第17話 鰻丼風焼きおにぎり!

「ライムス、今日のお昼は焼きおにぎりだよ!」

『きゅぴぴぃっ!!』


 ダンジョンの休憩スペースは半分キャンプ場みたいなもので、ここにはダンジョン飯に必要な道具がたくさん揃っているよ。


 バーベキュー・コンロにトング、炭に燃焼材にライター、紙皿にプラスチックのコップ、割り箸、スプーン、フォーク、鋏、包丁、まな板。


 スコップに軍手、ヘルメット、ヘッドライト、他にはクーラーボックスやパイプ椅子とかね。


 みんな木小屋の中に用意されているよ。


 木小屋の他にはプレハブ小屋が設置されていて、商店として使われているよ。ここでは食材や飲み物も買えるから便利だね。


 私はリュックサックの中からお弁当箱を二つ取り出した。


 一つはライムスの分で、もう一つは私の分。


「まずはチャッカマンでコンロに火をつけます!」


 カチッ! とボタンを押すと火がついて、コンロに火が着いた。


「そして一つ目のアイテム、牛脂を使います!」

『ぴきゅい?』

「ふふっ。これを鉄網に塗ればおにぎりを焼けるんだよ!」

『ぴきーっ!!』


 本当はバターを持ってきたかったんだけど、ドロドロに溶けちゃいそうだったからね。だから冷凍庫に保管してた牛脂を持ってきたよ。


「よーし。あとは私とライムスのおにぎりを、えいっ!」


 金網に手作りのおにぎりを乗せると、ジュアァ~~と心地良い音がして、なんだかそれだけでヨダレが出ちゃいそう。



――――――――――――――――――――

上ちゃん

<焼きおにぎり、これは堪らんねぇ~


tomo.77

<ダンジョン飯。たまにはいいかもなぁ


No.13

<ライムスくんすごいぴょんぴょん跳ねてるね笑

――――――――――――――――――――



『ぴゆい、ぴきぃっ!』

「ふふっ、そんなに早く食べたいの? でもまだ早いよ。なぜならアイテムはもう一つあるのだからね。それが、鰻丼のタレですっ!!」



――――――――――――――――――――

ミク@1010

<わーお、鰻丼のタレと来ましたか!


No.13

<なんという破壊力……


通りすがりのLv.99

<ダンジョン飯タグに釣られてきたらエゲつないことしてて草


上ちゃん

<ちょうど昼時だし、こっちも昼食べながら見るかな。じゃないと耐えられる気がしないよ


村人B

<こっちまで匂いが届きそうです!


ノブ

<初見です。ダンジョン飯とスライム好きだから楽しみ

――――――――――――――――――――



「初見さん来てくれてありがとう! いまは焼きおにぎりに鰻丼のタレを塗っているよ。もちろんそれだけじゃ終わらないよ。最後のアイテムはこれ、山椒ですっ!」


 我ながら惚れ惚れする完成度だよ!


 焼き加減は完璧だね。

 

 全体的に火が通っていて、中心部分は程よく焦げ付いていて美味しそう。


 鰻丼のタレの香りが煙に乗せられて漂ってきて、匂いだけで既に歓喜の舞を踊りたくなっちゃうね。


 あとは山椒を振りかけて、と。


「出来ましたっ、鰻丼風焼きおにぎり~~っ!!」

『きゅっ、きゅぴぃ~~~っ!!』

「あははっ、すごいぐるぐるだねライムス! そんなに美味しそうに見える?」


――――――――――――――――――――

No.13

<ヤバい耐えられない。このままじゃ理性が崩壊する。私も今からそれ作る!


tomo.77

<ハイボールあったら完璧だよなぁw


通りすがりのLv.99

<犯罪的な飯テロだ……


村人B

<美味しそぉ~~


たなか家の長男

<初見。飯テロイイネ。他にはメニューないの?

――――――――――――――――――――



「たなか家の長男さん来てくれてありがとっ! もちろんこれだけじゃないけど、まずはこの鰻丼風焼きおにぎりを食べてみるね。それじゃライムス、いくよ? せーの、いただきまぁ~す!」

『きゅるぃ~~っ!』


 はふっ、と熱々のおにぎりを一口。

 

 次の瞬間、凝縮された旨味が舌の上で弾けて、私は天にも昇る気持ちになった。


「お、美味しい……。焦げ目のついた部分を齧るとパリッと割れて、中からホクホクのお米が出迎えてくれたよ。咀嚼するほどに鰻丼のタレと絡み合ってじわじわと甘味が広がっていって、最後に山椒がバシッ! とキメてくれる……。思い付きのアイデアで作ってみたけど、まさかここまで美味しいだなんて思わなかったよ。ハッピーゲージがあるとしたら、まさに『うなぎ上り』って感じだねっ!」



――――――――――――――――――――

たなか家の長男

<初心者タグ付いてるけどホントに初心者? 食レポ上手だね


上ちゃん

<うわぁ、いいな~


tomo.77

<余すことなく全てを伝えてきてて草生える。マジで美味そう


通りすがりのLv.99

<『うなぎ登り』のとこで露骨にドヤ顔してて草


村人B

<ぐわぁぁああああああああっ!!!!


