第5話 心が折れる瞬間

 正直、細かいところまでは思い出せないと言うか、思い出したくないと脳が拒否しているすらあるけども。


5年目か6年目の頃だったような気がする。


多分。


うちの施設は利用者さんが100人位いて、グループで分けられているのね。

で、1~3年周期でグループ移動があるのな、現場職員は。


で、課長さんも変わるんだ。グループ。


そんな中で、新しいグループに移動した時。あのパソコンで苛々してたカチョーさんが上司になった。今にして思えば、嫌われてたんだろうなと思う。と言うかこの前たまたま職場近くの商店でばったり再開(そのカチョーさんは10年くらい前に退職されております)した時に「私あんた嫌いだったから」って言われたから、確実に嫌われてたんだろうな。


と言うか、そんなら話しかけて来るなって思ったのはココだけの秘密。


とまぁそういう状況の中で配属が決まったわけだが。

嫌ってたもんだから、面白くないんだろうな。俺が目の前にいるのに、遠くの先輩職員呼んで「あんた、ちょっと手伝ってー」と。


あ、俺手伝いますよって言っても「はぁ?」で終わり。


そんなのが半年くらい続いてた時に、ちょっとしたミスをやらかした。浴槽の主電源を切り忘れてた。次の日に出勤して呼び出されて説教された。


まぁ、ミスったんだから指導されるのは仕方が無いとは思うが。


いやまぁ、他にも小なり小なりミスは重ねてたんだけど、それは別に俺に限った事ではない。


件の主電源の切り忘れで1時間説教食らった時に、心のどこかで「プツン」と音がした。気がした。


そこでとめどなく涙が溢れてきて、止めようとしても止まらない。


それを見たカチョーさんが「男のくせに涙流すなんて情けない」と一言。


それを聞いていた他の先輩職員が間に入ってくれて。その辺りの記憶はあまり残ってないんだけど、どの様な経緯を辿ったかは定かでないが、気が付いたら施設長の部屋のソファーに座ってた。


その時は色々聞かれたけど何も喋った記憶が無い。


上層部の話はよくわからんかったけど、2日ほど休んで仕事復帰した。


その時に思った事「あのクソ野郎に跪いてたまるか。あのクソが俺を嫌ってやめさせようとしてるなら、ぜってぇ辞めてやらねぇ。思い通りなんぞにさせてたまるか。ぜってぇ許さん」と、何故か奮起した。


気がする。


若気の至りってすごいねぇ・・・。

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