亀のあくび
日課の散歩をしていると、池で亀があくびをしているのを目撃した。へえ、亀ってあくびするんだと思った。
しかし、ふと疑問を抱く。人間から見てそれはあくびに見えたわけだが、本当に亀はあくびをするものなのか。亀にとってあくびは必要な行動なのか。というか亀ってあくびをするのか。
文明の利器を利用し調べてみる。どこまで正しいかはわからないが、人間の思うあくびではないということがわかった。が、インターネットなので詳しい真偽はわからない。曖昧な表現も多い。なのでもし亀にとてつもなく詳しい方がいれば返答を頼む。亀はあくびをするのか否か。
あくびをしていた亀は外来種である。ミシシッピアカミミガメだ。彼らは堂々と日本の池で日光浴をしながらあくびをしていた。彼らによって追いやられている生物がいるにも関わらず、彼らは悠然とよく晴れた空の下あくびをしていた。
いつもなら私もおのれ外来種とか、あいつらを野に放ったのは愚かな先人たちだとか偉そうなことを考えるのだが、今日は違った。ミシシッピアカミミガメのあくびを見て、ああ穏やかな日だなと思った。亀がのんびりとあくびをするような世界が今日も続いているなんて大層なことまでは考えなかったが、それでも似たようなことを思ったわけである。
私は頭でっかちな人間であると自覚している。直感よりも理論や理屈で動く方が多いし、根拠がないとどうも動きにくいし信じにくい。だからその辺にあるナガミヒナゲシとかアカミミガメのことを見ては外来種めと思ったりするのだ。
だが、今日は違った。ふと目にした亀のあくびに心を穏やかにすることができた。思うに、これはたまたま、ふと目にできたことが要因だったのではないか。あくびを目撃した瞬間、私はそれがアカミミガメだとは認識してはいなかった。まあその池にいるのはアカミミガメ程度しかいないのだが、それでも認知できていなかった。不意に目に入ったからだ。だから難しいことを考えず、亀のあくびだ、と思ったわけである。
亀があくびをするという情報だけだとこんな気持ちなのか。逆に、ここにミシシッピアカミミガメという情報が付随しただけで色々考えてしまうのか。固有名詞になっただけでここまで話のイメージは変わる、改めて言葉というか文字というか名前という情報は厄介なものだと思ったのである。
時には考えすぎずに物事を見ることも大事なのかもしれないと思った。だが、性格的にそれはなかなかハードモードかもしれないとも思う。だが、少しずつやっていくべきだよなあとも思ったのであった。また次回。
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