ミク@1010

<食レポ上手くて笑った

――――――――――――――――――――



「ふぅ。幸せって感情をおにぎりの形にしたらこんなに美味しいんだねぇ。それじゃあ次行くよ。お次は長ネギですっ!!」


 たま~に実家から野菜が送られてくるんだけど、この長ネギもその一つだよ。


「この長ネギを3~4cmくらいの大きさにカットして、そして焼きます! もちろん鰻丼のタレで味付けをするよ!」

『ぴきゅ~~!』

「はいはい、そんなにがっつかないの」


 長ネギが焼けたので、鰻丼のタレを塗って食べる。


 加熱したことで長ネギ本来の甘味が滲み出ていて、鰻丼のタレとの相性も抜群だね!


 味だけじゃなく、シャキシャキの食感も最高だよ!


「ごちそうさまでした~。ほんっとに美味しかった~~。それじゃここからは30分お昼寝するから、一旦配信を切るね? 13時からはまたダンジョン掃除に戻るから、チャンネル登録と高評価、どうかよろしくお願いしますっ!」


#


 お昼寝を終えた私とライムスは、休憩スペースを後にして、ダンジョン掃除を再開した。


『ぷきゅっ!』

「あっ! 今日も出たね、ゴブリン・フラワー!」


 頭から花を咲かせたかわいいゴブリンが、こっちに向かって走ってくるよ。


 見た目は可愛いけど、声は野太い。

 人によってはそのギャップが好きらしいんだけど、私は苦手だな。


『ナハハハーーーッ!!』

「やあっ!!」


 ガキンッッ!!


「やっぱり攻撃は私の方が上だね! くらえっ!」


 ドゴッ、と鉄の棒がゴブリン・フラワーの胴体に直撃した。そして体勢を崩した隙に、三発の追撃。


『ナギャワーーッ!!』


 ぽふんっ! と、ゴブリン・フラワーが煙になって消えて。

 そして私の頭の中で、例のファンファーレが響き渡った。


 ぱぱぱーん!


 ――おめでとうございます。個体名・天海最中のレベルがアップしました。


「やった、レベルが7に上がったよ!」


 昨日は10体近くものゴブリン・フラワーを倒したから、レベルアップまであと少しってところまで来てたみたいだね。



――――――――――――――――――――

No.13

<もなさんレベルアップおめでとう! どの試練を受けるかは決めてるの?


村人B

<レベルアップおめです!


ノブ

<おめ~


ミク@1010

<あと3つで試練受けれるじゃないの。おめっと~


上ちゃん

<レベル7、初々しくて可愛いな


tomo.77

<レベル7か。懐かしいね

――――――――――――――――――――



「みんなありがと~! 受ける試練はね、もう決めてあるよ。私は『魔物使いの試練』を受けるつもりなんだ。いつの日かテイマーになって、ライムスとの絆をもっともっと強くしたいからね! ねっ、ライムス!」

『きゅぴい~~っ!!』



――――――――――――――――――――

No.13

<そっかそっか。ライムスくんを連れてるもなさんにはお似合いの職業だね。応援してるよ!


村人B

<僕も応援してます、頑張って!


上ちゃん

<魔物使いか。結構難易度高い試練らしいけど、応援するよ


tomo.77

<ちなみに俺は戦士です。先輩探索者として、もなさんが合格できるように応援するよ

――――――――――――――――――――



「みんな、応援してくれてありがとうね! 明日明後日は仕事だから配信できないけど、そのあとはゴールデンウィークだから、そうだなぁ……まずは水曜日にレベル10を目指そうかな!」




 それからもダンジョン掃除は続いたけれど、視聴者のみんなと話していると、あっという間に16時になってしまったよ。


 やっぱり楽しい時間ってすぐに過ぎちゃうよね。


 ちょっと残念だけど、今日はここまでだね。


「今日は私の配信に来てくれてありがとうございました! 次は水曜日に配信する予定だよ。チャンネル登録と高評価、よろしくねっ!」



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