閑話④ ライムスと不思議な猫ちゃん②(ライムス視点)
『ねぇねぇ猫ちゃん。これからどこにいくの? お散歩とは言っても、公園とか川とかいろいろとあるじゃない?』
ぼくと猫ちゃんは、しばらくは街路樹の立ち並ぶ道路脇を歩いていたよ。
猫ちゃんはにゃ~にゃ~とお歌を歌いながら、ぼくの隣で気持ち良さそうにしている。
でも本当にただ歩いているだけで、どこに向かっているかも分からない。だからぼくは行き先を聞いてみたよ。
すると猫ちゃんは、驚きの言葉を口にした。
『ふふ、聞いて驚け。私たちがこれから向かう場所は――ダンジョンだ!』
『ふ~ん。ダンジョンかぁ。……って、え? ええええええ!? ダ、ダンジョン!??』
ダンジョンっていうのは、簡単に言うと異世界みたいなものだね。
でも、ダンジョンに行くためにはホールを潜らなきゃダメで、ホールの周辺にはたくさんの監視の人がいるよね?
『ねぇねぇ。ダンジョンなんて、どうやって入るのさ?』
『お前、ダンジョンへの入口は一つしかないって思ってるだろ』
『え、違うの?』
『見えてる世界の違いと言えばそれまでだがな』
見えてる世界の違い?
うーん、なんだか難しいね。
『つまり、どういうこと?』
『簡単に言うと、我々にしか認識できない世界がある。ここでいう我々というのは、人間以外の動物のことだ。犬、猫、鳥、山羊、牛、羊……。こういった動物には、人間やモンスターには見えない世界が見えている』
猫ちゃんは一呼吸置いて、説明を続けた。
『この街には、ダンジョンへと続くルートがいくつか存在している。……ある条件を満たしながらそのルートを辿るとあら不思議。気付いた時にはダンジョンの中というわけだ。――たまに、本当にたまにだが、人間の子供がこの手順を満たしてしまうことがあってな。それを俗に”神隠し”と呼んだりもするが』
へぇ~~。
神隠しってそういう原理だったんだね。
『まぁ、神隠しなんてそう簡単に起こりはしないさ。私が観測した限り、ここ50年で神隠しが起きたのはたったの一度だけだ……。さてと。説明はほどほどにして、そろそろお散歩を再開しようじゃないか』
『うん、分かったよ。いろいろと教えてくれてありがとうね、猫ちゃん!』
『……ノアールだ』
『え?』
『私の名前。猫ちゃんではなく、ノアールと呼んでくれ』
『ノアール……。ふふっ、ノアール、ノアールちゃん! とっても素敵でいい名前だね。ぼくの名前はライムスだよ。これからよろしくね、ノアールちゃん!』
『ああ。散歩友達として是非よろしく頼むよ、ライムス』
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