第7話 ダンジョンと言えばエロトラップだろ?

 俺はあまりにもヤバすぎるこのスキルを駆使して、高坂紫音こうさかしのの詳細情報も確認しておくことにした。


 繰り返すがやましい気持ちはない。

 下心もない。

 ただ、念には念をというヤツだ。


 え?

 楯使いと剣使いの詳細情報?

 そんなもん見るわけねーだろ。

 目に毒だからな!


 鷹野の装備品と異なり、高坂が装備している魔法の杖には道具としての効果もあるらしい。


 火の玉を出すというのがそれだ。

 その場にとどめて松明の役割を持たせるも良し、指向性を持たせて発射して攻撃するも良し。


 道具として使う場合にはMP消費も無いらしく、なかなか厄介に思える。けれどその分、奪う価値もありそうだ。


 購入価格は50000円と出ていて、もう1年近く愛用しているらしい。


 俺が画面に釘付けになっていると、いきなりビー! ビー! と警報音が鳴って、俺は驚いて体がビクゥ! と飛び跳ねてしまった。


「おいおい、今度はなんだっていうんだ?」


 ――マスター、報告します。たったいま【識別NO.1FE】のゴブリンLv1が探索者との戦闘で倒されました。バトルモードより状態の確認が可能です。


「もうやられたのかよ!」


 確かにレベルの差は歴然。

 勝ち目は薄いとは思っていた。

 だからこそ全軍に攻撃命令を出したっていうのに。

 レベルが低いなら数で押す。

 そうすれば少しは勝率が高まると思ったんだがな。


「えーと、どれどれ?」


――――――――――――――――――――

ゴブリンLv1【識別NO.1FE】▶

HP0/24h

MP5

攻撃力5

防御力5

魔法攻撃力5

魔法防御力5

素早さ10

ジョブ:無し

現在の行動:瀕死


攻撃命令:ON/OFF

防御命令:ON/OFF

退避命令:ON/OFF

待機命令:ON/OFF

――――――――――――――――――――


 画面を開くと、さっきとは違った表記がなされていた。HPが0になっていて、その隣に24hと表示されている。


 それに一番下には、現在の行動:瀕死というふうに出ていて、このゴブリンがもう戦えない状態であることを示していた。


「なぁ、この24hっていうのはどういう意味なんだ?」


 ――マスター。24hというのは24時間を意味しています。このダンジョンに存在するモンスターはマスターの所有物とも言えます。ですから、完全な意味で死を迎えることはありません。その代わり、モンスターが倒されるといくつかのデメリットが生じます。


「デメリット?」


 ――デメリットの一つ目は、敵に経験値を与えてしまうということです。そしてもう一つが、モンスターが再起するのに丸1日を要するということです。そして、一番大事なのが3つ目。倒されたモンスターは、レベルが1下がってしまうのです。


「レベルダウンしちまうのか、それはキツいな。っていうか、それじゃあ今倒されたゴブリンはLv0になるってことか!?」


 だとしたらヤバすぎる!

 レベル0なんて聞いたことないぞ?

 きっと想像を絶する弱さなんだろうな……。


 ――ご安心ください、マスター。レベルの下限は1と決まっています。


「そ、そうか。それは良かった。…………それにしても困ったな」


 機械音声と会話している間にも、ビービーと警報音が鳴っている。


 こうしている今も、俺の配下モンスターが次々と倒されているんだ。


「仕方がない。これ以上モンスターを失えば次の探索者に対応できなくなる。ここは一度退避させて、罠で凌ぐのが一番だな」


 

 結局、ゴブリンがB、E、F、Iの個体が倒され、スライムはA、B、C、G、Hの個体が倒されてしまった。


 俺は瀕死になっていない全ての個体に退避命令を出し、今度はクラフト画面を開いた。


「ヒーラーがいる以上、攻撃系の罠の効果は薄い。となると拘束系の罠が一番か?」


 クラフト画面から罠をタップする。

 すると罠の効果が表示された。


 例えばドクドクの罠は、その名前のとおり、罠を踏んだ人間に【状態異常:毒】を付与するらしい。


 アツアツの罠の場合は【状態異常:火傷】を付与するそうな。


 拘束に使えそうなのはビリビリ、ヌルヌル、グチャグチャ、ギュウギュウの4つか。


「いや待てよ? そもそも俺は【フロア拡張】でダンジョンの形状を自由に操れるんだ。だったら全員を分断して、そのあとで全部のモンスターをぶつければ絶対に勝てるんじゃね?」


 俺の天才的な閃きは、しかしいとも簡単に粉砕された。


 ――マスター、その作戦は探索者を殺害する場合にのみ有効に機能します。しかしマスターは不殺を信条にしており、故にその作戦の効力は非常に薄いと言わざるを得ません。


「えっ、なんでだよ!?」


 ――確かにマスターの作戦は完璧でしょう。しかし、マスターは不殺を掲げているのです。つまり、探索者パーティ【光の環】によって、このダンジョンがどんなダンジョンなのかが流布されるのです。


「あっ!」


 ――気づきましたか。


「そう、だな。もし俺のやり方であの四人を退けたとしても、このダンジョンが攻略不可能に近いという情報が広まれば、誰も来なくなっちまう」


 ――その通りです。攻略できないということはメリットが無いということですからね。メリットがないということは、このダンジョンに探索者は訪れなくなります。そうなるとダンジョンのレベルを上げるのはほぼ不可能となり、必然的に電波の開通も不可能……。マスターは一生ソーシャルゲームにログインできなくなるのです。


「それは困る!!」


 ――えぇ。ですので、飴と鞭の割合を上手く調整するのが必要になってくるのです。


「なるほどな。だったらこうしてくれるわっ!」


 俺は剣使いの歩く一歩先にビリビリの罠を設置した。


 そして次は盾使いの一歩先にもビリビリの罠を設置する。


 すると二人は見事に罠を踏み抜き、全身を硬直させながら絶叫した。同時にウィンドウが2つ同時に展開され、二人の情報が表示される。


 剣使いはHPが80/101となり、その横に【状態異常:麻痺】と表示された。盾使いのほうはHPが111/135となり、同じく【状態異常:麻痺】となった。


「ふふふ、これで邪魔者は消えた! くらえ、これが回避不可能のトラップ攻撃だ!!」


 俺はトドメを刺す勢いで、鷹野と高坂の足元にヌルヌルの罠を設置した。


 ヌルヌルの罠の効果は、えっちな同人誌よろしく、触手が探索者に絡みついてあんなことやこんなことをして身動きを封じるというモノだった。


 このトラップは俺のダンジョンに相応しいと言わざるを得ない。


 だって、ダンジョンと言えばエロトラップだろ?


 トラップを踏んだ鷹野と高坂の全身をぬめぬめとした触手が襲い掛かる。二人は手足を拘束され、身動き取れない状態でヌルヌルになった。


 そして二人の喉から、恐怖と不快に満ちた嬌声が爆発した。


「ぬわーはっはっは! 素晴らしい、実に素晴らしいっ!! これぞダンジョンの醍醐味というものよっ!!」

 


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