春が来た6

 エリンはエステルをサラのところに預けることに決めた。パーティー以来、エステルはサラに懐いていて、快く引き受けてくれた。


 サラのお腹の膨らみも少しわかるようになってきていて、

「サラとエヴァだって、大変な時期じゃないか」

 ディープがそのことについて言及すると、

「だから、よ。子供たちは順調にいけば同級生になるから、そのこともあって、お願いすることにしたの。エスはノヴァもいないこの家にいるのが辛いのよ。そして、ディー、あなたも今のエスをみているのが辛いんでしょう? お互い、しばらく距離をおいた方がいいと思うの」


 エリンにはわかってしまっていたのか、とディープは思った。


「あなたはずっと後悔してますよね。でも、『後悔』だけでは前に進めないでしょ? あの事故はあなたのせいでもないし、誰が悪いわけでもないはずです。後ろばかり、いつまで見ているつもりですか」

 エリンが怒っているときは、丁寧な口調に戻る。

「……うん。わかっては、いるんだ。もしかして、怒って……る?」

「いいえ」

 エリンは首をふった。

「怒っているのはあなたに対してじゃありません。私自身へよ。あの子の辛い気持ちに、もっと早く気づいてあげるべきだった」


 

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