魚のブローチ

 偶然入った雑貨店で見つけたのは小さな魚のブローチだった。銀色の川魚が数匹、円を描くように泳いでいる。

「その川魚は清らかな水の中でしか生きる事が出来ません。最近はそれを着用出来る者がめっきり減りましてね」

 それじゃあ触る訳にはいかないな、思っていると店主は静かに微笑んで、

「お優しい方だ。だから、この子達に呼ばれたのですね」

 しきりに勧められてブローチを手に取る。触れた瞬間、確かに水の跳ねる音が聞こえた。

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