第24話「喰魔を喰った」
リビングで待たされる事10分間……早く料理が完成しないかと期待していた映太と、期待3割不安7割の清司、翔子、エリナら三姉妹の前についに喰魔が調理されたものが出される。
「お待たせ。喰魔のステーキだよ。」
ライアンは映太らの前に皿を置いていき、エリュシオンはフォークとナイフを6人分並べていった。
「あのー……寄生虫とか変な病原菌とかはないのですかね……?」
「調理した後に特殊な道具を使って寄生虫も病原菌もない事を確認したから問題無いよ。」
「み、見えないのにどうやって調理を……?」
「塩と味付け用のソースをかけて見えるようにしたんだ。」
翔子と清司の質問に自信を持ってライアンは答える。
それでもまだ、どう見てもステーキだが怪しさの塊でしかない出された料理を訝しんでいる2人はある事を決断する。
「よし!映太最初に食え!」
「そ、そうだよ!食べたくて食べたくて仕方ないんでしょ?」
「それもそうだな、いただきまーす。」
「「いや少しは躊躇えよ!!」」
翔子と清司の提案をすんなりと受け入れ、映太はすぐさまナイフでステーキを1口サイズに切って口に放り込むようにそれを食する。
「ど、どうですか?映太さん……?」
1口目を口にしてからしばらく咀嚼し、静かにしている映太にエリナは味はどうかと確認した。
それに対する彼の答えは……
「美味い!!!!」
「「マジか!!」」
「なら私もいただきマース!!」
喰魔のステーキへの映太の率直な感想を聞くなり驚いた様子を隠せない清司と翔子、そして2番目にステーキを口にするエルザ。
映太に続いてエルザも美味しいという感想を抱いたのなら問題なく食べられると思った一同だったが、その結果は……
「美味しいデース!!牛さんのステーキみたいデス!!」
「ま、マジか……。」
「腹を括ろう翔子……せっかくライアンさんが出してくれた料理だから……。」
「おう……やったらぁよ!」
「まるで戦いに挑む強者の形相ね翔子ちゃん。」
「なら、私も……!」
それから清司、翔子、エルシャナ、エルザも2人に続いて喰魔のステーキを食する。
そして各々予想外の感想を零してしまう。
「……ッ……悪くない。」
「お、美味しいです!ライアンさん!エリュシオンさん!」
「まるで三ツ星レストランのメニューみたいだわ。」
「……噛めば噛むほど味が口の中に広がっていくこの感じ……。」
「それは良かったよ。」
喰魔のステーキをべた褒めする一同に、ライアンは安堵の表情を浮かべる。
「にしても良いんスかね?こんな美味しいもの俺達だけで食べちゃって?」
「もちろんさ。君は今までエリナを苦しめてきた喰魔を捕まえる事ができた。この「食べる」って行為はエリナが新しい1歩を踏み出す為のものでもあるんだよ。それに協力してくれた映太くん達、そして今日までエリナを心配してくれたエルザ、エルシャナへのご褒美という訳さ。」
「なんか思ったより壮大な感じですね……。」
「明日からはハッピーだね!エリナちゃん!」
「う……うん!」
エリュシオンの言葉を聞いたエリナはいつもより少し明るい表情で頷いた。
喰魔自体がそれほど大きくなく、6人分に調理すると1人分の大きさは小さくなり、6人はすぐに喰魔のステーキを食べ終えた。
その後食事を終えた映太、清司、翔子はブラッドレイン家の人達としばらく駄弁ってから暗くなる前に自宅へと帰る事にし、最後の挨拶をブラッドレイン家の人達に済ませようとする。
「今日はありがとうございました!美味いもん食べられて満足です!」
「君達にはこれからもエリナ達の友達として、美味しいメニューを振る舞うよ!僕の日本料理を作る腕を磨くのも兼ねてね!」
「それは楽しみです。」
「良かったわね、3人とも。」
「あ、エリナちゃんちょっといいかな?」
「な、なんですか?」
その時映太はある事をふと思い出して、予てから計画していたあの話をエリナに打ち明ける。
「来週の土曜日映画館でホワイト・マジシャンシリーズのリバイバル上映があるらしいんだけどさ、俺と一緒に見にいかね?」
「え……私と映太さんで……?」
「そ。」
突然の映太からの映画デート(映太本人はデートとか思っていない)に困惑するエリナだったが、そんな彼女の背中をエルザとエルシャナがひと押しする。
「エリナちゃんホワイト・マジシャン好きって言ってましたもんネ?」
「良い機会じゃない?」
「で、でもホワイト・マジシャンって毎年夏休みとか冬休みの時期に金曜日の夜にやってるし……。」
「映画館で見る方が絶対楽しいよ!音響が凄いしポップコーンが美味いし(以下略)」
エルザとエルシャナのひと押しに加え、映太も映画館で見る映画の素晴らしさを熱演する。
それに負けたエリナは彼と映画館に行く事を決意した。
「はい。私で良ければ……。」
「私で良ければ?」
「え……?」
「むしろホワイト・マジシャンはエリナちゃんと見たいんだよ俺!」
「な……ッ!!」
((映太がナンパ師になってしまった!!))
(なんて大胆な告白……キュンとしちゃいマース!)
(エリナちゃん……私の手から旅立つ時が……いえ、私は生涯エリナちゃんの保護者だから!)
映太の大胆な発言に驚く一同。
エリナはその言葉にどう返していいか分からずもじもじとする。
「もうエリナもボーイフレンドができる年頃か……パパ嬉しいような寂しいような……。」
「ほらしゃんとしなさい。」
ライアンは娘の成長に思わず喜びと寂しさの混じった涙を流してしまい、それをエリュシオンがハンカチで拭う。
「え、映太さん……の……バカ……!」
「え、何?」
エリナは一言挟んだ後映太をぽこぽこと殴り、映太は困惑しつつもそれを甘んじて受け入れる。
「……行きます……私……映太さんと映画見に行きます……。」
「そっか……良かった!」
とりあえずその場は映太と一緒に映画を見に行く事を決めたエリナ。
エリナを悩ませる問題を解決した映太、清司、翔子は夕日を背に帰路につき……
「おい映太ぁ……随分と女慣れしちゃったなぁお前よぉ〜?」
「は?」
「映太には天性のパリピの才能があるよ。」
「マジ?サンキュー。」
「「褒めてねぇわ!!」」
そんな言い合いをしながらも自宅へと帰っていく3人。
3人ともエリナの為によく頑張った。
今夜はゆっくり休もう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます