春が来た12

 その後、ラディはようやく退院したが、体力が戻らずにすぐ疲れてしまうという生活だった。歩く時もまだ杖が必要で、いずれはボルトとプレートを取り除くための再手術が必要となる。


 その日も、ソファで横になってタブレットを見ていると思った彼が、いつのまにか目を閉じていたので、ノヴァは声をかけた。

「ルー、寝るんだったらベッドに行ったら。ソファでは身体が休まらないでしょう?」

「ん……」目を開けたラディは、

「いや、邪魔でないなら、ここにいてもいいかな?」

 そして、小さな声で続けた。

「ひとりで寝ているのは飽きた」


 ノヴァはクスッと笑った。そんなふうにときどき屈折した言い方をする彼には、もう慣れていた。

「ルー、そういうときにはね、『君達の顔が見えるところにいたいんだ』って、素直にそう言えばいいのよ」

「むぅ……」

 図星だったらしく、少し赤くなってラディは目をそらした。

「はい、当たり! でしょう?」

「……勝手に人の気持ちを読まないで欲しい」

 そうつぶやいて、ラディは(そんなこと、恥ずかしくて口に出して言えるものか)という顔をした。


 

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