第10話「取材」

突然エリナ達の前に現れたのは新聞局の人達。

記者の聴取執子(26歳)はエリナがチンピラ達を1人で制圧したと言う話を聞いて、彼女への聴き取りを敢行したと言う。

このご時世情報はすぐに出回ると言うが、まさかここまでとは……と思った一同。


「まさか転校してきて早々にこんな輩に絡まれるなんテ……。」


「エルザちゃん、新聞局の人を輩呼ばわりは良くないわ。」


エルシャナはエルザに発言を訂正させ、エリナは聴き取りを受ける覚悟を決めた。

果たして大丈夫なのかと心配する映太、清司、翔子だが、執子はエリナへの聴き取りを始めようとするが……。


「ではエリナさん。まず初めに、貴方がチンピラを1人で制圧したと言う話は本当ですか?」


「その前に、保護者である私に許可を取ってください!」


「え?」


エリナにマイクを向ける執子とエリナの間に割って入ったのはエルシャナだった。

彼女には常日頃から心に据えている曲げられない信念がある。

それは……。


「保護者?貴方も制服を着てますよね__」


「私は保護者ですッ!」


「でも学生じゃ__」


「私は!エルザちゃんと!エリナちゃんの!保護者!です!」


3つ子の長女としてのプライド、それがエルシャナが信条としているものである。

両親がいない時、両親が忙しい時、2人を見守るのが自分の役目だと信じて生きてきたエルシャナ。

2人を守る為なら相手がヒグマだろうとゴリラだろうとゴ○ラだろうと立ち向かうつもりでいるのが彼女の覚悟なのだ。


「わ、分かりました。ではえっと……」


「エルシャナ・ブラッドレインです。」


「エルシャナ・ブラッドレインさん、エリナさんに取材してもよろしいでしょうか?」


「……認めましょう。」


「ありがとうございます!」


「エリナちゃんが不快に感じる質問をしたら覚悟してくださいね。」


「ヒッ……」


エルシャナは執子にエリナへの取材の許可をしつつも、度が過ぎないように予め釘を刺しておいた。

そうして改めてエリナへの取材が始まる。


「え、えっと、さっきの質問ですが……お話の通り、私が悪い人達をやっつけました。」


「ほうほう、ご友人の君達はエリナさんの事をどうお思いで?」


「えっ、俺達?」


次に執子は映太達にマイクを向け、エリナについて思っている事を質問してきた。

エリナへの取材とばかり思っていたからか突然自分達もターゲットにされて戸惑う3人組。

まずは映太がその質問への答えを話す。


「えーっと、エリナちゃんは格闘技が大好きらしくて、TDG?を嗜んでるらしくて、チンピラぐらいワンパンですよ!」


「映太、TDGじゃなくCQCじゃない?TDGは平成ウ○ト○三部作だから。」


「あ、そうだった!すんません!」


「ていうか、ぼ、僕達エリナさん達とは友達と言えば友達なんですけど、知り合ってから日は浅いんです。なのでえっと……僕と翔子は彼女達の事をあまり知らなくて……でも映太はエリナさんとちょっと家でお話したみたいで……。」


清司は映太のミスを訂正した後、自分達の事を仲の深い関係なのだと勘違いしてるのだろうか、と感じた執子に対して自分達とブラッドレイン三姉妹の関係の浅さを軽く説明した。

この中で1番人と話す時緊張するタイプなのが清司なのだが、彼はおかしな日本語にならないようにしつつなんとか執子に上手い事説明をしてみせた。


「なるほど……あのチンピラ達は日頃からカツアゲ行為を行っていたそうですが、そんな人達が未だにいるのは恐ろしいですよね〜?」


「は、はい。まぁ令和になったとは言えヤバい輩は健在ですし、エリナちゃんみたく自衛の術は持ってて損はしないんじゃない……ですかね?」


執子の質問に対して、今度は翔子がそう答え、続けてエリナは執子の隣の男性が自分達に向けてるカメラに向かってこう宣言する。


「悪い人の皆サーン!子供や自分より弱い人に手を出すような事はやめるデース!いつかヒーローに成敗されマスよ!」


「わ、若い子は元気が有り余ってて良いですね!ではエリナさん、街中でコワーイ人達に出くわしてしまった時、我々にできるとはズバリ何か!お聞かせください!」


執子はカメラマンにエルザの勇敢な宣言をしっかり撮らせた後、エリナにそう質問し、エリナは10秒ほど考えた後でこう答える。


「えっと……私は格闘術が得意なのですが、皆そうとは限りませんよね。なのでそういう時にするべき行動は、とにかく人気の多い所などに逃げる事だと思います。それと大きな声で助けを呼ぶ事も大事です。


悪い人達に絡まれる理由など、何も疚しい事が無いのなら勇気を出して助けを求めれば、きっと周りの人達は助けてくれます。私がやっつけた悪い人達は私のパ……父を攻撃していましたが、父は周りに迷惑をかける訳にはいかないと助けを求めなかったと言っていました。


だから私は父にこう言いました。「助けを求めるべきだった」と。「助けを求める」「人気の多い所に逃げる」これをすれば悪い人達に絡まれてもなんとかなると思います。」


「なるほど……!」


「執子さん。そろそろ学校に行かないと先生に怒られるので、ここらで失礼しても良いですか?」


「はい。十分ネタはいただきました。ありがとうございます!ここが私達の会社です。この私の名刺を見せれば取材料をお渡ししますので、お手数お掛けしますがよろしくお願いします!」


「はい。」


執子はそう言いながら6人に自分の名刺を渡し、それと6人への感謝の言葉を述べてその場から立ち去っていった。


「本日はありがとうございました!今回取材した内容は来週の新聞に乗せますので!」


「はーい。」


こうして6人への取材は終わり、彼らは学校へ登校した。

門が閉まるギリギリの所で6人は間に合い、先生に何があったのか聞かれたのでエリナは正直に亜申斗新聞に取材されてたと説明した。


後日亜申斗新聞本社に取材料を貰いに行った6人は、社長の筆八印九(ふでやいんく)(57歳)から取材料を貰い、その足でカラオケに行って思いっきりはっちゃけたのであった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る