第3話 生命の誕生
「北斗、彼奴がこの大学の総帥っちやっちゃ。格闘歴20年、子供んときから父親で師匠でもある絶界戦士の血を引く強者やで。」
「哲、お前いけや。」
「なんでやねん!」
「なんでやねんやないやろ。弱いもんが先に行く、組として至極当たり前や。」
「お前、いつから組長やねん。まあええ、ほな、ちゃちゃっと片付けてと。
哲と大学の総帥とのバトルと同じ時間に、開け放たれた銀河系宇宙には、巨大な磁気嵐がそのブラックホールを通じて吹き込み始めた。
星の塵が無数に広がる巨大な壁のように銀河系を襲った。
冥王星、海王星、火星は次々とその塵にまみれ光を閉ざされた。
そして今、生命の源である太陽さえもその闇の中に沈もうとしていた。
「あ痛!痛いやないのぅ、われ、わしの顔に傷つけるゆうんか。女にモテモテのこの色男の顔を、潰すっちゅうんか!許さん、許さへんでぇ!」
「哲!ブサイクな顔、直してもらいぃ!」
「アホ抜かすな、茉優とのセックスの前にピチピチの肌を傷つけられるわけにいかんのや!」
みるみる総帥を蹴りと拳で追い詰めていく哲。
「これで、ぢ、エンドや!」
二人の喧嘩に決着が着く、その瞬間だった。
何処からともなく、砂塵のような磁気嵐の一部が、この星に入り込み、電線に強力な電流が流れ、負荷に耐えきれない電気線はゴムから溶け出し、高速下の河原にいた三人の近くでは、変電設備に異常が起こり、変圧器は次々に爆発。
地中を走っている光ファイバーも容量をオーバー、地割れを起こしながら、閃光を噴き上げた。
物理学の観点からすると、磁気嵐により光分子が使われるこの地の多くのエネルギーは異常を起こすことが分かっている。
家庭内の家電もその一つ。
この地は、最も遠くに瞬時に運動を伝えることの出来る光分子に頼り切っているのだ。
光化学エネルギー、量子物理学により作られた地球に似た星、奇跡の星の復活は、二度目の失敗を繰り返そうとしていた。
地球が、消失してから2億年が経過している新たな地球も言えるこの星、海円星。
中心にはメタンを含む酸化鉄で出来た核がある。
核の周囲には水でできたマントルがあり、常に流動しつつ水圧を逃がすために星に出来たスリットから大量の水を吹き出している。
星表面に溜まった水は、星との衝突で出来たクレーターに流れ込み、それは丁度地球の海と同じ様に水たまりを作った。
その海の中には微生物が存在し、微生物は、周囲にあったプランクトンを分解しつつ、酸素を合成させた。
大気はいつも不安定で、嵐や竜巻などが頻繁に起こった。
それにより海中にあるべきものが大量に陸地に打ち上がった。
多くの有機物が環境の変化で死んでいく中、一個の石だけは何故か生命力に溢れた姿かたちを変化させずに生き残っていた。
その石には炭素が多く含まれていて、電子イオンも活発な行動を示している。
炭素がカルシウムイオンにより化学反応を起こし、大気中の酸素を取り込んで、ある細胞を生きている状態に保っている。
その細胞が24時間ほどで細胞分裂を起こし、繰り返すことで染色体が変化を起こす。
鎖状のタンパク質で出来たチェーンリアクションを作り、それを又、細胞分裂で整合していった結果、ある生命を生むことになった。
その細胞こそ、その染色体こそ、なんでも無い人間そのものだったのである。
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