第11話「秘密共有」

無事校門が閉まる前に登校できた映太ら6人。

その日は特に変わった事はなく、殆どの人にとっての日常は滞りなく進んでいき、昼休みを迎えた。

エリナはエルザ、エルシャナ、映太、清司、翔子を連れて屋上に行き、そこで昼食がてら「自分たちの秘密」を映太ら3人に話す決意をした。


「私達は……ソニービーン族の末裔なんです……。」


「な……なんだっテー!?」


「貴方がそのソニービーン族なのよエルザちゃん」


「衝撃の真実を明かすシーンではどうしてもこう言いたくなるのデース。」


何故かそのソニービーン族である自分自身がどこかで聞いた事のあるテンプレ反応をしたエルザに、エルシャナは鋭いツッコミを入れる。


「え……マジ?」


「歴史の教科書には「もうこの世界には1人もいない」って書かれてたのに……。」


「でも、チンピラ3人を女子高生が撃退するなんて、食人戦闘民族って言われてるソニービーン族でないと辻褄が合わないというか……。」


「ど、どうかこの事は私達だけの秘密って事で……」


「「「もちろんだよ!」」」


3人は三者三様の反応をするが、エリナに対して「この秘密は6人の秘密」という誓いをするに至る考えは一致していた。


「紅い瞳で綺麗な金髪でスコットランド出身って、よく考えたら伏線は撒かれてたようなものだよね……そんなオカルトじみた存在がまさか実在するなんて信じられないけど……。」


「ふふふ、凄いデショ凄いデショ!」


清司の言葉を聞いたエルザは胸を張ってドヤ顔をする。

彼女は3人の中だと自分の出生について深く考えてない方だからだ。

しかしエルシャナとエリナは……。


「私はこの血のせいで生まれてからずっと友達はいませんでした。石を投げられたりこそしませんでしたが、逆に友好的に私達に接する人もほとんどいませんでした……。「好きの反対は嫌いじゃなく無関心」と言いますが、人を喰う化け物に対しては嫌いでいるより無関心でいた方が利口なのだと……思います……。(スコットランドでの生活を思い出しただけで……何か甘いお菓子が食べたいな……)」


「エリナちゃん……(ココアシガレットを差し出す)」


エリナはエルシャナからココアシガレットを手渡され、それを1口食べなんとか平静を保とうとする。

そんな彼女の物憂げな顔を見て、映太は……。


「エリナちゃんはエリナちゃんだろ?」


「え……?」


「人喰いの化け物じゃなく、エリナちゃんはエリナちゃんなんだよ。少なくとも俺にとってはエリナちゃんはただの普通の女の子だよ。」


「ぼ……僕もエ、エルザちゃんはただのアニメと漫画と特撮が好きな女の子だと思う、けどね……。」


「エルシャナさんは思いやりのあるお姉さん、かな?」


映太、清司、翔子にとって、仲良くなったはずの女の子が実は食人戦闘民族、ソニービーン族だったというのは、受け入れ難い真実……などでは決してなく、血など関係なく友達である事に変わりない、その結論で跳ね除けられる程度の物だった。

3人の言葉を聞いたエルザとエルシャナは嬉しそうな表情を浮かべ、エリナは照れを隠すように映太にぽこぽこする。


「ん〜!」


「ちょ、エリナちゃん?」


「……ありがとう、ございます。」


「……おう!あ、ソニービーン族ってさ、人間の身体を1片も残さず食べるんだろ?」


「は、はい……。」


「じゃあさ……。」


自分の質問に対するエリナの答えを聞いた映太は、頭から白髪をむしってエリナに渡し、こう言う。


「喰える?」


「バカーっ!」


次の瞬間、映太はエリナのストレートパンチを顔面に喰らってノックアウトしてしまった。

映太の発言を聞いた清司と翔子は、映太の行いにドン引きした。


「そういや映太、最近白髪が増えてどうしようか悩んでるって言ってたけど……まさか……!」


「無いわ!きっしょ!女の子に自分の白髪喰わせるとか!きっしょ!」


「ご、ごべん……なしゃい……。」


「あわわ、ごめんなさい映太さん……!」


「映太さんは代々受け継がれてきた個性の継承者なんデスか?」


「それは違うと思うわよ〜。」



ピーッ!


「エリナちゃん、強すぎね……?」


「エルザちゃんとエルシャナさんもね……。」


午後の授業、体育館の中で行う体育で行われたバスケットボール。

この試合に参加したエリナの実力を前にしたAチーム(映太がいる)は戦慄した。

先に25点取ったチームか勝つルールのこの試合において、エリナがいるBチームの得点は全てエリナによるもので、さらにその力は防御においても遺憾無く発揮され、点差は25対0のワンサイドゲームだった。


「エリナちゃん強すぎだろ……。」


「フィジカルギフテッド……。」


エリナの実力を前にして何もできなかった生徒達は各々の感想をつぶやき、逆にエリナのチームの生徒達は彼女の事をMVPだと褒めたたえた。


「エリナちゃんスゴすぎない!?」


「将来プロになれるよ!」


「1000年に1人の逸材と言っても過言じゃない気がする。」


「そ、それほどでも……。」


ピーッ!


「あっちはどうなってるかな?」


エリナは隣のコートから聞こえた笛の音を聞いて、隣のコートで試合をしていたチームの結果を見てみる。


「さすがエルシャナ、強いデース。」


「どういたしまして〜。」


Cチームにはエルザが、Dチームにはエルシャナが配置されて行われた試合で、結果は25対23でエルシャナのいるDチームの勝利に終わった。

ソニービーン族としての潜在能力は、エルザよりエルシャナの方が高かったのが勝因である。


こうして午後の授業も終わり、帰る準備とホームルームを終えた1年A組は各々帰路につくなり部活をするなりしていたが、映太達は……。


「映太さん、清司さん、翔子さん!」


「何?」


「今夜、ブラッドレイン家に来て欲しいデス!」


「お父さんがね、悪漢から助けようとしてくれた映太ちゃんとその友達にお礼がしたいって。」


「……」


「「「いいよ!」」」


突然のブラッドレイン家へのご招待に対して3人は笑顔でそう答える。

今夜は楽しい夜になりそうだ……。


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