第26話「不良修正」
多々李町内の高校、桑内高校から少し離れた所にある廃工場……その日ここで不良同士の争いが巻き起こっていた。
戦っているのは桑内高校の不良グループ、米駆動模兆兆団とその隣町の詰木場町の高校、蟹針高校の不良グループ、真理凸津央會だ。
米駆動模兆兆団のリーダー、夜張兆助は先日詰木場町のハンバーガー屋でテリヤキバーガーを床に捨てる行為を行い、それを「我が町のソウルフードへの侮辱」と判断した真理凸津央會のリーダー、庵乃丞玖門は彼らへの報復を決意する。
それから5日後、多々李町の廃工場で集会を開いていた米駆動模兆兆団の懐に、真理凸津央會は総勢80人の隊員によって強襲を仕掛けたのだった。
「オラオラオラ〜ッ!!」
「真理凸津央會のお出ましだァ〜!!」
「米駆動模兆兆団は今日限りでお終いだァ!!」
「うわぁぁぁ!!なんだコイツらいきなり!!」
突然の強襲を受け困惑する米駆動模兆兆団の団員達だったが、集会を仕切っていたリーダーの夜張兆助が団員全員に指示を下す。
「怖気付くな!!数はこっちの方が多い!!全員返り討ちにしちまえ!!」
「は……はい!!」
3年生の夜張兆助はカリスマ性に優れており、自分を信頼してくれている団員達に指示を下すと彼らは即座に行動に移した。
そうして真理凸津央會と米駆動模兆兆団の戦いが始まった、のだが……。
◇
「あ……ありぇ?」
「どうした?返り討ちにするんじゃ無かったのか?」
それは夜張にとってはあっという間の出来事だった。
彼が先ほど言った通り、数では米駆動模兆兆団の方が圧倒的に有利だったハズなのだ。
真理凸津央會80人に対して米駆動模兆兆団の団員は総勢130人……真理凸津央會からすれば相手は50人も多く、不利であるかのように思われたのだが……。
(こ、こいつ〜……1人で70人はやってたんじゃねぇか!?そう思えるぐらいの暴れっぷりだったぞ!それも掛かったのはたった数分だ!化け物かよ……!)
「な、なんでいきなり俺達の事潰そうと……!!」
夜張は自分を……自分達をいとも容易く制圧した玖門にそう問いかける。
圧倒的数の差を覆す程の活躍をしたのは他でもない玖門だった。
そして玖門は夜張に対してこう答える。
「俺達の街のソウルフード、ウェルカムバーガーのテリヤキバーガーをマズいと言って床に捨てたのは……お前で合ってるな?」
「だ、だからなんだ!!自分で買った食べ物をどうしようが自分の勝手だろ__」
ドゴォッ!!
言い訳をしようとする夜張の顔面に玖門の鋭い蹴りが炸裂し、夜張は鼻を抑えて悶え苦しむ。
「ぐへぇっ〜!!」
「1つ教えておいてやるよ。」
「えぇ……?」
夜張に1つ教えてやると言って彼の髪を掴んで頭を持ち上げた玖門は、トドメの膝蹴りを夜張の腹部に叩き込む。
ドゴォッ!!
「うげぇっ!!」
「食べ物の恨みは……怖いぞ。」
膝蹴りを叩き込まれ、玖門の言葉を聞き届けた夜張は意識を失った。
「よっしゃー!!俺達の勝ちだ!!」
「やりましたね!!玖門さん!!」
夜張を倒した事で勝利を確信した真理凸津央會の面々は喜び舞い上がるが、玖門はまだやるべき事があると考えており、それを数十分程かけてやり終えてから皆で自分の街へと帰っていった。
◇
一方で、意識が覚め自分達も各々帰宅しようとした米駆動模兆兆団の団員達だったが、街の人々は彼らの顔を見て彼らに聞こえないようにヒソヒソとつぶやく。
「米駆動模兆兆団は今日で解散します……だって?」
「よく他校の生徒とトラブルを起こしていたけど、いきなりどうしたんだ……?」
「まぁトラブルがもう起こらないって事なら良いんじゃない?」
「それもそうね。」
米駆動模兆兆団の額には玖門の手によってこう書かれていた……「米駆動模兆兆団は今日で解散します」と。
真理凸津央會に完膚なきまでにやられた上に、それが額に書かれている自分達の姿を街の人々に見られた以上もう解散する他無いだろう、と決意した夜張含め団員達は翌日から勉強に勤しむ真面目な学生へと変貌した。
◇
ガチャ
「……」
「おかえりー。」
玖門は家に帰ってきてから獅亜の挨拶を聞き流し、すぐにシャワーを浴びて着替えをし、ベッドに寝転がってスマホを手に取った。
そして真理凸津央會のL○NEを確認する。
L○NEにて
たくろう
「お疲れ様です!今日は米駆動模兆兆団との戦いに参加できずすみませんでした……そっちの方はどうでしたか?」
18:03 既読
玖門
「気にするな。こっちは何も問題無かった。彼女との映画デートは楽しかったか?」
18:04 既読
たくろう
(彼女との写真)
たくろう
「楽しかったです!彼女めっちゃ喜んでました!デートに行く事を許可してくれてありがとうございます!」
18:04 既読
玖門「そういう時は遠慮なく言えよ。」
18:04 既読
玖門
(漫画のキャラクターのスタンプ)
◇
米駆動模兆兆団との戦いではなく彼女との映画デートを優先させたたくろうの方も何も問題無かったのだと確認できた玖門は、台所に向かい夕食作りを始め、十数分で食事を作り追える。
「玖門なんか良い事あった?」
「……別に。」
「あ!手の甲に絆創膏何枚も貼って……さてはケンカしたな?」
「だからどうした。」
「いやー別に?玖門の事だから何ともないと思ったけど……まぁ油断しないようにね。」
「……。」
玖門がケンカをしたのだと見抜いた獅亜は表情を一変させ、冷静な表情で玖門を諭す言葉を言う。
「なーんてね!さ、ご飯食べよ!」
「あぁ。」
「心配はしないけど、ケンカも程々にね。せっかくクリーンな不良グループ作ったんだからさ。」
「……あぁ。」
そうして2人は今日の夕食に橋をつける。
玖門の戦いはこれからも続くだろう……そう考えた獅亜は、自分がかつて所属していた高校の不良グループの変革を任せた玖門を、内心では心配してもそれを彼自身に言うつもりは無い。
自らが鍛え上げ、戦いの道を選ばせた少年に今更それを止めろと言う資格は自分には無い、というのが彼女のスタンスだからだ。
そうしてでも、彼女は現真理凸津央會……元「蟹針卍外京師団」の腐敗を改革したかったのだ。
かつての彼女の親友はそのグループの戦いに巻き込まれて悲しい思いをしてしまったのだから__
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