第3話「共通趣味」

時刻は12時を過ぎた。

エリナ、エルザ、エルシャナは映太、清司、翔子の3人と教室でひとまとまりになり弁当を食べている。

そんな中、翔子は明らかにトマトが多く入っている三姉妹の弁当に目を引かれた。


「エルシャナさんの弁当トマト多くない?」


「私達にとってはこれぐらいが普通よ?」


「マジか。ベジタリアン……?」


「なんと言うか……言うなればトマト限定のベジタリアン、かしら?」


翔子はトマトが嫌いなので、それを弁当に沢山入れる三姉妹が理解できなかった。

その直後、エルザがポケットからスマホを取り出して清司にあるものを見せる。


「ジャーン!清司クン!進○の○人のエ○ンのストラップデース!昨日この街の○オンに行ったらこガチャポンがあったので1回回したら、推しが出まシター!」


エルザはそう説明しながらエ○ンのストラップを嬉しそうに清司に自慢する。


「それ確か昨日発売だったんだよね?僕も放課後回しに行こうかな。」


「あとお菓子売り場に仮○ラ○ダー○ッチャー○の装〇も売ってましたヨ?」


「あ、それも昨日発売だったっけ……ファイヤー○ッチャード欲しいんだよな。」


楽しそうに話をする翔子、エルシャナペアと清司、エルザペア。

それに対して、2人取り残された映太とエリナは全く円滑ではない様子だ。

映太はエリナとどう接すればいいのか分からず、2組に声をかける。


「な、なんか翔子とエルシャナさん、清司とエルザちゃんめっちゃ仲良くなってね?」


「そうか?さっき仲良くなったばかりなんだけど……。」


「友情において大事なのは時間じゃなく深さよ。ね?翔子ちゃん。」


「え?まぁ、そうかもね……。」


翔子はエルシャナの言葉にそう返し、エルザは清司の肩に手を置いてドヤ顔をしながら映太にこう言う。


「私達はオタク同盟デース!ね?師匠!」


「あ、う、うん!まぁ師匠というか、僕は好きな物が多すぎるから広く浅くやっているつもりで色々詳しいかと聞かれたらそれほどでもないというか……。」


「師匠早口になってて面白いデース。」


清司が早口になってしまう癖はいつもの事であるが、それはそうとエルシャナは黙々と食事をするエリナに声をかける。


「エリナちゃんも映太君と仲良くなりたいんじゃないの?」


「わ、私は別に……。」


「えっ……?」


エリナの言葉を聞いた映太は、「俺はこの子と仲良くなれないかもしれない」という可能性が顕になったな、と感じショックを受けてしまう。


「映太も何かエリナさんに話しかけてみたら?話題によってはエリナさんと仲良くなれるかもよ。」


「そ、そうだな!」


映太は清司から、エリナに何かしら話しかけて話題を作ればいいのではないかという胸の事を言われ、映太は意を決してエリナに話しかけようとしたが……。


「じゃあエリナちゃん!好きな映画とか__」


「今は食事中です。」


「……。」


映太は玉砕した。

エリナは食事中におしゃべりをすることをマナーが悪いと思っており、映太の話を冷たくあしらった。

これには陽キャの映太も流石にショックを受けてしまう……。


「ごめんね映太君。この子不器用で……。」


「そっかー、不器用なのか……。」


「不器用ではありません!!不器用では!!決して!!」


だが、エルシャナの言葉に反応して食事を飲み込み勢いよくそう反論するエリナ。

その直後彼女はハッとし、静かに席に座った。



昼休み……。


「翔子ちゃん、図書室ってどこかしら?」


「私が案内してあげる。」


「ありがとう。優しいのね、関心関心。」


「それほどでもないと思うけど……。」


翔子はエルシャナに図書室を案内する為に教室を出て、清司とエルザはオタクなトークに花を咲かせていた。


「先週の名○偵○ナン、過去回だったけど僕小さい頃に見た事あるんだよね……今見ても面白かったな〜。」


「赤○さんって結構前からいるキャラなんデスね!私は○ナン見始めたの数年前からなので。○ナンは原作者が○ン○ムに感銘を受けたという話は知ってマース!」


「アニメには○ン○ムの声優が沢山出てるからね。」


そんな2人を横目に、エリナは自分の席で本を精読している。

映太は校庭でサッカーを楽しんでいる。

そんな中映太はポケットの中にスマホを入れっぱなしにしていた事を思い出し、うっかり破損させない為に教室に戻り自分のバッグの中にスマホを入れてくる事にした。


ガラッ


映太は教室の扉を開いて自分のバッグが置いてある棚に向かい、バッグにスマホを入れて再び校庭に戻ろうとした時、本を読むエリナの姿が目に移り、その姿を見るなり彼女の元に駆け寄った。


「エリナちゃん、その本……!」


「え……?」


映太はエリナが読んでいた本のタイトルに聞き覚えがあったのだ。

その本は映画化されており、映太はその映画五部作を全て見ていたからである。


「それってさ、ホワイト・マジシャンシリーズじゃね?」


「知ってるんですか?」


「もちろん!映画見た事あるしな!」


「映画……?原作は?」


「あー、原作は知らないな。」


エリナは映太の言葉を聞くと、本に栞を挟んで閉じた後映太にこう言う。


「ホワイト・マジシャンの映画は原作から改変されてる所やカットされたシーンがたくさんあるんですよ。まさか映画だけ見てホワイト・マジシャンの全てを知った気になってるのですか?」


「マジ?改変されてる所があったんだ!気になるな〜。」


エリナは映太に対して強気に出たものの、映太は「俺がホワイト・マジシャンにわかだったなんて〜!悔しい!」となるどころか、逆に一体どう改変されたのか気になる態度をエリナに示した。


「……じ、じゃあこの本貸します。」


「え、いいの?」


「貴方がホワイト・マジシャンにわかのままでいるのが気に食わないのです!」


「そっか!サンキュー!」


そうして映太はエリナから、「ホワイト・マジシャンの赤い秘石(前編)」を借りた。

映太にとっては、ホワイト・マジシャンというエリナとの繋がりができた事がちょっと嬉しいなと感じていた。


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