第8話 集落のリーダー、アラニの姐さん
オーサンの前に現れたのは、彼と同じく日に焼けた褐色肌が目立つ軽装の、背の高い女性――二十代半ばから後半ほどだろうか、見るからに快活そうな笑顔と声を発した。
「久しぶりじゃあないか、なかなか顔を見せないから、オッ
「オオ、そんなに久しぶりだったか? ワリィワリィ!
でもまぁ元気そうで何よりだぜ―――アラニの
「ネエサンはやめなよオーサン、アンタのがアタシよか、よっぽど歳イッてんだからサ、居心地悪いったらないわっ」
「そりゃそうか、ガッハッハ!」
「アッハッハ!」
顔を見合わせて笑い合うオーサンと、アラニと呼ばれた女性。何となく、息も気も合いそうな二人である。
さて、話が早いのか、アラニは続けて本題に入ろうとした。
「で……今日も物々交換か、何か置いてってくれんのかい? アンタが前に置いてってくれたトカゲの皮、袋に加工したから、必要なら持ってってもイイよ。
「オッ、そりゃ助かるぜ。また大トカゲ狩ったから、骨やら皮やらで臭い袋になっちまったけど、まとめて引き取ってくれるかい? 交換に新しい袋、もらってくぜ!」
「アハハ、こりゃありがたいね、皆のためにまた色々作れるよ! ところで何か、食料でもあればありがたいんだけどサ……」
「ガハハ、ちゃっかりしてらぁ。もちろん、トカゲの肉やら、施設の跡地やらで見つけた変な缶詰なんかもあるぜ。実りもねぇ世界でも豊作よ、豊作!」
「ヒューッ♪ さっすがオーサン、愛してるぅ!」
「ガハハ、調子のイイこって! っと……それより、紹介しねぇとな」
言いながらオーサンが振り返り、バイクに座ったままの少女へ声をかけた。
「ロースト、コチラの美女が、この集落のリーダーであるアラニ様よ。いやぁ、こんな終わった世界でも活発でカリスマ性もあっから、皆が慕って頼りにするもんでよ。人を動かすのも上手いし、さすがリーダーって感じの女傑だな!」
「ああん? さては物々交換の条件、勉強させようってハラだね? そんな分かりやすくおだてたって、ちょっとしかサービスしてやんないよっ、アハハ! ……ん? ていうかまさか、ツレがいるの? 珍しいじゃないのサ―――はっ?」
「ガハハ、バレちまったか。イヤイヤ、おだててるだけじゃなく、本当のコトでもあるんだぜ? なあ、アラニ。……ん? どうしたアラニ?」
そこでようやく、オーサンのバイクに乗りっぱなしの純白の少女、ローストに気付いたらしく――そんなアラニが、呆然としつつ呟くのは。
「……イイ歳した男が……バイクで旅して……年端もいかなそうな、あんな女の子を……一体どこから、まさか
「アラニ? アラニさん? オーイアラニ姐さーん?」
「どういう、関係……いや、これもう、そういう? …………」
呼ばわるオーサンの方に、ようやく向けたアラニの視線は。
「オーサン………アンタ………まさか………」
完全に―――不審者を見る目だった。
「まてまてまて何か変な誤解してねぇか!? チゲェって、別にやましいコトとか考えてねぇよ俺!?」
「あ、ああうん、そうだよね、わかってるよ。とりあえず集落の……特に小さい女の子とかは、アンタに近づかせないよう注意しとくからサ……」
「なんもわかってねぇんだよなァ多分コレ! だからよ、そういうんじゃないんだって! 成り行きで一緒に旅するコトになった、っつかよ!」
「なるほど道理で……何度、定住を勧めても、断るワケだ……アタシみたいなイイ女の誘いを
「聞いてくれってェ~~~!?」
オーサンの主張は完全にスルーし、アラニはぼんやりとするローストの方に近づき、少女の肩に両手で手を置きつつ問いただす。
「お嬢ちゃん、アンタ……その、何か……変なこととか、されてないかい? ほら、あの男……オーサンに、ヘンタイ的なこと、っていうか」
「ローストに変なコト吹き込むのやめてくんね!? 人聞きも悪ィし!」
制止したいオーサン、だがローストが、こてん、と首を傾げつつ発した言葉は。
「? オーサン……ヘンタイ的」
「―――若い衆ゥゥゥ武器を持って集まれェェェ! ヘンタイが、ヘンタイが集落に入ってきとるでーーーっ!?」
「違うんだって! ローストのソレ、言葉を反復するクセみたいなモンっつか! 誤解だし聞いてくれってばよォ~~~ィ!!」
ほとんどが生気の乏しい人間だらけの集落で、本当に心の底から珍しい、元気一杯の声が二人分、場違いに響くのだった―――………。
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