第38話4-8 『Dコミュニケーション』

4ー8 『Dコミュニケーション』


「婚約おめでとう、ユヅキ」

アゼリアさんが僕に言ったので、僕は、ぎょっとしてしまった。

「なんで、知ってるんですか?」

「当然のことだろう?情報は、商人にとって命綱だからな。特に、ビジネスパートナーともなればな」

僕たちは、今度、共同で事業を起こすことになっている。

『Dプロジェクト』または、『Dコミュニケーション』

それは、木の精霊ドライアドの力を使い遠く離れた場所にいる人と通信できるようにするための計画だった。

今日は、僕たちは、この事業のための最終打ち合わせをすることになっていた。

「だが、もう1人のお嬢さんの素性がよくわからないんだがな」

アゼリアさんが僕に訊ねた。

「君の謎の婚約者のことを教えてくれないか?すごく、興味があるんだ」

「それは」

僕は、言葉を濁した。

「まだ、言えません」

「ふむ」

アゼリアさんが首を傾げた。

「今は、まだ話せないということかい?」

「はい」

うん。

今は、というか、今も、これからも、ずっと話せないだろうな。

まさか、僕の婚約者の内の1人が魔王だなんて。

マジで、トップシークレットだよ!

「ところで、この、今度立ち上げる新しい事業についてですが」

僕がアゼリアさんに言うと、アゼリアさんは、微笑を浮かべた。

「ああ。 この通信事業とやらか。確かに実現できればたいしたもんだが、本当にこんなことができるのか?」

「もちろん」

僕は、頷いた。

「今度、国軍の最前線で、通信の実験をする予定です」

「ほう。だが、あの平和主義のドライアドがそんなことに協力するのか?」

「しますよ」

僕は、言いきった。

「実験には、僕自身が行きますから」

「本気か?」

アゼリアさんが、少し、考えてから、にやっと笑った。

「ならば、この私も立ち会わなければなるまいな」

マジか?

えらいことになったぞ。

僕は、苦笑していた。

これは、失敗できない。

アゼリアさんが、僕のことをじっと見つめて微笑んだ。

「まあ、お手並みを拝見させていただこうか、ユヅキ」

「任せてください。アゼリアさん」

僕は、胸をはった。

「この『Dコミュニケーション』は、必ず成功させます」

「楽しみにしているよ、ユヅキ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る