第31話「プールのその後」

市民プールからの帰り道。

エリナら三姉妹と映太ら3人組は、その様子を見せつけられているその状況に対して何を思えばいいのかも分からず、ただそれを見せつけられるしかなかった。

その様子というのは……


「えへへ〜陽彩好き〜!」


「そうかそうか!!俺もだぞ!!」


べったりとくっつきながら歩く陽彩と向日葵。

先輩同士がこうもイチャイチャする様を見せつけられては、6人にとっては静かに見守る他無いと言えるだろう。


「だが向日葵!!街中でこんな堂々と俺にくっついていいのか!?お前有名人なんだろ!?」


「あっそうだったー!いけないいけなーい!うっかりしてたわ!てへっ♡」


「もー気をつけろよー!!」


とは言いつつも全く離れる気のないこのカップル。

プールに来たばかりの頃の様子とはだいぶ様変わりした情緒の2人を見て、翔子と清司は小声でこう話す。


「なぁ……なんか……バカップ……」


「ダメだよ翔子。先輩にバカなんて言ったら。」


「お前も思いっきり言ってるじゃねーか。」


「まぁ……そう見えるのも仕方ないからね、あれは。」


「まさか陽彩先輩ははなっから向日葵先輩の事を女として見てたけど、恥ずかしくてその気持ちを隠してたなんてなー。」


そこに映太が割って入り先程陽彩が告白していた事を話す。


「エリナちゃんはどう思う?」


「えっ私?えっとー……好きな人同士は素直になるのが1番だと思います!」


「……だよな。」


「なんですか今の間は?」


エリナの答えに対して映太が思った事、それは「素直になった途端あんな急に変貌するものなのだろうか」という事である。

だが恋というものはどれだけ自分と相手に素直になれるかが肝心なのであり、余計な事に考えを巡らせる事よりも素直に相手に思いをぶつける事が大事なのだ。


その点においては陽彩と向日葵は自分の気持ち、そして相手の気持ちに向き合い認めあった仲……この2人に余計な駆け引きなどは野暮なのだろう。


「向日葵の水着姿、可愛らしさとセクシーさが合わさっていて良かったぞ!!」


「ホント!?嬉し~!」


「来年も……いや、来週にでもまた見たいな!!」


「も〜陽彩ったら!!」


「……もうちょっと駆け引きするべきだと思いマスよあの2人は。」


「エルザちゃん誰に対してそんな事言ってるの~?」


あまりのイチャイチャっぷりにエルザは思わずそう呟いてしまった。


「え、映太さん!!」


「何?」


「私の水着姿は……向日葵先輩より可愛かったですか!?」


その時エリナは勇気を出して映太にそう聞いた。

彼女はプールを出てからこう思っていたのだ……体型でも水着のデザインでも向日葵の方が勝っていた。

映太は自分ではなく彼女の方が可愛いと思っているのではないか?

……と。


こっちもこっちで程々の恋愛脳なのであった。

映太はどのような答えを自分に返してくるのか……不安だったエリナに映太はこう返す。


「もちろんエリナちゃんの水着の方が可愛いに決まってるだろ!!」


「え、映太さん……!」


映太は即決でエリナを選んだ。


(良かった……私の魅力は向日葵先輩に負けてなかったんだ……!)


(エリナちゃんの方が可愛いに決まってるだろ……何故なら俺は……微乳派だから!!まぁ胸以外にもサラッとした金髪とか赤い瞳とか綺麗な肌とか、魅力的な所はたくさんあるんだけどな!!)


と、エリナは内心喜ぶも、映太は決して言えないエリナを選んだ理由を脳内で独白する。

だが2人とも表情に考えが透け出ていて、エルザとエルシャナは照れを抑えきれていないエリナの表情を見てその可愛らしさに思わず頭をナデナデしてしまい、清司と翔子は今にもヨダレを垂らしそうな映太のにやけ顔に軽蔑の表情を浮かべる。


(エリナちゃん可愛い(わね~)(デース))


((映太、キモ……。))


そうこうしている内に陽彩と向日葵は自分たちの家がある方向への分かれ道で映太らと別れ、映太らもそれぞれの家へと帰っていった。



映太は気がついたら、先が見えず天井も床も壁もないように感じる真っ白な謎の空間にいて、しかもプールの時の海パン一丁の姿だった。


「え?何故に海パン一丁?」


突然陥った謎の状況に困惑するも、その時背後からある人物が現れた……自分同様水着姿のエリナだ。


「エ、エリナちゃん!?」


「え、映太くん……ご奉仕させていただきます!」


「ゴホーシ?」


エリナが突然言った言葉に映太が困惑していると、彼女は突然映太を押し倒し、映太の上に跨ったのだ。


「え?ちょ……エリナちゃん!?」


「……映太君……私で……気持ちよくなってね……?」


「こ、こ、これは……エッチな夢だー!」


自分の上に跨り、水着をはだけさせ、さらに頬を赤くした表情で「気持ちよくなって」と言うエリナの姿を見て初めて映太は理解した……これはいわゆる「エッチな夢」なのだと……



「はっ!」


映太はいい感じの所で目が覚めた。

スマホの時計を見るとタイマーが鳴る7時の数分前だった。

それはそうと映太は夢の事を思い出し、自分の下半身に目をやるとこう呟く。


「着替えなければ……。」


映太は即座にズボンとパンツを着替え、朝食、顔洗い、歯磨き、登校準備を終えて家を飛び出した。



「って事があってさー。」


「うん……。」


「いやーこういうの話せる男友達がいて良かったわー。」


「そうだね……。」


映太はその日の朝起こった事を、連れション中の清司に笑いながら話す。

清司としてはこういう猥談もたまにする事があるので慣れているが……。


「つまり映太、エリナちゃんとそういう事したい……って事?」


「うーん……自覚は無いけどそういう事じゃね?そういう清司こそプールでエルザちゃんの水着見て○ん○んたっ__」


「ぎゃー言うなー!!」


そんなこんなで、高校の夏用制服も板についてきた映太らの日常は過ぎていき……いよいよ夏休みがやってくる。






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