいました。」と言う途中ぐらいで深々と頭を下げていた。


「どういたしまして。助けられて良かったです。」


女性

「痴漢をされた時、誰かに助けを求めたかったけど、声が出なくて・・・もうダメだと諦めていたんです。でも、名前の知らないあなたが助けてくれた・・・それが私、すごい嬉しかったんです。」


「そうなんですね」


女性

「だからすぐ、あなたに感謝を伝えたいけど駅に降りた時は、痴漢が同じ駅ににいると思うと、怖くて声が出せなくて、警察の人が来たときにやっと安心したら、声が出せるようになりました。」


「そうなんですね。良かったですね。」


女性

「あなたとは別々の部屋で、事情聴取していたから感謝を伝えるタイミングを逃して、その後もすぐにパトカーで警察署で事情聴取だったからタイミング逃して、でも同じ警察署での事情聴取だから終わったら感謝を伝えに行けると思い、警察の人に相談したら融通きかしてあなたよりも早く事情聴取終わらせられたから、あなたにあえました。」


 僕

「あえてよかったです。律儀にどうもありがとうざいます」


 女性

「本当、感謝が伝えられて良かった。でも感謝を伝えるだけでは申し訳ないので、今度一緒にご飯食べに行きませんか。お礼に奢りたいんです。」


 僕

「も、もちろんいいですよ」


女性

「来週の日曜日はどうですか。予定があいているんですけど」


「僕もその日、暇なのでいいですよ。」


女性

「L●NE交換しませんか。待ち合わせに便利ですし。」


「い、いいですよ。」


 僕と女性はL●NEを交換した。

 

 その後、来週の予定の細かいことは、女性がL●NEで後日送ることとなり、解散して僕は家に帰った。


 寝る前に、交換した女性のL●NEをみた。


 女性の名前は、歩美らしい。その時、初めて女性の名前を知った。




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