第36話 3つの連絡

#


「お、さっそくモンスターのお出ましだね! いくよライムス、あいつをやっつけるよっ!」

『ぴきーーっ!!』


 砂地を掛けながらこちらへ向かってきたのはウサギのモンスター。


 モフモフしてて可愛らしいけど、このFランクモンスターはキック・ラビットといって、その名の通り強力な蹴り技を繰り出してくるよ。


 可愛い見た目とランクに騙されて油断したら痛い目をみるから、気を付けなきゃね。



 ――――――――――――――――――――

 だーやま

 <キック・ラビットかわええ~w


 上ちゃん

 <ライムスきゅんには負けるw


 tomo.77

 <それな。ライムス最強!!


 村人B

 <モナカさんも可愛いです!


 ノブ

 <見た目に騙されんようにな~


 ゆーゆ

 <ライムスかわええ~


 ジョン

 <ライムスもモナカちゃんも頑張れ!


 ライムス推し

 ¥1500

 【ライムスしか勝たん】

 ――――――――――――――――――――



「わぁっ、1500円も!? ライムス推しさんスパチャありがとねっ。名前もサイコーじゃんか! よーし、応援に応えられるように頑張るぞ! くらえっ!!」


 ザンッ!!


『ププッ!』

「んにゃっ、避けられた!? ええい、もう一発!」


 私は体勢を立て直して、もう一撃剣を振った。

 でも剣を振るのに慣れてないのと、キック・ラビットの機敏な動きとが相まって。なかなか攻撃が当たってくれない。


「ううっ、慣れるまで時間がかかりそうだね、これは――わわっ!」


 二発目を外したタイミングで、キック・ラビットが自慢のキック攻撃を繰り出してきたよ。


 なんとか避けられたけど、直撃したら痛そうだよ。それにキック・ラビットは噛みつきも強いんだ。


 うう、これは苦戦を強いられそうだよ。

 キック・ラビット――強敵だね!


「でも、私の武器はパラライズ・ソード。一撃でも当てればマヒにできるかもしれなから、それを狙って頑張ってみるよ!」



――――――――――――――――――――

tomo.77

<初心者が一番最初に躓くのがキック・ラビットなんだよね。小柄で早くてキックも噛みつきも強いから。あんまり無理はしないほうがいいかもね


らんまる

<でも最中さんもキック・ラビットの速さに対応できてて良い感じです!


ミク@1010

<キック・ラビット。手強いね


村人B

<無理だけはしないでください!

――――――――――――――――――――



「みんな安心して? なんたって私にはライムスがいるのだからねっ!」


 ライムスだってキック・ラビットに負けてないよ!


 同じく小柄なモンスターだけど、ライムスには早さも攻撃力もある。私との連携もバッチリだし、この前のテイム成功で能力だって上がってるもんね。


 それに、ライムス――というよりスライムには、ちょっとした特性があるんだよ。


「さぁライムス、みんなに格好良いところ見せちゃって!」

『きゅぴーーっ!!』


 ライムスはその場でぽよんぽよんと弾むと、ぐにぃ~~と平らになってから、一気にジャンプ!


 そしてキック・ラビットに体当たり攻撃を仕掛けるよ!


『ぴきーーっ!』

『ププーッ!!』


 キック・ラビットはライムスの攻撃を避けて反撃に移るも、既にそこにライムスはいない。


 さすがはライムス。

 大岩と地面を上手に使って、ぴょんぴょんと跳弾しているよ。


「ふふっ、ジャンプはウサギちゃんの専売特許じゃないんだよっ!」


『プ、プププゥ??』

『ぴきぴきぃ!』



――――――――――――――――――――

かな

<おおおお、ライムスちゃんすげえええwwww


安田

<ウサギの武器取られてて笑った


spring

<そのままやっちゃえ!


トマト

<ライムスくんはっやww


上ちゃん

<びゅんびゅんで草


通りすがりのLv.99

<よく見たらテイム紋付いてるね。テイム成功したから強さも増したのか


ゲン

<初見です。スライム早すぎて笑いました


ミク@1010

<キック・ラビット自慢のジャンピングが……w


ライムス推し

¥300

<ライムスしか勝たん

――――――――――――――――――――



「ふふふ、完全に翻弄されているようだね? ライムス、そのまま体当たり攻撃しちゃえっ!」

『ぴきゅぅーーーーっ!!!!』


 ドンッッッ!!!


『ププーーーーッ!!???』


 ライムスの跳弾攻撃で、キック・ラビットは吹き飛ばされた。


 絶好のチャンス!


 ここでパラライズ・ソードを当てて、最低でもマヒ状態にまで持っていく!


