第37話4-7 婚約しました。

4ー7 婚約しました。


「勝手なことは、させない」

オルガが突然、呟いた。

「黙って聞いてたら、俺のユヅキのことを、勝手に魔界に連れていくだの、なんだの、うっせえわっ!」

ゆらり、と、オルガが立ち上がった。

「婚約?はぁ?何、それ?たかが、魔王の分際で、俺のユヅキを縛ろうとするなんて万死に値する!」

はい?

僕は、いつもと違うオルガの様子に、慌てて言った。

「オ、オルガ、さん?」

「ユヅキは、黙ってて!」

オルガがアルゼンテの前に立ちふさがる。

「ユヅキは、俺のもの、なんだよ!」

ええっ?

ハトマメ状態になっている僕を無視して、オルガが言い放った。

「何が、魔王、だよ!たかが、魔王風情がうちのユヅキに首輪なんてつけんじゃねぇぞ、こらっ!」

「たかが、魔王、やて?」

アルゼンテがにぃっと不気味に笑った。

「うちのことを、たかが、とかいうてええと思うとるんか?あんた」

アルゼンテが低い声で言った。

「死ぬで」

「ああ?」

オルガが上からアルゼンテを見下ろして言った。

「それは、こっちのセリフだっつうの!」

2人は、至近距離で睨みあっている。

こわっ!

僕は、びびっていた。

この子たち、コワッ!

オルガは、耳と尻尾が出てしまっている。

マジモードだ!

対するアルゼンテも額から角が2本はえてきてる?

ヤバいっ!

このままだと・・

「わかった」

僕は、言った。

「この婚約を受けよう」

「はぁ?」

オルガが信じられないものを見る目で僕を見た。

「ユヅキ?」

「ああ、それと同時に、オルガとも婚約する」

「はい?」

オルガとアルゼンテが僕を凝視していた。

うん。

結婚する訳じゃあるまいし、婚約ぐらいなら誰としたっていいし。

僕は、このとき、軽い気持ちで言っていた。

この世界では、何人の女の人を妻にしてもいいし、逆もありだった。

「いいのか?ユヅキ」

オルガがきいた。

「俺と婚約って・・マジか?」

「本気だ」

僕は、言った。

「でも、2人を同時に妻にするのが嫌なら、婚約を解消してもいい」

「うちは、かまへんで」

アルゼンテがにっこりと微笑んだ。オルガも頬をピンクに染めて言った。

「俺も、それでいい」

はい?

マジですか?

こうして僕には、突然に2人の婚約者ができてしまったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る