第2話「友達」

「エリナちゃん!!私と友達になってくれない!?」


「私も私も!!」


「エルザちゃん!!LINE交換しね?」


「エルシャナちゃんさっき自分の事「エリナちゃんとエルザちゃんの保護者」って言ってたよね?それについての説明を!!」


「え、えっと……。」


突然のスコットランドからの留学生、しかも3つ子の姉妹と言うのだから生徒達は自らの好奇心を抑えられるはずが無かった。

彼女らと友達になりたいと希望する生徒達によって質問攻めをされる3人。


「お前エルザちゃんに声かけてこいよ!」


「嫌だよ恥ずかしい!お前がいけよ!」


クラスの端の方では男子生徒同士でそんなやり取りがされており、それを見たエルザはそちらに目をやって彼らに呼びかける。


「貴方達も私と話したいんデスかー?」


「は、はい!!」


そうしてその男子生徒も皆の輪の中に入り、三姉妹は生徒達の様々な質問に1つずつ返していく。


「エリナちゃんはどんな男の子がタイプなの?」


「え、えっと……優しい人、ですかね……。」


「今までにそういう経験をした事は!?」


「あ、ありません……。」


エリナに対しては主に色恋関係の質問がされ、彼女は特にそういう質問に嫌悪感を抱くこと無く淡々と答えていった。


「エルザちゃんが好きな日本食は?」


「お茶漬けデース!!」


「そう来たかー!」


エルザは主に好きな日本の食べ物や日本の歌手、文化などについての質問をされ、元気よく自分の好きな物を答える。


「私は昔から世話焼きな性格でね〜、エリナちゃんとエルザちゃんのまとめ役?みたいなのを昔からしているわ。」


「立派だね〜。」


「外見からお姉さんオーラが溢れてるからね〜。」


エルシャナは生徒達の質問に答えた後、逆に自分から気になっていた事を生徒達に質問した。


「あの〜、このクラスの中で漢字が得意な人はいないでしょうか?」


「漢字?それなら翔子さんかな。クラスの中で1番頭いいみたいだし。」


エルシャナは漢字が不得意らしく、自分に漢字を教えてくれる人を欲していたのだ。

そんな彼女に質問をされた女子生徒はクラス一の成績と言われている翔子を案内した。

それを聞いていた翔子は名前を呼ばれてはっとしたような態度を取る。


「えっ、私?」


「翔子さんクラスで1番勉強の成績いいもんね。」


「本当ですか?」


エルシャナに本当なのかと聞かれ、翔子は首を縦に振る。


「ま、まぁ一応……。」


「じゃあ、迷惑でなければ私に漢字を教えてくれませんか?日本に来る前にスコットランドで一通り漢字の練習をしてたんですが、どうも難しくて……。」


「いいですよ。私で良ければ……。」


そうして翔子はエルシャナに漢字を教える事になった。

翔子もエルシャナも高校1年生にしては顔立ちが整っておりスタイルも良い。

そんな2人が一緒に勉強している所を見られるなんて……女子生徒達はそんな妄想を膨らませていた。


「この2人が並んでるの、名画だろ。」


「翔子さんもお姉さん系だもんね。」


「参上君と中川君のまとめ役してるし。」


「翔子はお姉さん系と言うよりアネゴ系だろ。」


女子生徒の言葉に口を挟んだ映太は翔子から鉄拳制裁を受け、クラスに鈍い音が響き渡り、それを聞いた男子生徒達は戦慄した。


「今度アネゴ系とか言ったら殺す。」


「すいやせんっした……。」


一方エルザの方は、彼女自身が言い出したある話によって話題がそっち方面に舵が切られた。


「あの!私日本のヒーロー!アニメとマンガが好きデス!そういうの詳しい人はいませんカ?」


「それなら清司じゃね?」


「なぁ清司!」


エルザの質問を聞いた男子生徒は清司に声をかけ、留学生なんて自分には関係ない、遠い世界の話だと思ってた清司は驚いて大きな声を出してしまう。


「あいぃ!?ななな何!?」


「お前仮〇ラ○ダーとかアニメとか色々詳しいだろ?エルザちゃんがそう言うの興味あるんだとよ。」


「ぼ、僕が?まぁ、うん、詳しくなくはないけど……。」


「本当デスか!?」


エルザは清司の言葉を聞いて驚いた表情を浮かべ、勢いよく席を立って清司の元に駆け寄る。


「え、な、え、エルザ……さん!?」


「清司クン!!私と!!ヒーローと!!アニメと!!マンガを!!語り合う友達になってくだサイ!!あと!!私の知らないヒーローとアニメとマンガの事を!!教えてくだサイ!!」


突然女の子に急接近されて焦る清司に対して、エルザはお構い無しに怒涛の勢いでそう話す。

それに対して清司はどう答えるべきかと悩み、上手く答えを言えずにいた。


「あ、えっと、その……あれ、あれです、そう、あれ……うん……」


「めっちゃ焦ってる。童貞かよ。」


「高校生に限っては童貞じゃない方が稀だと思う。」


そんな彼を見て童貞かよとツッコむ男子生徒。

オタクに女子との円滑なコミュニケーションスキルを求めるのは酷な話だが、清司は勇気を出してエルザのお願いにこう答えた。


「ぼっ……!僕で良ければ……よろしくお願いしますっ……!」


「ハイ!こちらこそよろしくお願いしマース!!」


これで清司とエルザは晴れてサブカルチャー仲間になった。


「じゃあ早速!これをしまショウ!」


エルザはそう言うと、自分の席に戻ってバッグの中からあるものを取り出した。

それは、爆○戦○○ン○ンジャーの塗り絵である。

彼女はこれを学校に行く前に立ち寄ったコンビニで買ってきたのだ。


「塗り絵……?」


「ヒーロー師匠である貴方がこれをやってください!師匠ウデマエを見てみたいのデス!」


「い、いつの間に師匠になったんだ……まぁいいけど。」


エルザは清司の承諾を聞くなり、クラス中にこう呼びかける。


「皆サン!清司師匠が今から超絶テクニックによって塗り絵を初めマース!さぁ寄ってらっシャイ見てらっシャイ!」


「ちょ!?何言い出すの!?」


「皆に清司クンの神がかったテクニックの塗り絵を見て欲しいデース。」


「ええー……。 」


「清司!俺は見るぞ!お前の迫真の塗り絵を!!」


「映太は黙ってて!」


その後このクラスは、学校の教室の中ではあまり大きな声は出さないようにしましょう、と教師に怒られた。

まぁ、留学生が来てた事で盛り上がってたんだろう、と言う事で今回だけは大目に見られたが。

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