第3話 黄表紙

来客 「おじゃましま~す♪」


ハナス「あら、玄関に誰か来たわ」


スミレ「きっと、花魁のおちゃまさんよ。この前から、うちに常磐津を習いに来ているのよ」


おちゃま「あら、スミレちゃん。お客さんですか?・・・おや、これは、ともはっと親分じゃありませんか。まっ昼間っから、こんなキレイなお嬢さん方とこんなところで、イチャイチャですかぁ?」


さゆり「そ、そんな・・・・・」


ともはっと「イチャイチャだなんて、とんでもない。これは御用の筋なんだよ」


おちゃま「(ともはっとの持っている投げ文を見る)・・・おや、この『姉ちゃん、あんた、ええケツしてまんな、イヒヒヒヒ』って小説じゃありませんか」


ともはっと「えっ? 小説だって?」


おちゃま「ええ、なが痴魔ちま良之進という人の・・・」


ともはっと「なが痴魔ちま良之進?・・・おちゃまさん、そのなが痴魔ちま良之進って誰なんだい?」


おちゃま「小石川に住んでる浪人者でありんす。生活のために、表紙びょうしにこういった小説を書いてるんですよ」


のこ 「黄表紙って何なの?」


ハナス「黄表紙(きびょうし)は、江戸時代後期に流行した草双紙の一種で、黄色い表紙の絵本の総称なの。1775年に恋川春町が制作した『金々先生栄花夢』から始まり、1806年の式亭三馬の『雷太郎強悪物語』までの作品を指すのよ。これらは大人向けの読み物として知られ、しゃれや風刺、ナンセンスな笑いが特徴で、江戸の現実世界を反映した写実性があると言われているのよ。

 黄表紙はね、絵を主として余白に文章が入る形式で、毎年正月に刊行されるのが通例なの。また、北尾政美や歌川豊国、喜多川歌麿など、数多くの浮世絵師が挿絵を手がけているのよ。江戸の文化や風俗、事件などを題材にした作品で、時には政治を風刺する内容も含まれているため、出版統制の対象となることもあるのよ」


スミレ「まあ、ハナスちゃん。アホバカcopilotに聞いたような説明ね」


ハナス「めんご。めんご」


ともはっと「では、おちゃまさん。この『姉ちゃん、あんた、ええケツしてまんな、イヒヒヒヒ』っていうのは、そのなが痴魔ちま良之進という浪人が書いた小説のタイトルなのかい?」


おちゃま「そうなんですよ。でも、小説って言っても・・・黄表紙ですから、ハナスちゃんがさっき言ったように、挿し絵がメインの小説なんですよ。この『姉ちゃん、あんた、ええケツしてまんな、イヒヒヒヒ』には、素っ裸の女性のお尻の絵が描いてあるんですよ。私はよく黄表紙を買うから、こういう小説を知ってるけど、一般の人は知らないかもしれませんねぇ」


のこ 「素っ裸の女性のお尻の絵ですって・・・キャ~、いやらしい」


スミレ「じゃあ、そのお尻というのがヒントなんだよ。きっと、そのヒントを使って、この紙に書いてる『〇だらし〇』の『〇』に何か文字を入れるんだ。そうすると、意味のある文になるんだよ」


ハナス「スミレちゃん、すごいわ。きっとそうよ」


スミレ「ハナスちゃん、すごいだなんて、そんなことありませ・・・すよ。とっても、ありますよ。無茶苦茶、ありますよ。おほほほほ」


のこ 「でも、『〇』にどんな文字を入れるんでしょう?・・・お尻の絵だから、『し』と『り』・・・『し』と『り』を入れると、『しだらしり』・・・逆に入れると、『りだらしし』・・・分かんな~い?」


さゆり「そ、そんな・・・・・」


スミレ「じゃあ、のこちゃん。『姉ちゃん、あんた、ええケツしてまんな、イヒヒヒヒ』の『ケツ』なんだよ」


のこ 「なるほど。『け』と『つ』ですね。・・・『け』と『つ』を入れると、『けだらしつ』・・・逆に入れると、『つだらしけ』・・・。なんか、毛だらけって感じですが、う~ん・・・」


ハナス「のこちゃん、スミレちゃん。これは、きっと、別の文字なのよ。・・・おちゃまさん。そのなが痴魔ちま良之進という人は、黄表紙にこんな話ばっかり書いてるんですか?」


ともはっと「そうだ。私もそれが知りたい。おちゃまさん。なが痴魔ちま良之進は、黄表紙に他にどんな話を書いているんだい?」

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