2人目
鐘の音で目を覚ますと、気づいたら夕方になっていた。ゆっくり起き上がり、ゾロゾロと寮に移動する学生達を眺めていると、駆け込んでくる足音が近づいてきた。
「すみません!!助けてください!」
「そうだねぇ……どうしたのかな?」
「これから告白しに行くんです!なんとか両思いにさせてくれませんか?」
「いやぁ、今からじゃどうしようもないんだけど……まぁとりあえずわかったよ」
困った顔をしつつ懐を探る。ああそうだ、こんなのもあったっけ。
取り出したのは小さな白紙の単語帳だ。男子学生に向けて軽く投げる。ナイスキャッチ。
「起きた出来事をこれに書いておいて、きっかり1日後に破ると無かったことになるよ。同じ出来事をやり直すことはできないから1回きりだけども、当たって砕けたら使ってみればいいんじゃないかな?」
「ないよりましか……ありがとうございます」
渋々だが承諾してくれたみたいだ。
「お代は使えそうなノートでいいよ、そこに置いといて。白紙が多いと助かるな」
男子学生はしばらくカバンをまさぐり、ノートを1冊置くと足早に去っていった。
みんな帰るみたいだし、そろそろ店じまいかな。それにしても勉学と恋、か。どっちも青春らしい良いお悩みだったな……なんだか僕も甘酸っぱいことがしたくなってきたよ。とりあえずアンバサでも買いにいこっと。
さっき貰ったノートを拾い上げ、蛍誓は屋上を後にする。彼が階段を下りるとともに扉が独りでに閉まり、鍵のかかる音がわずかに響いた。
蛍誓、学校に行く 鯛谷木 @tain0tanin0ki
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