雨魚

 しとしとと雨が降る。こういう水気の多い日は街に雨魚がやって来る。青く透明な魚達が雨粒に乗って街中を泳ぎ回るその光景は街のちょっとした名物だ。傘を差す人はいない。差していると魚達が一斉に潜り込んで来てずぶ濡れになるからだ。それが嫌ならレインコートを着るか、さもなくば迂回して街を通らない方がいいのだけれど。

「ああもう!」

 時間がない。仕方がないか。雨よ上がれと願いながら、私は魚の様に水の中を駆けて行く。

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