「花のワルツ」川端康成

 「これ、川端のおじさんが書いたの?」と失礼ながら著者の欄を確認したほど、タイトルの「花のワルツ」に、まさに、ぴったりです。


 男性はこんな小説を書くだろう、そして女性はあんな小説を書くだろう、なんて幻想です。自分の偏見が恐ろしく恥ずかしくなりました。男女云々というのはもちろんあると思いますが、それと同時に、我々は厚めの大脳新皮質を持つ生物なのです。

 それを舐めていました。すみませんでした。これは誰への謝罪かといいますと、私はなんだかむやみやたらに謝りたい気分になっただけの話です。


 さて、こちらは繊細なタッチで芸術的な躍動感が込められています。バレエの動きのように優雅に進んでいく、その運びの中をよく覗き込むと、人間の感情のほどばしりがみっちりと書き記されているのです。


 私は川端康成氏の作品を読むと、なんだか細密画を見ているような気分になるのです。それほど人の心を如実に、あますところなく捉えながら、蛇足に思える部分がまるでないという、まさに達人の所業です。


 「芸術家のお手本」のような登場人物が登場し、それぞれが人格の幅の規律を乱さず、しっかりと自分の役に徹し、終演まで踊り続けます。おすすめです!

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