第2話魔人、酒場にて

 王国の宮廷のお抱え詩人、詩的魔人

今日は休暇なので、昼から城下町の酒場に来ている


この酒場、いつも昼間っから酒を振舞う

なので、飲んだくれの巣窟

中にはガラの悪い連中も来るところなのだが、

魔人、そんなことには全く構わず、

従者の黒猫と、乾杯する


「黒猫よ、いつも私の詩作に付き合ってくれて、ありがとうよ

今日は私のおごりだ、好きなだけ飲むがよい」

というと魔人、手元のビールを黒猫の小さいコップにかちんと合わせる

「乾杯!」


「魔人様~、嬉しいのですが、まだ全然王様の宿題やってないですよね?

いい加減、王様もご立腹なさるのでは?」

魔人はそれを聞くと、にっこりと笑いこう言った

「まっ、それはそれ、これはこれじゃ、

黒猫よ、人生は楽しまねばならぬ。今日はおぬしに対する日頃のお礼だ

好きなだけ飲むがいい」


乾杯を終えると、独りと一匹、王様の宿題のことは忘れて、

昼間っから、飲む、飲む、飲む


牛肉のソテーにカボチャのスープ、新鮮なサラダに、海鮮サラダ

昼間っから、ご馳走にお酒、

さすがの黒猫も王様の宿題は気にならず、どんどん飲む


しばらく、酒がすすむと、とある酔っ払いのじーさまが魔人にからんできた


「おう、魔人殿、貴殿は宮廷お抱えの詩人と聞く

ならば、その素晴らしい腕前、我々にも披露してくださらぬか?」

大声で、じーさまがそういうと、周りの酔っ払いも

「おお、ぜひ、ぜひ、詩人殿、よろしく頼む!」といいだした


魔人、まんざらでもない顔をして、「いいでしょう」

というと、黒猫に「例のやつを頼む」

というと、黒猫、かたわらのバグパイプを取り出し、吹き始める

ぷぅ~、ぷぅ~、ぺぺ、ぷぅ~、ぺ~♬

それに合わせて、魔人が詩を奏でる


おお、昼間から酒場で飲み続ける諸君たち♬


ご馳走にお酒、それはそれでいいだろう♬


しかし、人生にはそれよりも大切なことがある♬


それは生きがいを見つけること♬


生きがいをみつけ、それを糧にし、成長する♬


生きがいはおのれの人生を豊かにし、そして糧を与える♬


おお、輝かしい未来、それを形作るのは、諸君の生きがいなのだ♬


さぁ、見つけに行こう、生きがいを♬


さぁ、歩き出せ、未来に向けて♬


(バグパイプ)ぷぅ~、ぷぃ~、ぷぅ~、♬


詩人は歌い終えると、満面の笑顔で一礼し、周りを見渡した

すると、酔っ払いたち、感動して、拍手喝さい

「おお、いいぞ~、魔人殿の詩は、真実を言い当てている」

「おお、感動したぞ、あすから頑張る力をもらった~」

「まぁ、そこそこ、いい出来じゃな」

などと、すこぶる評判がいい


魔人、酒が入ると、詩ものってくる


酔っ払いたちが、魔人に握手を求めてくる

魔人は快くそれに応じ、酒場は喜びで一体となる


黒猫もご主人が喜ばれているので、満足そうだ、そして言った

「魔人様、こんなに素晴らしい詩が歌えるのに、

どうして、王様の宿題できないのですか?」

魔人は、うっと困った顔になったが

「黒猫よ、宿題は宿題としてとっておいたほうが、

後々、宿題をやり終えた時にその価値が上がるのだ」

という言い訳を述べて、

ビールをぐびっとあおるのであった


魔人と黒猫、今日ものどかな時間を過ごすのであった






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