かつて卑下して好きな少女を追い求めていた俺、ある日突然目覚めてその少女の追求を諦めることにしたら、結果的にその少女が逆に自分を追い始めたのはどういうことだろう？

第16話 ゲームをしよう

泷上怜奈（たきがみれいな）は俺と星野未来の間のトラブルには全く気づいていなかった。

彼女は黙って俺の向かいに座った。

座るなり、彼女はその少し重たいノートを俺の前に押し出した。

その瞬間、俺は恋愛を話しに来たのではなく、試験を受けに来たような気がした。泷上怜奈はその試験官だ。

もし泷上怜奈を喜ばせる何か言えなければ、彼女は自らにゼロ点をつけるだろう。

合格点が取れればいいが。

俺は彼女が差し出したノートをめくり始めた。

意外なことに…昨日、彼女は本当に真剣に俺が書いた記録の内容を分析していた。

そして、俺の書いた内容の隣に自分のコメントを加えていた。

「恋愛によって生じる抑うつ感情がインスピレーションを爆発させる」「もしかして恋愛を体験してみる？」といった注釈があった。

彼女は俺のインスピレーションの源を真剣に研究していたようだ。

もちろん、これは俺に興味があるわけではなく、「星夜」のような作品を描くための考察だ。

しかし、泷上怜奈がこんなにオープンに自分のノートを俺の前に出すということは、

俺が彼女の「恋愛体験の候補」に入っていないことを意味している。

これは絶対にいいことだ！

俺は泷上怜奈というこのダイヤモンド鉱山を掘り始めるべきだと感じている。

ええ、ダイヤモンド鉱山だ。

星野未来を金に例えるなら、泷上怜奈はダイヤモンドだ。

これは「Minecraft」というゲームで使われるアイテムの希少性で例えたものだ。

そのゲームでは、ダイヤモンドは金よりもずっと貴重なもので、

採掘の難易度も金よりずっと高い。

これに気づいた俺は、チャンスを逃すわけにはいかないと悟った。

この機会を逃したら、泷上怜奈のこのダイヤモンド鉱山を再び採掘するのは非常に困難になるだろう。

だから今日は、採掘方法、つまり泷上怜奈を喜ばせる方法を見つけなければならない…「中国古詩（ちゅうごくこし）愛好会に入ったって聞いたけど、俺も興味があるんだ。一緒に話し合ってくれないか？」

その言葉を書き終えてノートを彼女に再び渡した。

泷上怜奈がその言葉を読んだとき、彼女の顔には確かに困惑の表情が浮かんだ。

彼女はきっと「今日は『星夜』のインスピレーションの話をしに来たんじゃなかったの？」と思っているに違いない。

泷上怜奈の顔の困惑はすぐに疑念に変わった。

彼女がノートを再び俺に返すとき、俺も彼女の疑いの理由を察した。

「中国古詩に興味はあるけど、これは絵画やバスケットボール、歌うことのように、好きになれば試せる簡単な趣味ではないんだ。」

泷上怜奈がこの言葉を書いたとき、彼女の心の中の深い疑念を感じ取ることができた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

確かに、中国語（ちゅうごくご）は英語（えいご）よりも難しい言語だ。

ましてや、中国人（ちゅうごくじん）自身でさえ理解が難しい中国古詩（ちゅうごくこし）に至っては。

おそらく日本全国を見渡しても、中国古詩（ちゅうごくこし）を得意と言える人はそう多くないだろう。

だからこそ、俺は泷上怜奈が現代の女学生の中でまさに異端中の異端であると感じている。

泷上怜奈…彼女は俺が彼女に好意を示していると思い、だから「中国古詩（ちゅうごくこし）に興味がある」と嘘をついたと感じている。

これ以上の言い訳は無駄だと悟り、勇気を出して泷上怜奈のノートの他の部分をめくってみた。

やはり彼女のノートには、泷上怜奈自身が書いた中国古詩がいくつか見つかった。

泷上怜奈は…彼女の日記のようなノートを俺が閲覧することを気にしないようだ。

だから彼女が見ている前で、ペンを取り、彼女が書いた中国古詩（ちゅうごくこし）の横に一行の注釈を加えた。

この行の注釈で、彼女が書いた中国古詩を日本語でとてもわかりやすく翻訳した。

この注釈を書き終えた後、手元のノートを再び泷上怜奈に返した。

泷上怜奈が俺が書いた注釈を読んだ後、その疑いの眼差しがすぐに驚きに変わった。

システムの報酬プロンプトが耳元で絶え間なく鳴り響く。

「2000円の報酬を受け取りました」

「あなたの歌唱スキルが+1されました」

これは泷上怜奈が今、とても嬉しく感じていることを意味する。正確に言うと、彼女は一種の達成感を感じている。

この感覚は、地球上で孤独に生きる宇宙人が今日、同種を発見したような感じだ。

「本当に中国古詩（ちゅうごくこし）が読めるのか？」

彼女がノートを俺に押し出すとき、口元にはかすかな笑みが浮かんでいた。

そのとき初めて、この雪女が笑うと本当に美しいことに気づいた。

システムも泷上怜奈の笑顔を報酬として俺の口に詰め込んだ。

「あなたの歌唱スキルが+2されました」

さすがダイヤモンド鉱！報酬は豊富だ。

もちろん、このチャンスを逃すつもりはないので、すぐにノートにもう一行を書き下ろした。

「俺は中国古詩を読むだけじゃないよ！泷上さん、一緒にゲームをしないか？」

「ゲームの内容は、お前が一つの字や語句を書き下ろすだけで、俺がその書かれた文字や語句に基づいて一句の中国古詩を書き出すんだ。」

泷上怜奈が俺が書いたその言葉を読むとき、彼女の目には「渇望（かつぼう）」という感情がはっきりと見えた。

どうやら泷上怜奈がこのゲームを受け入れたら、

今日の昼、俺と泷上怜奈はランチを食べる時間がなくなるだろう！