第13話「ママ参上」
この日はエリナが新聞局の記者から取材を受けるという予想外の事があったが、それはそれとして……。
「皆!今日はたくさん好きなもの食べていってくれよ!」
「いいんですか?ありがとうございますエリナちゃんのパパ!」
その日の夜、映太、清司、翔子ら3人はブラッドレイン家に招待され、エリナの父、ライアン・ブラッドレイン(45歳)の作る日本料理を振る舞われる事になっていた。
「私を悪漢から助けようと動いてくれた映太君とその友達だからね。遠慮しなくていいよ!」
「お寿司に、お吸い物に、おでん……これ全部ライアンさんが作ったのですか?」
「その通りデース!パパは日本料理に魅入られて、日本料理を作る特訓をしているのデス!」
清司の質問に嬉しそうに答えるエルザ。
そしてエルザは翔子の隣に位置取り、彼女のお皿に料理を盛り付けていく。
「じ、自分でやるからいいよエルシャナさん……。」
「いいのいいの。私だってパパを助けようとしてくれた映太くんとそのお友達をおもてなししたいんだから。」
それを聞いた翔子は、エルシャナの親切心を受け取っておく事にし、彼女に好きな料理を盛り付けてもらう事にした。
「それじゃあ、いただきます!」
その後皆が自分のお皿に料理を盛り付けた所で、エリナが食事を初める言葉を言って、それに続いて映太達やブラッドレイン家の人達がいただきますと復唱し食事を始める。
「……」
「特訓中とは思えないぐらい美味しいです。」
「日本料理のお店とかやってるんですか?」
「将来的にはやるつもりだよ、日本料理のお店。」
翔子の質問に対して、近い将来自分の日本料理店を開きたいという目標を答えるライアン。
「は〜い、魚の骨全部抜いてあげたわよ。」
「器用すぎるねエルシャナさん……ありがとう。」
「私はこの甘い卵焼きがオススメデース!」
「う、うん!食べてみるよ。」
エルシャナは翔子のお皿に自分の手で骨を抜いた魚の塩焼きを置き、清司はエルザに卵焼きをオススメされてそれを食べる。
一方で、映太とエリナはと言うと……
「……」
「……」
モグモグモグモグモグモグモグモグ
2人は、心から美味しいと思う食べ物は黙って食べる性分だった。
映太は美味しい物に対する賛美などは不要、こうしてその美味しさを噛み締める事こそが賛美の現れ、だと思っており、エリナは食べる時は静かにするのがマナーだと思っているからである。
「映太、美味しくないの?」
「さっきからずっと黙ってるけど。」
「……はっ!」
「はっ?」
映太は清司と翔子の言葉を聞き、周りのエリナ達やエリナの家を見る事で、自分は今彼女の家に招待されてたという事を思い出す。
「三ツ星レストランにいたと思ったんだけど……幻術なのか?」
「賛美の仕方が!」
「ありがとう映太くん!私の料理をそんなに褒めてくれるなんて!」
「褒め方のクセが強すぎマース。」
「エリナちゃんがなんとか飲み込んだ言葉を容赦なく言っちゃダメよエルザちゃん。」
その後も7人はお腹が1杯になるまで、特に映太は他の6人よりも胃の許容量が大きく、ライアンが作った料理の6割を彼1人で食べ尽くしたと言っても過言では無いだろう。
◇
「それで、○SU○AYAでゾンビ・ハリケーンって映画のDVDを借りようとしたら間違ってゾンビVSTレックスって映画を借りちゃってですね!」
「映太の持ちネタってちょっと一癖あるよね。」
「いつもの事だろ。」
食事を終えた後の7人は談笑を初め、映太は自分の好きな映画鑑賞に関する話を皆にして、話を聞いてるエリナ達はそれぞれの反応を映太に返す。
「映太さんが見る映画って、もしかして……」
「B級映画……いや、ゼッ」
「映画を作ってる人だって頑張ってるのよ。」
「映太くんの話、面白いね!」
「意外とウケてるのバグだろ。」
「その気持ち、ちょっと分かる……。」
