第42話 家族の時間
「天海さんっ、いつご連絡いただけるかと首を長くしてお待ちしてましたよッ!!」
「わわっ! 田部さん、すごい迫力ですね!?」
電話を掛けるなりいきなり大声が飛んできてビックリしちゃったよ。
でも、それだけ待ち侘びてたってことだもんね。
なんだか嬉しいような申し訳ないような……。
「そりゃそうなりますよ天海さん! もしかしたら、このまま連絡もらえないんじゃないかって思ってたんですから。昨日の夕方辺りから胃がキリキリして大変でしたよっ!」
「うぅ、それは……ゴメンナサイ」
「あはは、今のは軽いジョークですよ。そ、それで、肝心のお返事は……?」
「はい。その件なんですが、ぜひ受けさせていただこうと思います」
「お、おおお、おおおおおおおっ!? や、やったーーーー!! ありがとうございますありがとうございます、その言葉を聞けて安心しましたよ!!」
えへへ、なんだかムズムズしちゃうね。
でも、喜んでもらえて良かったよ。
「それで天海さん、次はいつお会いできますでしょうか?」
「そうですね、明日にでもお話しできればと思っていますが、どうでしょうか?」
「おっ、動きが早くて助かりますよ。では明日、前回と同じ喫茶店で落ち合いましょう。時間は何時くらいにします?」
「ん~、それじゃ15時で」
「15時、了解しました。では明日、お会いできるのを楽しみにしていますっ!」
ツー……ツー……ツー……。
「あ、切れちゃった」
田部さん、なんかすごい激動の人だね……。
#
電話を終えて居間に戻ると。
『ぷにゅぅ~~っ』
ライムスが、お父さんとお母さんの手によって揉みくちゃにされていた。
「いやあ、久しぶりにぷにぷにしたけど、やっぱりライムスはかわいいなぁ。こんなに気持ち良さそうにトロけてくれて、こっちまでフニャフニャになりそうだ」
「ふふふ、相変わらずのプニプニ具合ね。癒されちゃうわぁ」
『ふにゅう、ふに、ぷゆー』
「ふふ、気持ち良さそうだねぇライムス。どれ、私もぷにぷにしてあげよっか」
『ぴきゅっ、きゅー』
「こうやって三人でライムスをぷにぷにしてると昔を思い出すわねぇ。たしかあれは最中が小学2年の時だったかしら? すごい傷だらけで帰って来た日があったじゃない?」
「おー、あったあった、懐かしいな。たしか年上の男の子と喧嘩したんだったか」
「え、そんなことあったっけ?」
うーん、小学2年生のときでしょ?
傷だらけになるくらいの喧嘩なら覚えてそうだけどなぁ。
「もう10年以上も前のことだからなぁ。忘れてても無理は無いだろうけど、あの時は驚いたよ。お父さん、話聞いて大急ぎで帰ってきたんだぞ? 思えばあのときが初めてだったな、仕事を家に持ち込んだの」
「イジメられてる女の子を助けようとして、それで喧嘩したのよね。理由を聞いたときはいかにも最中らしい理由だなって思ったけど」
「うう、ダメだ。全然思い出せないや」
ここまで聞いて思い出せないなら、完全に忘れちゃってるんだろうなぁ。
「それで? その後はどうなったの?」
「その後は今みたいな感じだぞ。お父さんが帰ってきたらモナちゃん泣きそうになっちゃったからな。だからこうやってみんなでぷにぷにして、変顔させたりしてな」
「そしたら最中、嬉しそうに笑うものだから、私たちも嬉しくなっちゃってね。ねー、ライムス?」
『ぷゆぅ~、ぷにぃ、くゅ~~』
「あはは、そりゃこんなライムスの姿見たら笑っちゃうだろうなぁ。も~、ライムスったらホントに可愛いんだから。えいっ、もっとぷにぷにしてやる、くらえ~~」
『ぷにぃ~~~っ』
あー、なんか一気に気分が楽になったなぁ。
やっぱり家族って良いね。
他愛のない話して、のんびりして、ライムスをぷにぷにして。
どこにでもあるような平凡な日常の1ページかもしれないけどさ、私はこういう小さな幸せを大事にしたいなって思うよ。
Dtuberって仕事はいろいろと大変そうだけど、この日常を守るためにも、全力で頑張らなきゃだねっ!
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