 そのまま倒しきれればいいけど、キック・ラビットはFランクの中でも体力が多いから、反撃には注意が必要だね。


「てやーーー!」


 私は全力で走って距離を詰めて、渾身の一振りを繰り出した。


 ザシュッ!!


『プゥ!?』


 よし、攻撃がヒットしたよ!

 もう一撃!


「くらえっ、えい!!」

『プゥーー!!』


 二発目を当てると、キック・ラビットの全身をパチパチと青白い光が包み込んだよ。


「これは……マヒ状態だね!?」


 やった、パラライズソードの効果が出たんだ!

 これは最高のチャンス!


「もう一発行くよ、えいっ!!」

『ププゥ~~~ッ!!?』


 ぽふんっ!


「やった、キック・ラビット撃破!」



――――――――――――――――――――

ゲン

<キターーーーーーーー


tomo.77

<gg


村人B

<ナイスです!!


ライムス推し

<ライムスしか勝たん!


ぺぺろん

<ライムスくん最強!!!最中さんも最強!!!


上ちゃん

<これはナイスすぎる


たなか家の長男

<やるね!


えどわーど。

<俺もテイマーに転職しようかな

――――――――――――――――――――



「いきなりキック・ラビットと遭遇するとは思わなかったけど、幸先良いスタートが切れたね。ライムスも格好良かったし! ねー、ライムス?」

『ぴきゅいっ!!』

「えへへ、そんなペロペロしたらくすぐったいよ~」

『きゅぴぃ!』


 それからも私とライムスはゴミを掃除しながら、ダンジョンを進んでいったよ。


 そして15時に差し掛かるかどうかという頃になって。


 ぱぱぱーんっ!


「あ、やった! ねぇみんな、今レベルが上がったよ!!」


 配信開始から3時間。

 私のレベルは1上がって、11になったのだった!


「次の休みの日にステータス更新しようかな~。どれだけ数字が上がったか見てみたいしね!」


 こうしてその日の配信を終えた私は、ライムスを抱えながら帰路に就いた。


 そして帰り道。


 ぴろりんっ、と通知が一件。


 見てみると、そこには「お父さん」と書いてあった。


「あ、お父さんからだ。なんだろ」



――――――――――――――――――――

パパ

<モナちゃん、久しぶりだね。なんか、いろいろと凄いことになっているみたいだね? お父さん詳しいことは分からないけど、ダンジョンって危険なんじゃないのか? お母さんもちょっと心配してたぞ? あまり危ないことはせずに、体には気を付けてね。それと、来年のゴールデンウィークは顔をみたいな。お父さんより

――――――――――――――――――――



「もしかしてお父さん、私の配信見てくれてるのかな? なんか嬉しいような恥ずかしいような……」


 確かにダンジョンは危険があるよね。

 でも、私にはライムスがいるから大丈夫だよ。

 

 返信すると、またもやぴろりんっ、と通知が。

 今度は岡田さんからだったよ。



――――――――――――――――――――

岡田

<忙しくて電話できねーからメールで済ませるけど、お前今日の夜会社に顔出せな。22時までには来いよ。話がある。逃げるなよ!

――――――――――――――――――――



「ええ……。自分で早退させといて夜に顔出せって? なんて勝手な人なんだろう」


 しかもこの感じだと怒ってるよね?

 うう、正直言うと行きたくないけど、仕方ないよね。

 言うこと聞かなかったらまた怒鳴られちゃうし……。


 陰鬱な気分を抱えたまま、私は家に戻ってきたよ。


「とりあえずシャワー浴びよっと」


 モンスターとの戦闘で汗もかいていたので、シャワーで流す。それから部屋着に着替えて、ソファに腰を降ろして、スマホを手に取る。


「え、また通知きてるよ。今日はやけにメールが多いね? 今度はなんだろう……」


 メールを開いてみると、そこには「株式会社サニーライト」とあったよ。


「サニーライト? え、え? サニーライトって、あのサニーライト!?」


 サニーライトと言えば人気急上昇中のDtuber事務所「きららアカデミー」を抱えてるっていう、あのサニーライトだよね!?


 そんな大手企業が私なんかに何の用なの??


「えー、どれどれ?」



――――――――――――――――――――

はじめまして。株式会社サニーライト人事部の田部たべと申します。突然のメール、大変失礼いたします。天海最中様の配信を拝見し、ぜひ弊社のDtuber事務所「きららアカデミー」に所属して頂きたく、ご連絡を差し上げました。

一度お会いして、1時間ほどお話させて頂ければと思うのですが、都合のいい日程などがございましたら、ご返信のほどよろしくお願いします。

――――――――――――――――――――


「……え? ええっ!? えええええええええ~~~~~っっ!?!??」

   




 


 

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