一曲目 きゅうくらりん(後半)
「ああ 虹がかかってる空 きれいと思いたくて」
この歌詞は、二通りの解釈ができると思います。単純に鬱病で虹をきれいだと思えない説と、「虹がかかってる空」=「あなたとの明るい未来」説です。二つ目の説は、コメ欄で見つけました。思いついたコメ欄の天才を、褒め称えましょう。
「焦がれては逃げれないこと みんなにはくだらないこと もう どうしようもないの わたし きゅうくらりん」
ここ! 僕が一番、好きな歌詞です。昔、眠るのが怖くて眠れなかった時期があるんですよ。「眠っている間って意識がなくなるんだよね? えっ、それって死ぬのと一緒じゃん‼」って。そのことを家族に言ったらですね、「くだらないこと考えないで早く眠れ」って言われたんですよ。辛かったですね。今はすぐ眠れますけど。
この歌詞は、そういう「他人にはわかってもらえない苦しみ」を、本当によく言語化していると思います。「ねえお母さん、今日学校で、○○ちゃんにちょっと不自然な笑顔を見せちゃった気がするんだ……」「そんなくだらないことばっかり気にしてたら、生きていけないわよ」みたいな感じですね。自分にとっての石ころは、誰かにとっての隕石になることがある。「きゅうくらりん」に出会ってから、そう思って生きるようになりました。
「そばにたぐりよせた 末路 枯れ落ちたつぼみが こんなにも 汚らわしくて いじらしい」
「そばにたぐりよせた 末路」は、首を吊るための縄だと思います。「枯れ落ちたつぼみ」=「花を咲かせずに枯れてしまったあなたへの恋心」を、汚らわしくて、いじらしいと言っていますね。「いじらしい」とは、「健気でかわいそう」という意味です。この「いじらしい」という言葉は、基本的には自分よりも弱いものや、幼いものに使います。あなたに恋をした自分を、くらりちゃんは弱くて幼いと思っているんですね。もしかしたら……「あなたに恋をしても、結局、私自身が傷つくだけだ」ということは、最初からわかっていたのかもしれません。なのに、寂しさや好きという気持ちに負けて、あなたを好きなってしまった私は、くらりちゃんにとって「汚らわしくて いじらしい」ものなんです。
「ああ 呪いになっちまうよ ああ 諦めたって言わなくちゃ 頭の中で ノイズが鳴り止まないから 空っぽが埋まらないこと 全部ばれてたらどうしよう」
このまま生きることと、あなたに未練を抱き続けて死んだら、私は呪いになってしまう。だから、「諦めたって言わなくちゃ」。「言わなくちゃ」と自分に義務づけていることから、本当はまだ諦めたくないと思っているのがわかりますね。だけど、頭の中ではノイズが鳴り止みません。正常な判断なんて、もうこの時のくらりちゃんにはできないんです。
「ああ あの子の言う通り 終わりなんだ」
「くらりちゃんってさ、無理して笑ってるよね? みんなも、○○君(あなた)も大丈夫かなって心配してるよ」とか、言った側には、きっと悪意はなかったんじゃないかと思います。ですが……その言葉が、トリガーとなったんです。
「ああ 幸せになっちまうよ ああ 失うのが辛いな」
クライマックスです。まず、「ああ 幸せになっちまうよ」ですが、これは「このまま生きていたら、私は幸せになってしまう」ということですね……はい、おかしなところに気づきましたか? 「このまま生きていたら、幸せになる」ってことは、「空っぽが埋まらないことが全部ばれても、あなたは私を嫌わない」ということが、わかっているということですよ。最初、少なくとも僕は、「あなたに嫌われたくないから、くらりちゃんは、空っぽが埋まらないことを隠している」と思っていました。そうじゃないとするなら……どうして、くらりちゃんは、空っぽが埋まらないことがばれることを、恐れていたのでしょうか? 考えられる答えは……空っぽが埋まらないことがばれたら、あなたは今までよりもくらりちゃんを大切にするから、です。
あなたに大切にされたら、くらりちゃんは今までよりも幸せになりますよね。幸せになった時に、くらりちゃんが考えること……それは、「その幸せを失った時のこと」なんです。
「全部ムダになったら 愛した罰を受けるから」
「全部ムダになったら」=「隠していたことが全部ばれたら」ということで、「愛した罰」=「幸せを失った時のことを考える苦しみ」です。そしてくらりちゃんは、「愛した罰」から逃げるために死を選びます。
「ひどく優しいあなたの 胸で泣けたならどうしよう 最後見たのはそんな夢 わたしちゅうぶらりん」
空っぽが埋まらないことがばれるのを恐れていたくらりちゃんですが、最後に思ったことは、「この秘密も苦しみも全部さらけ出して、あなたの胸で泣きたい」ということでした。
そして、最後の「わたしちゅうぶらりん」で、この歌はアウトロもなく終わります。くらりちゃんは首を吊り、その人生に自ら終止符を打ったのです。
・曲について
あえて語りません。聴いてみな、飛ぶぞ。
・MVについて
これも見てもらった方が早いのですが、見た上で考えられる説が二つあるので、布教します。まず一つ目は、「きゅうくらりんを象徴するあの頬っぺたを押さえるポーズは、実は自分の手で口角を上げて、無理して笑っているのでは?」という説。そして二つ目は、「ああ 呪いになっちまうよ~」のサビでリュックを背負っていないことから、「学校に行かなきゃという強迫観念が消えた」=「死を決意したのでは?」という説です。……はい、やっぱりいよわさんは天才ですね。
・まとめ
鬱病を患った人の苦悩、死に至るまでの気持ちの変化が、歌声・歌詞・曲の全てで本当によく表現された作品です。あと、この曲のモチーフは、「ドキドキ文芸部」というゲームの「サヨリ」という女の子だと言われています。この「きゅうくらりん」は、サヨリとは別の女の子の話としても、サヨリの話としても楽しめます。
この「きゅうくらりん」で、僕はいよわさんの沼にハマりました。それまでは、ボカロなんて全く聴いてこなかったのに、一瞬でハマりました。くどいですが、辛いことがあったら、人に言いましょう。理解されなくてもいいから、とりあえず言葉にして吐き出しましょう。そして、自己肯定感を高めましょう。生きる理由をたくさん持ちましょう。 「きゅうくらりん」を聴くと、将来、自分の子供に言い聞かせたいことがたくさん溢れてきます。
……ということですが、まあ、僕のこんな言葉より、「きゅうくらりん」を聴く方が、よっぽど効果があるので聴いてください。一億万回くらい。それでは、これで一曲目「きゅうくらりん」の布教を終わります。
趣味の話~いよわソングを布教したい~ てゆ @teyu1234
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