第4話 不殺のダンジョン
ステータス画面からダンジョン・ショップをタップする。すると、そこにはずらりと商品の名前が連なっていた。
缶のコーラや缶コーヒー、緑茶、紅茶、ほうじ茶、その他に、アルコール類などの取り扱いもあるらしい。
飲料の隣にある食料の文字をタップすると、今度はおにぎりとか弁当とかカップ麺とかの名前があった。
飲み物も食べ物も1ページには収まりきらず、ページ下の▶ボタンをタップしていくと、20ページ以上にもなっていた。
すごい数のラインナップ……というか。
「ほぼコンビニじゃねーか!」
よくよく見たら、おでんとかホットスナックとかあるし。
キャラ揚げくんとかファムチキとか、いろいろと大丈夫なのか?
他には、家具家電とかいうコーナーもあって、それをタップすると、掃除機とか電子レンジとか冷蔵庫とか暖房とかエアコンとか、そういうのも揃えられるみたいだ。
缶の飲料が大体100ダンジョン・ポイント。
酒類は150~250ダンジョン・ポイント。
家電は、掃除機や炊飯器などは安いもので500ダンジョン・ポイント、高級メーカーのものでも1500くらいで購入できるようだ。
「へぇ、リフォームなんてのもできるのか!」
家具家電の横にはリフォームの文字があった。
俺はそこをタップしてみる。
藁の家のなかはすっからかんだった。
マジでな~んにもない悲しい空間。
リフォームをすれば、キッチンとかシャワー室とかつけれるのだろう。
「どれどれ?」
キッチンが2000ダンジョン・ポイント。
シャワー室も2000必要なのか。
え? 庭も作れるの?
すげーじゃん!
「庭は4000、増築費用は5000か……」
藁の家は一階建てだけど、二階・三階と増築できるらしい。
でも、藁の家を増築するうま味はなさそうだ。
「ていうか、家を建てられるならわざわざ部屋の大きさを元に戻す必要はないよな。となると、拡張機能の解放は後回しでよさそうか?」
――マスター。お言葉ですが、拡張機能の解放はなるべく早いほうがいいと思われます。そのほうがマスターのためになるかと。
「えっ、なんでだ?」
――家を建てることでマスターの悩みを解消することは可能です。ですがそれは応急措置的なものでしかないのです。【
「マジか、耐久値なんてのがあるのかよ。ってことは、今までの生活を送りたいなら、拡張機能を解放してフロアの大きさを元通りにしなきゃならんのか。そういえば、レベルの上昇に伴い外観や強度が上がるって言ってたもんなぁ」
――耐久値を上げるためには建造物のレベルを上げる必要がありますが、建造物のレベルはダンジョンのレベル以上には高くなりません。そしてそれは配下のモンスターのレベルやマスターのレベルも例外ではありません。なので、ダンジョンのレベルを上げることは最も重要な要素の一つなのです。
「へぇ~。それで、肝心のダンジョンはどうやったらレベルがあがるんだ?」
――マスター。ダンジョンのレベルを上げるためには、ダンジョンに経験値を与える必要があります。そして経験値は、探索者に与えたダメージがそのまま経験値としてダンジョンに還元されるのです。
「えっ。ってことは結局のところ探索者を倒さなきゃいけないのか? 俺、人殺しにはなりたくねーけど?」
――でしたら、不殺のダンジョンを作ってみてはいかがでしょうか?
「不殺のダンジョン…………。いいなそれ。うん、いい響きだ。気に入った!」
探索者を殺すとなると気が引けちまう。
でもダメージを与えるだけなら、俺みたいなチキンでもできる。
それに、俺には配下のモンスターやトラップがある。
直接手を出さなくていいっていうのは、精神的にかなりの心強さがあるな。
「とりあえずショップでできることも分かったし、必要最低限のものは買い揃えておくか」
俺は電子レンジと冷蔵庫をタップした。
どちらも500ダンジョン・ポイントで購入できるので、あまり高いという気はしない。
チュートリアルは3まで進めて、付与されたダンジョン・ポイントは合計で60000だ。
そのうち【施設作成】と【施設設置】で6000、藁の家の設置が1000で、合計7000使ってるから、残りは53000もある。
これだけあれば、1000くらい大したこと無いように思えるぜ。
家電を購入すると、ステータス画面に【購入済み商品】という項目が追加された。タップすると、そこには電子レンジ×1、冷蔵庫×1とあった。
俺はそれらをベッドのすぐ横に設置した。
この際もダンジョン・マップが表示されたので、家電の扱いもトラップや家と同じらしい。
区分としては、自立して行動するか否かといったところか。
ゴブリンやスライムは自立して動くので、そのフロアに設置するだけであとは放置しておけばいい。
俺は家電を設置した後で、もう一度ダンジョンショップを開く。
「とりあえずエナドリは買いためておくか。あとは弁当も買っておこう。カップ麺もいいな」
俺はある程度買い貯めて、それらを冷蔵庫に入れた。
そしてカップ麺を買ったあとにお湯が沸かせないことに気付いたので、給湯ポッドも500ダンジョン・ポイントで買っておいた。
それでも消費したのは3000ダンジョン・ポイント。
まだ50000も残っているので、その内の10000を消費して【フロア拡張】の機能を解放した。
――マスター。おめでとうございます。フロア拡張についての説明はチュートリアル4の内容ですが、さっそくチュートリアル4を開始しますか?
「もちろんだ! チュートリアルはとっとと進めたほうがいいからな」
――了解しました。ではさっそくフロア拡張の文字をタップしてください。
「オッケー」
フロア拡張をタップすると、ダンジョン・マップが開かれた。
しかしそのマップはいままで見たものとは違う。
間取りの枠が赤線になっていて、さらには縦線と横線とが引かれて区分されている。
そしてその平面マップの真横にはダンジョンの高さが追加された立体マップも表示されていた。
フロアはピンチアウトによって大きくなった。逆に、ピンチインをすると、フロアが狭まっていくようだ。
――マスター。それらの他にも、切り取りや貼りつけ、コピーなどによってフロアの形状を自由自在に変化させることができます。この機能を上手く使って、探索者の進行を退けることも大事な仕事の一つですよ。
「思ってたよりも凄い機能だなコレ」
俺の指の動きに応じて、壁が遠くなったり近くなったりする。さらには天井を低くしたり床を高くすることもできる。
「ははっ、なんか楽しくなってきたぞ」
俺はしばらく遊んだら満足したので、10Fに配置したゴブリンとスライムをF1からF9に配置した。さらに藁の家もF9に移動させて、そのあとでフロアの大きさを元通りにした。
「うん、このほうが落ち着くな」
やっぱり、一人で過ごす分にはこれくらいの広さがしっくりくるな!
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