第13話 無駄にErosな診察遊戯③
護身術の心得がある俺は、伸ばしてきた詠亜の右手を左へ払う。
さらに鳩尾に向けて、Thunder Lordを描き、アッパーを叩き込むように押し込んだ。
俺はそのまま筋肉活性化の魔法を右腕に付与して攻撃を発する。
この一撃が詠亜の鳩尾に直撃した。
しかし、詠亜の笑みは止まない。
詠亜は抱きしめるように、俺を豊満な胸に押し込んだ。
俺の力は抜け落ち、詠亜に届く頃には、触る程度の威力しかなくなっていた。
「ふふっ、ふふふっ、あははははっ! はぁ~、可愛い、瑠璃くぅん。そのまま触って、揉んで、痣ができるくらい鷲掴みにしてぇ。それともペロペロしたい? あ、瑠璃君はお尻の方が良いのよね! いいわ、瑠璃くん、私をメチャメチャにして! あ……私のお尻で瑠璃君のお顔にしてあげよっか!? その方が良い! 私も壊れるくらい、気持ちよくなれるもの。それ、きっとイイ! すぐ用意するからね」
このままだと詠亜の人形になるだけ。体のどこに力を入れても、俺の意思ではピクリとも動かない。つまり魔法が使えない。
しかし唯一動く場所があった。
「この、大変態が。つーか何だその魔法。さすがに訳分かんないままヤられるのは諦めきれないんだけど……」
それは口。しかし口が動いた所で、何がどうできる訳でもない。
「あら? まだお喋りできるの? さすが瑠璃君は格が違うわぁ。そうねぇ、まぁ下ばっかりじゃ上が寂しいし、説明がてら相手をしてもらいましょうかね。えぃっ!」
「こら! あふっ、体が動かねぇからって、んぅ~、ぷはっ、好き放題してんじゃねぇ!」
詠亜は俺の顔を胸で挟み込み、俺の手で両端から更に挟み込んでグリグリ回す。
「はぁ……うぅん……んっ! ふぅ、別に、いいじゃない? ハァ……男冥利に尽きるでしょ? 私の魔法はアナンダミドロード。そこのホワイトボード、別に空をなぞらなくても、どこかに書くことができれば、あとはポチッと押すだけで魔法は発動するのよん。空中に描く場合は長くても数十秒で霧散しちゃうけど、書いておけばあとは押すだけ。もちろん自筆でないとダメだし、一回だけしか発動できないけどね。覚えておくと便利な戦法よん」
詠亜はホワイトボードに記されたAnandamide Lordという文字列に目をやりながら説明を始め、俺を少し離してブラウスの残りのボタンを全て外した。
「私の魔法は体臭をある物質に変化させるの。強烈な多幸感を味合わせ、虜にする物質を生み出す魔法よん。でも効果はなぜか男だけ。簡単に言うとそんな感じ。あ、そうだ」
詠亜は何かを思いついたかのように、ブラウスのボタンを第三ボタンまで留め直す。
「瑠璃君は偉い子みたいだから、もう少し詳しく説明しましょうか。アラキドノールエタノールアミド、通称AEA、これがアナンダミド。アラキドン酸に由来するエイコサノイドの一種よ。私はこれを作り出せる魔法を持っている訳。お魚に含まれるドコサヘキサエン酸と似た様なものかしらね。知ってる? 頭にすごく良いモノなの。どれだけ良いモノかっていうとね。頭の中がお花畑になっちゃうくらい良いモノなのぉ。具体的に言うと、テトラヒドロカンナビノールを血液中のアラキドン酸から合成できるわん」
詠亜はブラウスの内側から背中に手を入れ、ブラのホックを外す。それを前側から抜き取って、机の上に抓んで放す。
第三ボタンと第二ボタンの間に、強烈な渓谷が形成された。
必死に目を逸らそうと試みるも、黒目が吸い寄せられてしまう。
「うふふ、これは難しかったかしら? さっきも出てきたマリファナよ。つまり大麻。私の血から、私の汗から、私の体から溢れる全てから、そんなアブナイ香りがするの。男にしか効かないけれど、その効果は絶大。この香りを嗅いだ男は、私に刃向かう意思も無くなって、私を求めたくて、奴隷の出来上がり! でも大丈夫。玲さんにはこの魔法掛けていないから。掛ける前に言う事を聞いてくれたわん」
以前詠亜の心を読んだ時、奴隷がいると見えたのはこういうことだったのかと、先入観から深読みを怠ったことを悔やむ。
そしてこの診察室の周囲に誰も人の気配がないというのも詠亜の奴隷が取り計らっていること、詠亜の情報収集も奴隷を介して入手しているということだ。
「瑠璃くーん、私が、私好みの最高の男の子に、今から調教してあげる。助けなんて、来る訳がないもの!」
少なくとも、この甘い臭いを嗅いでいる限り、この密着状態を打開しない限り、助かる道はない。
「はぁはぁ……なんか、頭が……クラクラ……気持ちよくなって、きひゃった、んぅ」
さらにまずいことに、頭も毒され始めた。
「やっと回り始めたのね。普通の男なら一瞬なのに……。まぁいっか。もう一緒だもの。ふふっ、瑠璃君、私と……詠亜せんせーと、
詠亜に抱えられ、診療台に寝かされた。
仰向けの俺は、詠亜を求め、自らの意思と関係なく、弱々しく両手を伸ばしてしまう。
「あぁ、イイ! 可愛い! 瑠璃君……言って! せんせーが欲しいって! 詠亜せんせー、せんせーの初めて、僕にちょーらいって言って! はぁ、ふぅ! もうダメ、早く! 我慢できなくなっちゃうからぁ!」
朦朧とする意識の中、自分の肩を痣ができそうなくらい抱き締めて欲望を堪える詠亜に言った。
「詠亜せんせー、詠亜せんせーの初めて、ぜんぶ、僕にちょーらい。僕のぜんぶ、あげるからぁ」
とろんとした目付きで俺が微笑むと同時、詠亜の中で何かが切れた。
「うん、瑠璃君。いただきます。……ぃやっほぉおっ!」
詠亜は両手を合わせて一礼し、靴を脱いで淫欲の海へ飛び込んだのだった。
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