第21話「エリナを苦しめるもの」

映太はその日学校に登校し、清司、翔子と出会うなり2人からある事を耳にする。


「映太、ホワイト・マジシャンの新作やるってよ。」


「え……マジ?初耳なんだけど。」


「今朝SNSで発表されてた。来年公開されるって。」


映太が2人から聞いた話、それは映太は映画を見ていてエリナは小説を見ている作品、ホワイト・マジシャンの最新作が公開されるという情報だった。

翔子が今朝SNSを開くとその情報

が表示され、それを映太より先に登校していた清司に話し、きっと映太に言ったら驚くだろうと2人は考えていた。


「なんか本編の前日譚的なやつらしいよ。」


「ホワマジの新作映画か〜!楽しみだな〜。」


「で、それに合わせて来週からホワマジ5作品がリバイバル上映されるんだとか。」


「マジか!見に行こうかな〜。」


3人がホワイト・マジシャンの映画について話していると、教室にブラッドレイン三姉妹が入ってくる。


「皆さん、おはようございます。」


「おうエリナちゃん。風邪はもう治ったか?」


「はい。エルザとエルシャナももう元気です。」


「イェース!」


「心配かけちゃったわね〜。」


エリナもエルザもエルシャナも、とっくに元気が回復しているようなので映太達は一安心した。

それはそうと映太は早速ホワイト・マジシャンの新作についての話をエリナに話そうとする。


「エリナちゃん、ホワイト・マジシャンの新作が発表されたの知ってる?」


「はい、テレビのニュースで見ました。原作には存在しない、物語の前日譚のお話をするんですよね?」


「そう!来年が待ち遠しいな〜。あとさ、来週から今までの映画5作品がリバイバル上映されるって!」


「そうなんですね……。」


「エリナちゃん!!俺と一緒に見に行ってくれ!!」


「どこぞの長男(初期)よりも判断が早い!!」


一切恥じらいも躊躇いも無く異性を映画鑑賞に誘う映太の様を思わずそう言い表してしまう清司。


(え、映画館に私と映太さんの2人で……そ、そ、それはまるで……デートなのでは……!?)


そんな映太に対してエリナの方は猛スピードで妄想を膨らませ、顔を赤くしてしまっている。


(え、映太のやつ……女の子を赤面させるような発言を躊躇いなく言いおって……。)


(映太には天性の女たらしの才能があるのでは……?)


翔子と清司はそう考えていたが、特別エリナがチョロいだけで普通の女の子はこうはならない……はず。


「エリナちゃんまた風邪引いたデスか?顔が赤いデース。」


「冷却シートいる?ポ○リ○エット買ってくる?」


「だ、大丈夫……!」


エリナを気遣うエルザとエルシャナに対し大丈夫だとアピールするエリナ。

エリナにとっては「映太が私をデートに誘ってるんだと思った」など堂々と言えるはずもなく……そのままエリナは自分の席についた。



そして午前中の授業が終了し、生徒達は各自弁当を食べる。

映太達とエリナ達はひとまとまりになって弁当を食べ、自身の身の回りの出来事や趣味の話などをして楽しんでいたが……エリナは映太の顔をじっと見つめる。


「……」


「な、何エリナちゃん?俺の顔に何かついてる?」


「い、いえ!何でもありません!」


ブシャーッ!!


「うぎゃーっ!!」


「大丈夫エルザちゃん!?」


その時、エルザが購買で買ったジュースのパックが内側から破裂し、中のオレンジジュースの飛沫がエルザの顔面に飛び散ってしまった。


「え!?何今の!怪奇現象!?」


「ポ、ポルターガイスト……?」


「ご!ごめんなさいエルザ!ま、また私のせいで……。」


「私のせいって……どゆこと?」


エリナの言葉に疑問を抱いた翔子はエリナに質問をし、それに対して彼女はこう答える。


「実は私……感情が乱れると周りにあるものがこうなってしまうらしいです。何でかは分かりませんが……。」


「そ、それってさ……ちょっと耳貸して。」


翔子はそう言ってエリナに耳打ちをする。


「それってエリナちゃんがソニービーン族なのと何か関係があるのかな?」


「その可能性が高いです……どういう理屈かは分かりませんが……。」


自分からも翔子に耳打ちをして話すエリナだったが、彼女自身も「感情の高ぶりによる周囲の異変」が起きる理屈は分かっていなかった。


「大変だったんだなエリナちゃん。」


「はい……そのせいでスコットランドにいた頃も周りに迷惑をかけてしまう事が何度かあって……。」


「私とエルシャナの感情がハイになってもそんな事は起きないんデスけどね……この症状があるのはエリナちゃんだけらしいデース……。」


「できるものならエリナちゃんの苦しみを私が肩代わりしたいものだわ……。」


エリナの事を生まれた時から見てきたエルザもエルシャナも、もちろん両親も彼女の苦しみを理解し寄り添ってきたが、未だ解決への糸口は掴めていないそうだ。



映太はその日家に帰ってきてから、宿題をしながらもエリナについて色々と考えていた。

そんな症状のあるエリナを映画館に連れていってもいいものなのか、万が一何かあったらどうするのか……。


「エリナちゃんの家族がずっと解決できなかった問題か……つい最近出会ったばかりの俺になんとかできるのか……?」


映太の頭に後ろ向きな考えがよぎってしまったが、その直後彼は自分の頬を思いっきりぶん殴る。


「いや!やってやる!エリナちゃんと一緒にホワイト・マジシャンのリバイバル上映を見に行く為に!」


そうして映太の戦いが始まった……エリナを苦しみから解放してあげる為の戦いが……。


「映太!?何か大きい音がしたがなんだ!?UFOでもやってきたのか!?」


「ゴキブリを新聞で潰しただけだよ親父!」



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