第29話「水着大作戦」
この日、映太と清司と翔子の3人組、そしてエリナ、エルザ、エルシャナの三姉妹は街のプールに遊びに来ていた。
梅雨を過ぎて季節はすっかり夏になっており、夏といえばプールだろう、という映太の提案でエリナらも誘って6人でプールに来ていたのだ。
とりあえず水着に着替える為にそれぞれの更衣室に向かった6人だったが、男子サイドでも女子サイドでも、彼ら彼女らは同じ高校のある先輩に出会った。
その人物とは……。
「おっ、映太君に清司君じゃないか!」
「陽彩先輩!」
「せ、先輩もプールに遊びに来てたんですね。」
「あぁ、同級生がプールに行きたいと言ってたのでな!」
「友達っスか?」
「でも更衣室に他に人は……。」
「女子生徒だ。向日葵って言う女子生徒!その子からプールに誘われたんだ!」
そこにいたのは映太らの2年の先輩で以前ドッジボール大会で活躍していた多島陽彩だった。
彼は幼なじみの天田向日葵という女子生徒の誘いで自分もプールに来たという理由を話す。
「向日葵先輩……?」
「あ、あの向日葵先輩!?」
彼女の名前を聞いた映太はとくにピンと来ていない様子だったが、清司にとっては……というか映太以外の殆どの生徒からすればその名前を聞けばすぐに顔が思い浮かぶような生徒なのだ。
◇
一方で女子更衣室で着替えをしていたエリナら三姉妹と翔子だったが、ある人物の姿が翔子の目に止まる。
「ねぇ、あの子……!」
「なんデスか?」
「あの子は確か……天田向日葵先輩ね。」
その人物はエリナらと同じ高校の2年の女子生徒、天田向日葵だ。
そして自分の事をヒソヒソと話している彼女らに対して向日葵は笑顔で手を振って返した。
「て、手振られちゃったよ……。」
「あの先輩がどうかしたんですか?」
「エリナちゃん、○ouT○be見たことないの?」
向日葵が何者なのかピンと来ないエリナに対してそう聞くエルザ。
エリナは○ou○ubeがどうしたのかとエルザに聞き返し、彼女は自慢げにこう話す。
「あの人は○ou○uber名「日向荘の管理人」として○ou○ube活躍しているチャンネル登録者60万人の有名人デース!最新のお化粧品をレビューしたり、流行のファッションを分かりやすく紹介したりする人デス!」
「なるほど……それは凄い人ですね。」
向日葵について熱く語るエルザの様子を見てエリナは彼女の凄さを何となく理解する。
自分についてそう語られるのを聞き耳を立てて聞いていた向日葵は……
(フフン、あの子達……私に憧れの眼差しを向けているわ!まぁ当然よね!私は蟹張高校始まって以来の最高の人気者だもん!)
と、嬉しそうな表情を隠すこと無く脳内で自分を賛美していた。
だがそれはそうと自分の今日の目的を思い出す。
(今日はこの日のために買っておいたこのセクシーな水着で陽彩を悩殺してやるんだから!最高に可愛い私がこれを着るんだから陽彩もきっと私のことをもっと好きになるはず!この姿を見せてあげるのは陽彩だけなんだから!)
彼女が陽彩をプールに誘ったのは、以前購入した新しい水着を彼にアピールする為である。
だが、陽彩と向日葵は付き合っている訳ではない。
2人は幼なじみなのだが、自分の事を女性として見てほしい向日葵に対して陽彩は全くその気が無いのだ。
(だから今日こそはアイツに私の事を絶対に女性として意識させてやる……!)
◇
そうして男女それぞれ着替えを終えてプールのある広場に足を踏み入れた。
「うぉ〜!エリナちゃん水着可愛い〜!」
「そ、それ程でも……。」
映太はヒラヒラのついたエリナの水着を初めて拝む事ができて満足しており、彼女は照れつつも満更でもない表情を浮かべる。
「清司君!!私の水着どうデスか!?」
「え、えっと……その……かわいいんじゃないかな〜……?」
「ありがとうございマス!」
エルザはこの日の為に買っておいた真っ白な水着を堂々と清司に自慢し、彼はパニクりつつもなんとか良い褒め言葉を見繕ってその言葉でエルザの水着姿を褒めようとする。
微妙な褒め言葉だがエルザにとっては十分嬉しいようだ。
「……」
「どうしたの翔子ちゃん?私の胸をじっと見て……?」
「え?あ、いや何でもないよ!」
エルシャナは自分の大きな胸をチラチラと見る翔子の事を見てどうしたのかと聞くが、翔子はなんでもないとそっぽを向く。
その様子がエルシャナにとってはまるで照れ隠しをする子供のように感じ、彼女は昔のエルザとエリナの事を思い出してつい彼女の腕に抱きついてしまう。
「えいっ!」
「ひょえ!?エ、エルシャナさん……!?」
「翔子ちゃんったら可愛いんだからもう〜!」
「えぇ……うーん……。」
突然腕に抱きつかれた翔子はエルシャナの行動に動揺するも、拒むことはせずまぁ良いかと受け入れる。
そして肝心の向日葵の水着姿なのだが……。
「ねぇ〜、ひ・い・ろ!」
向日葵は本気で自分の可愛さを陽彩に理解させるべく、陽彩の腕にぎゅっと抱きつき胸部を彼の腕に押し当てる。
「ねぇ……この水着、可愛い?」
「……」
いつもより甲高い声で陽彩にそう問いかける向日葵は、これなら悩殺できるだろうと確信していた。
陽彩だって年頃の男子だ、これならきっと……そう考えていた向日葵だったが……。
「あぁ!!可愛いな!!」
「あ……うん……。」
彼の反応は向日葵が思っていたものとはかけ離れていた。
自分の色気と可愛さに取り乱しつつも、照れながらも可愛いと言ってくれる事を期待していた向日葵だったが、彼は顔色1つ変えること無く笑顔で彼女の水着を褒めた。
(いや、それはそれで嬉しくないなんて事は全く無いけど!もっと取り乱して顔を赤くしてよ!私の手のひらの上で踊らされなさいよ!お○ん○ん大きくしてよ!!!!!)
彼女は妄想を暴走させ、ついそんな事を考えてしまう。
「……じゃあ泳ぎましょう!」
「おう!」
兎にも角にもエリナの一言で一同はプールでの遊びを開始する。
だが皆が色んなプールで遊ぼう!と考えている中、向日葵は……。
「絶対悩殺してやるんだから……!(小声)」
彼女の闘志は尽きてなどおらず、次の策を張り巡らせていた。
向日葵は果たして陽彩を悩殺できるのか……!?
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