第56話6-5 永遠ならざる平和の間に

6ー5 永遠ならざる平和の間に


この世界を統べるカスケード王国は、斜陽を迎えていた。

それに比べて、僕たちの『カンパニュラ』グループは、隆盛を極めていた。

世間の人々は、この国のことを『カンパニュラ』王国と揶揄する者までいた。

表に出ることのできない僕に代わって、アゼリアさんが表に立ってくれていた。

商業ギルド内には、『カンパニュラ』グループの支部が置かれており、ハヅキ兄さんがそこの支部長としてグループをまとめてくれていた。

そうだ。

以前、戦いの途中で僕がストレージに取り込んだ少年がいたじゃないか。

あれは、実は、アルゼンテの異母兄弟だった。

アルゼンテの弟である彼は、名前をレニといって、魔王軍の四天王の一角を占めていた。

だが、彼は、あの後、ストレージ内で魔の森に囚われてしばらく村から出られなかったらしい。

その間、村で暮らしていたレニは、人と魔族が一緒に共存する世界のあることを知り、感銘を受けたのだという。

そして、その村が僕のストレージ内にあるのだということを理解すると、僕の弟子となりたいと言い出した。

いや。

弟子って。

「僕の弟子って言ってもなぁ」

僕は、どうしたものかと悩んだんだが、レニがかなり本気で言っているものだから、仕方なく弟子にすることにした。

もちろん、戦いの弟子とかではない。

彼は、僕の言霊の力のことは、知らないからな。

僕は、彼に『カンパニュラ』グループの中で商人としての修行をしてもらうことにした。

レニも、今は、それで満足している。

「商業の力は、すごい。いつか、平和な世の中になれば、世界を変えるのは、商業だ」

そう言って、真面目に、僕の下で頑張っている。

アルゼンテはというと、腹違いの弟の行動を面白がって静観していた。

「まあ、うちの旦那になる人の下で働きたいやなんて、可愛いこと言うようになったもんや。せいぜい、こき使うたってや、ユヅキはん」

アルゼンテは、魔王でありながら、魔界の統治には興味も持っていなかったのだが、最近は、真面目に魔王しているようだ。

まあ、彼女が魔王になったときから、人間との戦争は、続いていたのだからな。

領地の統治どころではなかったといえば、そうなのかもしれない。

平和でなくては、よい国作りは、できないのだ。



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