第十四話
バーベキュー大会の翌日は天然温泉スパリゾート
彼らには小遣いを渡すのではなく、欲しい物を一人三つまで選んでいいことにした。すると中に皆で遊びたいからとボードゲームと呼ばれる玩具を望んだ子がいたので、それは俺からのプレゼントとして数に含めないことにしたのである。
お陰で結構な数のボードゲームを買うことになったが、娯楽が増えるのはいいことだ。皆で仲良く遊ぶようにと念を押しておいた。
なお、
そんな中、
「柊果里はあれが欲しいのか?」
「い、いえ……」
「値段なら気にしなくていいんだぞ」
「でも私が頂くと他の女の子も欲しがると思いますので」
「それなら女の子全員に一着ずつ買おう。だからこれは三つのうちの一つに数えなくていい」
「あの……本当にいいのですか?」
「もちろん。その代わり大事に着るんだぞ」
育成園の子供たちは、親がいれば当然のように与えられる様々な物をがまんして生きている。それならば今くらい多少の贅沢を味わわせてもいいじゃないか。
そんなわけで購入品がかなりの量になったので、後日育成園に配送してもらうことにした。中には持ち帰りたいと言った子もいたが、帰ってからも楽しみがあった方がいいだろうと諭すと素直に応じてくれた。
駄々をこねないのは施設で暮らす子供の性なのだろうか。考えると少し悲しくなったよ。
買い物から帰ったその日の夕食は陸軍の日出村出張所で兵士たちによる送別会が行われた。ここでようやく和子様と美祢葉も合流である。食堂は汗臭さもなく豪華に飾りつけられ、料理やデザートに子供たちは目を輝かせていた。
準備や送別会そのものに携わってくれた出張所の兵士たちには感謝しかない。そろそろ月一くらいならスパを開放してやるか。もちろん土産物などの二割引きは復活させるつもりはないが。
「皆さん、楽しかったですかーっ!?」
「「「「はーい!」」」」
実はこの送別会は軍の好意で俺は一円も金を出していない。子供たちの笑顔は普段厳しい任務に当たっている彼らにとって癒しになったと聞いた。そのお礼だと言われ、少し目頭が熱くなってしまったよ。
送別会の後は再びスパで風呂を楽しみ、明日の最終日に備えて帰り支度となった。
◆◇◆◇
育成園一行の帰り道、俺たちは東京駅への見送りまでだ。代わりに警護小隊から十人が園まで同行する。和子様は
他に若林遥とオリンピック候補にも挙がったことのある
彼女たちの同行は柊果里が男性兵士に気後れしないようにとの配慮からだった。
「レイヤ君、本当に世話になった」
「子供たちもいい思い出が出来たと思います」
「まさかあの有名なスパに入れるなんて思いませんでした」
「また来月にでも伺いますね」
「何から何までありがとう!」
三妻親娘が代わる代わる握手を求めてきた。それを見た依麻と数人の子供たち駆け寄ってくる。
「
「はい、依麻さん、また会いましょうね」
「美祢葉お姉ちゃん、レイヤお兄ちゃんをよろしくね」
「お任せ下さい」
「レイヤ兄ちゃん、俺決めたんだ!」
「何をだ?」
「大きくなったらヘリのパイロットになる!」
「私はネズミさんの遊園地で働きたい!」
ヘリのパイロットか。早速
そうこうしていると育成園の面々が乗る車両がホームに入ってきた。帰りも一両を貸し切りにしたので、一般の客よりも先に車内に入ることが出来る。
この一両の車輌間の前後出入り口には兵士が立ち、一般客が立ち入らないように見張りをすることになっている。来る時は和子様がいたのでJRの職員が担ってくれていた。
「風邪ひくなよー」
「「「「はーい!」」」」
「お風呂入れよー」
「「「「はーい!」」」」
「頭洗えよー」
「「「「はーい!」」」」
「宿題やれよー」
「「「「はーい!」」」」
「歯磨けよー」
「「「「はーい!」」」」
「また来週!!」
「「「「えーっ!?」」」」
誰だ、ビバノンノンとか言ったヤツ。
そんな感じで子供たちが乗った新幹線を見送ってから、俺たちは日出村に帰るのだった。
――あとがき――
このネタ、分かる人どれくらいいるんだろ。
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