第22項 即席カップルでもいけますか?
面接会場に到着した。
しばらく待合室で待たされる。
周りを見てみると、参加者は俺たちを含め3組だった。
参加者は、チームごとに仮名の名札を持たされている。
素性を隠すための配慮だ。
爵位を盾に、大人の圧力をかける不届き者がいるからだろう。
ホント、どこのどいつだ。
そういうアホは。
……ん?
メイさんや。
なんで俺様のことをジト目で見つめてるのだい?
倍率3倍か。いける気がする。
それに、他の奴らがどういう動機かは知らないが、個性と性格の悪さは俺様が一番の自信がある。
では、
ライバル達の実力はどうかな。
超主観的ルーク・スカウター始動。
チームA
男:知性溢れる爽やかイケメン。高身長・高学歴・高収入(懐かしいな、これ)な気がする。まぁ、おれの対義語的存在だな。
女:どこかの令嬢かな。品が良さそう。お似合いだ。
チームB
男:えーっと。この募集って年齢制限ないんですっけ? 限りなくお爺さん寄りのオジサン。ギラギラしたバブルの残り香(?)を感じる。
女:スタイル抜群。どこぞのホステスか? なんかフェロモン放っているぞ。どこでもおっぱじめられそうな気合いを感じる。なんだか一期一会の刹那を感じるな。
チームC(俺様)
男:顔はいいが小太り。無職。きっと爵位は一番高い。
女:可愛い。可憐。性格も良さそう。
……。
個性なら楽勝かと思ったけど。
スカウターデータの文字数、うちらが一番少なくね?
一番、影が薄いかも。やばい。
危機感をおぼえつつも、開始時間になった。
面接室に通される。
審査員は3人。
あれ。
真ん中の男、見覚えがあるぞ。
確か…、この前メイの誕生日の時に、商店の列を譲ってくれないから蹴飛ばした男だ。
いやさ。そいつが不遜だったのよ。
「おい、譲れ!」と言ったら「順番を守ってください」とか言い返しやがった。
蹴飛ばされて当然だろ。
そのくせ、なんか根に持ってるようだ。
逆ギレしやがって。
さっきから俺様のことを睨みつけている。
っていうかさ。
俺様だけいきなり匿名性ないんですけど?
それぞれ席につく。
俺様はよりによって真ん中の審査員の正面だ。
まず真ん中の審査員が挨拶をした。
「……さて、皆様には、アルファベットが振られた匿名の名札をお渡ししました。本日は素性や爵位など気にせず自由なプレゼンを期待しています」
うそつけ!
お前、ずっと俺様のこと睨んでるだろ。
それぞれが自己紹介する。
まず、Aカップル。
「私達は、昨年末に結婚した夫婦です。今回は、新婚夫婦らしい国外旅行のあり方を提言できればと思います」
なんか賢そう。しかも内容もご立派。
「花も実もある」って俺様のためにある言葉だと思ってたが、その認識を改める時が来たようだ。
次、Bカップル。
おっ。こちらは女性が話すのか。
「そのお。なんていうの? わたしぃ。アフター付き合ったら海外旅行に連れていってくれるって言われて着いてきたんですけどぉ?
そっちのAチームのお兄さん。かっこいいね。今夜わたしとどう?」
見たまんまやな。
って、爺さんの前で他の男に粉かけて大丈夫なのか?
爺さんの方を見ると、我関せずといった面持ちで、パートナーの尻を揉み続けてる。
すけーな、達観してるぞ。あの爺さん。
これはクズ枠でも思わぬ強敵出現かもしれない。
続いてCチーム。
「あの、お、おれ、僕、俺様はその今回は、…?、………お日柄もよく……?」
あれっ、俺様いつも威張り散らしてるから気づかなかったが、人前で話すのは苦手だったようだ。
メイが代わってくれた。
「わたしたちは、ご主人様とお付きのメイドです。わたしは一緒にこれて嬉しいです」
よし、メイ。
その調子だ。
「ご主人様は世間では、爵位を鼻にかけてゴミ、クズ、ウジ虫などと言われてますが、そんなことないんです。今朝だって、朝の運動をするぞ、と言われて寝室に呼び出されました……」
ちょ。メイ。
爵位の話は……。
せっかくの匿名性を放棄しないで?
朝の運動って……、確かに作戦会議の前にストレッチするぞ、とは言ったけど。
なんかニュアンス変わってないか?
それに、さすがにウジ虫とまでは言われてないぞ……。
真ん中の審査員、激しく頷いちゃってるんだけど。
メイさーん。
公開処刑って言葉しってますかー?
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