第32話「夏休み(三馬鹿サイド)」
夏休み初日、映太は自分の家に翔子と清司を呼び、3人で夏休みの宿題をやる事を決めた。
午前9時頃、2人が映太の家に到着し3人で夏休みの宿題に手をかけた。
「……暑くない?」
「クーラーちゃんと効いてるのか?」
「親父が昨日大家さんに抗議しにいったけど、しばらくはこのオンボロクーラーで我慢してくれってよ。」
映太らはあまり効いていないクーラーに文句を言いつつ宿題を進め、それぞれ分からない所は他の2人に聞きつつ宿題を進めていく。
「なぁ。」
「何?」
「まさかスコットランドから来たソニービーン族の末裔と友達になるとは思わなかったよな。」
映太はふと、宿題を進める片手間でエリナ達の話を始める。
そんな奇跡みたいな出会いが起こるものなのかと映太はずっと考えていたそうだ。
「まぁ……あれだな。ソニービーン族って言ってもしっくり来ないけど……雪女とか狼男の末裔と考えると結構ヤバいかもな。」
「そうだね……でも3人とも優しい人で良かったよ。エルザちゃんは日本の文化……アニメと特撮が好きみたいだし。僕と同じ趣味の友達ができて僕は嬉しいよ。」
清司はそのソニービーン族の末裔の中に自分の好きな趣味を共有するできるエルザという存在がいてくれた事が、自分にとって何よりも救いだと思っていた。
そして彼は映太と翔子にこう聞く。
「僕の趣味と言えば……覚えてる?僕達が中学一年生の頃、僕がこの街に転校してきた時の事。」
「え?あぁ……。」
「私達が連むキッカケになったやつな。」
3人はその時だけ宿題を進める手を止め、自分達が仲を深めるキッカケになった中学一年生の時の出来事を思い出す。
◇
「と、東京から引っ越してきました……中川清司……です。皆さんよろしくお願いします……。」
「皆さん、清司君と仲良くしてくださいね。」
東京から引っ越してきた清司は、しばらくの間自分の趣味を隠してクラスの生徒達と接してきたが、ある日それがクラスの皆にバレてしまう出来事があった。
クラスの中で4人のグループを作って英語で会話をするという、英語の授業をしていた時の出来事だ。
「What do you do on your days off?」
「あ……アイム……(あ、あまり話をした事のない女子と会話するなんて緊張する……!て、手汗が……ハンカチを……。)」
清司は女子との会話に緊張してしまい、緊張から手汗をかいたのでポケットからハンカチを取ろうとするが、ハンカチではなく別のものが入ってるポケットに手を入れてしまい、その別のものがポケットから落ちてしまう。
それをクラスの男子生徒に見られてしまったのだ。
「清司く〜ん!これは何かな〜!」
「あっ……!」
清司が落としたのは特撮ヒーローのアーケードゲームのカードで、それは彼にとってのお気に入りのカードであり毎日お守りとしてポケットに入れているのだ。
「清司くんこんなの好きなの〜?おこちゃまだね〜笑こんなの卒業しなよ〜笑」
「や……やめ……。」
「みんな見て〜ちゅうも〜く!笑清司くんが学校にこんなものを持ってきてました〜!笑こんなもの学校に持ってきていいのかな〜?笑」
「うぅ……。」
隠してきた自分の趣味を晒され、笑いものにされようとしている。
そんな事は清司にとって1番避けたかった事だったが、無慈悲にもそれは起こってしまった。
皆の視線が彼に突き刺さり、その場から消え去りたいと思う程に追い詰められた清司だったが、彼を2人の生徒が助ける。
「おい!可哀想だろ!」
「は?」
「可哀想だっつってんだよ!聞こえねーのかバカ!」
「バ、バカァ!?」
まず声を上げたのは、その時点では清司にとっては「あまり話をした事のない女子」だった翔子で、次に彼女同様「あまり話をした事のない男子」だった映太が清司のカードを晒しあげた男子生徒のカバンを開き、そこからあるものを取り出す。
「そういうお前だって学校にエロ本持ってきてるじゃんかよー!ほらー!」
「うげっ!?」
映太は嬉々とした表情で男子生徒のカバンから18禁指定のグラビア誌を取り出し生徒達に晒しあげる。
「オイ!?それはねぇよ!?」
「お前こそねーよ。人のもの晒すからには自分も晒される覚悟持てよ。」
「おこちゃまとエロエロ大魔神おっぱい星人はどっちがマシかな〜?え〜?」
翔子と映太にそう言われ膝から崩れ落ちた男子生徒はその場にいた英語の教師に説教をされた後グラビア誌を没収され、清司は翔子と映太によって助けられたのだった。
「この雑誌は没収します。放課後職員室に取りに来るように。でなければこちらで処分します。」
「……すみませんでした……。」
「大丈夫か?ほれ。」
映太は男子生徒からカードを取り返し、それを清司に返してあげた。
「あ……ありがとう……2人の名前……なんって言うんだっけ?」
「私は虎雅翔子。よろしくな。」
「俺ぁ三条映太!よろしくな清司!」
「よ……よろしく……翔子……映太……。」
◇
「そう言えばその1件まで俺と翔子ってそんな仲良くなかったもんな。」
「あぁ。私が清司を助けようとしたらお前が加担してくれて、そのまま私達3人仲良くなったんだよな。」
「2人には感謝してるよ。きっと2人がいなかったら僕はずっと趣味をバカにされ続けただろうし……。」
清司は改めて映太と翔子にあの時の事は感謝しているという意思を示す。
だが2人はそれほどの事ではないと思っているようで、その意思を清司に返した。
「良いって事よ。」
「気にすんなよ。」
「2人とも……。」
「感謝してるならアイス奢ってくれよ。」
「映太はすぐそういう事を言う!」
「へへっ、冗談だよ。」
「いや、買うよアイス。皆で食べようよ。」
「良いのか?お金足りる?」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。私自分でアイス選びたいから3人でセ○ン行こうぜ。」
「じゃあ俺も行く!」
「この宿題が終わったらね。」
そうして3人は1時間ほどの時間をかけてその日にやる分の宿題を終え、3人で映太の家の近くのセ○ンへと向かった。
夏はまだ始まったばかりだ……。
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