それからも清司とエルザのサブカルチャーな話題や翔子とエルシャナの学校で起こった出来事などが展開され、その途中で映太は「気になったがこれは果たして聞いてもいいモノなのか」と疑問だった事を、ライアンに聞いてみる事にする。
「あのー、ライアンさん……聞いちゃダメなやつだったら答えなくてもいいんですけど……。」
「なんだい?映太くん。」
「……皆さんのママさんはどうしているんですかね?」
映太が気になっていた事、それは「この場に母親がいない事」だった。
1度口に出したものの、やはり聞くのはマズかったか?と感じた映太はすぐさま質問を取り消そうとするが、その時……。
「すみません、やっぱ__」
「ただいま諸君」
「?」
玄関から聞こえた女性の低い声。
誰が来たのだろう?と映太、清司、翔子の3人は思ったが、その声はエリナ、エルザ、エルシャナ、ライアンにとっては聞き馴染みのある声だった。
そして、リビングの扉を開いてその女性が入ってくる……
ガチャ……
「「「ママ!」」」
「おかえり、エリュシオン。」
エリナ達がママと、ライアンがエリュシオンと名前で呼んだ人物、彼女こそがエリナ達の母にしてライアンの妻、エリュシオン・ブラッドレインだった。
「おや、お客さんが来てるじゃないか。君たちは?」
エリュシオンはそう言いながら、ソファに座って話をしていた映太の傍に来て3人の名前とエリナ達との関係を聞こうとする。
エリュシオンは男性のライアンよりも背が高く、映太は一目見て感じた。
(この人……めっちゃ強そう!エリナちゃんがクソ強いのはきっとこの人の遺伝に違いない!)
そうは感じたものの、エリナ達の母である彼女に自己紹介しない訳にもいかないので、まず3人のうち映太から自己紹介を始める。
「俺、三条映太です!エリナちゃん達の友達やってます!よろしくお願いします!」
「ぼ、ぼ僕は中川清司、です!映太の友達の……!」
「わ、私は虎雅翔子です。映太と清司の友達の……。」
3人が緊張しながら自分に自己紹介してる、というのはエリュシオンにとっては手に取るように分かる事だった。
エリナ達と同じ紅い瞳と透き通るような金髪が特徴の彼女は、ソニービーン族だった。
「ふぅむ……この背丈と紅い瞳のせいかな……悪いね、怖がらせてしまって。自分で言うのもなんだけど、こう見えて私優しい性格なんだよ?肩の力を抜いて。」
エリュシオンは3人に緊張させまいと、笑顔で3人にそう語りかけるが、3人の緊張が解ける様子は一向になく……。
「あは、あはは、ライアンサンノリョウリ、オイシカッタデス……。」
「清司、緊張するのは分かるけどロボットみたいになるな……!」
「お、お前だって緊張してるだろ映太……!」
「うーん、困ったねぇ。ライアン、私はこの子達が帰るまで自室に篭っている事にするよ。それじゃあね。」
「あぁ。」
エリュシオンはライアンにそう言うとリビングから出ていき、彼女が去った後映太達の緊張はようやく解けた。
「っぶは〜!」
「あ、あの……ライアンさん、すみません……貴方達の大切な家族なのは分かってるんですけど……!」
「あの目は……まさに猛獣……!」
「そうか、まぁエリュシオンはいつも子供には怖がられるから仕方ないよ。」
映太達は既にエリナ達の正体を……彼女らがソニービーン族の生き残りである事を聞いている。
父親は茶髪に青い瞳、となると母親の方が……そう勘づかない程3人は鈍くはなかった。
「あの、パパ……。」
「なんだい、エリナ?」
その時、エリナはライアンに「その事」を話す決意をして彼に声をかける。
「私達がソニービーン族だって言う事、3人に話したの……。」
「……そうか……。」
そこから、映太達は彼女達の身の上話を聞く事になる。
ソニービーン族の末裔として生きる彼女らの話を……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます