かつて卑下して好きな少女を追い求めていた俺、ある日突然目覚めてその少女の追求を諦めることにしたら、結果的にその少女が逆に自分を追い始めたのはどういうことだろう？

第22話 あなたたちは一体どういう関係なのですか？

宿舎に戻った後、今日の収穫を点検した。

まずは歌唱スキル。元々の俺の歌唱スキルは37で、システムからはせいぜい「いい声」と評価されていたが、今は45に向上している。

45の評価は「ほとんどのポピュラー音楽を正常に演じることができる」だ。

「なんだか評価が下がったような気がする。」

そう思いながら宿舎に戻った。ドアを開けると、九条勝人を除く全員が俺を取り囲んだ。

先頭に立っているのは藤堂川平で、彼のやや太めの体がまるで像のようだった。

「秋！正直に言え、こんな遅くまでどこにいたんだ？まさか…泷上さんと…泷上さんと…あんなところに行ったのか？」

「どんなところだよ？何を言ってるんだ？」

彼らがなぜそんなに慌てているのか、俺には完全に理解できる。

帰り道、クラスのLINEグループでのメッセージをチェックした。

発端は泷上怜奈とそこそこ仲のいい女子が、「誰か怜奈を見かけた？彼女、午後からずっと寮に戻ってないんだけど」と投稿したことだった。

このLINEグループは普段から活発で、クラスの中で泷上怜奈だけがこのグループに加わっていないため、彼女について話すときには何の心理的圧力も感じない。

男子たちは、泷上さんが「ミステリアスな彼氏」に会いに行ったのではないかと推測している。

今ではクラスの男子たちが一致団結している。泷上さんを追う者は許されない、彼女はクラスの唯一の宝物だからだ。

普段から彼女を見るだけで十分で、誰かが独占しようものなら、クラス全体からの反撃に遭うだろう！

しかし、泷上さんが一日中寮に戻らなかったこと、そして彼女に「ミステリアスな彼氏」がいるという噂を考え合わせると、皆、彼女が彼氏とデートに行ったのではないかと推測していた。

情報収集は速かった。俺と泷上さんが図書館で一緒に過ごした一日の情報は、まるで爆弾のようにグループ内で爆発した。

だから今、藤堂川平はクラス全体を代表して、俺と泷上さんの関係が一体何なのかを問い詰めている。

「みんなもう知ってる！今日、お前と泷上さんは図書館で一緒に過ごした。」

「聞いたことがあるが、泷上さんはお前と一緒にいるために午後の授業をすべてキャンセルしたそうだ！」

「お前、こんなに遅くまで帰ってこなかったし、もしかして図書館を出た後に…行ったんじゃないのか？」

藤堂川平は明らかに焦っていた。

これがクラスのほとんどの生徒がLINEグループでの反応だ。実際、彼らのほとんどが泷上さんに密かに恋をしていた。

「そうだよ、そう…俺は泷上さんの情熱的な眼差しの下で、一日中眠ってたんだ。」この一言で藤堂川平はその場で固まった。

実際、嘘は言っていない。

泷上怜奈の注目の下でしばらく眠ったことは確かだけど、それは図書館でのことだ。

俺が抱えていたのはただの机で、泷上さんではなかった。

心筋梗塞になりそうなほど心を痛めている藤堂川平を気にせずに、そのまま九条勝人の隣に直行した。

九条勝人はギターを軽く弾いていた。

宿舍に戻るときに時々、彼がその木製のギターをいじっているのを見かける。

九条勝人の音楽の才能もそこそこで、見た目も良いからデビューするのも難しくないだろう？

「学園祭でステージに立つ予定なの？」と彼の前で尋ねた。

「そのつもりだけど、演奏するためじゃなくて、ある人に気付いてもらうためなんだ。」と九条勝人はギターを弾く手を止めて言った。

「その人って、親？」と俺は彼の家庭環境を思い出して尋ねた。

「いや、親じゃない。来ることはない。正確に言うと…敵だな。」と九条勝人は普段の陽気な表情から一変して、少し恐ろしい表情を見せた。

しかし、その表情も長くは続かず、俺に向き直って、「秋、一緒にステージに上がらないか？お前の歌、結構いいと思うから、その時はお前が歌って、俺が伴奏を担当するってどうだ？」と提案した。

そんな提案を受けるとは思わなかったが、友人の提案だし断る理由もない。

「それはいいね。でも、あまり期待しないでくれよ。」と答えた。

「お前なら俺よりマシだ。そういえば、正装（せいそう）の用意はできてる？」と九条勝人はもっと真剣な話を持ち出した。

この学院の学園祭では正装、つまりスーツを着る必要がある。

「ないな。金は全部田舎に送ったから、新しいスーツを買うどころか、レンタルする金もない。」

俺は実はまだ16,000円の貯金があって、その金額は徐々に増えていた。

泷上怜奈が自分に何に惹かれたのかまだ分からない。

宿舍に戻ると、システムが俺に1円、2円、3円という奨励金を絶えず与えていた。

これは泷上さんが宿舍に戻った後もずっと俺のことを考えていたってことだろう。

ただ俺を考えるだけでなく、変なことを想像して、その後、ゆっくりと好感度が上がっていった。

ただ図書館で一眠りしただけで、こんなに気にされるとは…少女よ…

不断に現れる報酬のプロンプトを見ていると、どこか不安になった。

「秋、学園祭の正装は俺が何とかするよ。」藤堂川平が突然精神を取り戻した。

「明日、一緒に俺の家の店に行こう。好きなの選べるからな！」と言った。

それは藤堂川平が少し自慢できる瞬間だった。彼の両親は服の貿易をしている。

非常に裕福というわけではないが、少なくとも俺のために一着の正装をオーダーメイドするくらいは楽勝だ。

「明日は時間がないから、適当に選んでくれ。」と言った。

「明日は休みなのに時間がないって…まさか…まさか？」

「まさかはやめてくれ。明日は泷上さんと映画を見に行くんだ。夜は帰ってこないかもしれないし、正装のことはお前に任せたよ！」と俺は藤堂川平の肩を叩いた。

すると、彼は再び自分の胸を押さえて、白泡を吹いて完全に気を失った。